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終りゆく世界を、あなたと共に

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終りゆく世界を、あなたと共に
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9.目覚めた私が向かう先

「サニーさん、サニー……っ!」
 終わりゆく世界の中を、杜守 三月(ともり・みつき)は必死で駆けていた。
 恋人の姿を探して。
 1人にしたくない。
 最後まで護ると誓ったから。
 しかし、サニー・スカイ(さにー・すかい)の姿は見つからない。
 いつもの店にも、よく遊びに行った街中にもいない。
「何処だ……サニー!」
 探して、探して、探して。
 そしてとうとう見つけた。
「サニー!!」
 崩れゆく世界の端の端。
 三月の声に、サニーは振り向いた。
 口が、三月の名前の形に動くが声は聞こえない。
 三月は必死で手を伸ばす。
 サニーも、三月に向けて手を伸ばす。
 あと僅か……
 その瞬間、全てが崩れ落ち……三月は、目を覚ました。

「あ……あ」
 絶望の中、中空に手を伸ばしたまま三月は目覚めた。
「ん……どうしたのー?」
「あ……」
 隣には、サニーがいた。
「サニー!」
「きゃっ」
 思わずサニーを抱きしめる。
「ごめん…… これからもずっと僕の傍にいて欲しい」
 唐突な、告白。
 共にいることの幸せに、改めて気づいたから。
 もっと触れたい。
 温もりを感じたい。
「ん……そんなの、当たり前じゃない……三月」
 三月の腕の中、サニーは微笑むと更に深く三月に縋りつく。
 そのまま、2人の幸せな時間が始まる。
 メールの着信に光る三月の携帯にも、気付かないままに。

「……返信は、まだですね」
 夜中に胸騒ぎがして起きた高円寺 柚(こうえんじ・ゆず)は、自身の携帯を覗きこむ。
(サニーさんが一緒なら、大丈夫だと思うけど……)
 ほんの少し心配しながら、柚は再びベッドに潜り込む。
「その前に、と……」
 隣で眠る旦那の寝顔を覗きこむ。
 そっと頬にキスをすると、隣で眠りについた。

   ◇◇◇

「ウェザーに、お守りを購入しに行きましょう!」
 唐突なフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)の申し出に、家族全員は目を丸くする。
 そして後に続くフレンディスの説明に、更に絶句するのだった。
「私、昨日不思議な夢を視たのですよ。この世界が終わってしまって真っ黒になってしまったのです。 あれは無なのでしょうか? ……何かのお告げという感じでもありませんでしたが妙に現実的でして……」
「世界が終わる夢ってどう考えても悪夢だよね?」
 即座に反応したのは、ジブリール・ティラ(じぶりーる・てぃら)だった。
「オレ、悪夢を視るのは目が覚めて現実が良いと安心出来るから何とかって聴いた事ある気がするけれど…… お母さんの場合それは無さそうだけど……ちょっと気になるかもね?」
「ちょ……縁起でもねぇこと言うんじゃねえよ!」
 ジブリールの言葉にベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)が慌てた声をあげる。
 フレンディスの言葉に(まさか強行入籍したことに未だ不安でもあるのか?)とあらぬ不安をたぎらせていた所に、ジブリールの追い討ちにあい、ベルクはいつになく動揺していた。
 ベルクは、夢を見ない。
 いや、正確には覚えていない。
 その為、夢の話と言われてもいまひとつ彼にはピンとこなかったのだ。
「まぁ、世界が終わる夢とは怖いですわ」
「どんな意味があるんだろうねえ」
「うう……っ」
 ジブリールに同調する結城 霞(ゆうき・かすみ)の言葉を受け、更にベルクの不安は広がる。
 しかし当のフレンディスといえば、けろりとしたもので。
(たとえこれが正夢だとしても、今日明日死ぬかも知れない身……故に最期の一時まで後悔無きよう生きていくだけです)
 と、ベルクが聞いたら更に不安になりそうな程どこか割り切った考えのまま、ニコニコと家族の話に耳を傾けていた。
「いずれにしても、わたくし達はこうして生きております。それが泡沫の夢であろうとも……貴重な一時。わたくしはそう思いますわ」
 フレンディスの気持ちを代弁するかのような霞の言葉で、話は一旦決着しそうになる。
 が。
 ベルクの次の一言が、フレンディスの心に火を付けた。
「世界が終わる悪夢ねぇ…… なんつーかフレイにしては縁起でもねぇ夢だな? ま、所詮夢は夢だろうが、もし気になるのなら、まじないなりお守りに頼るっつーのもアリかもしれねぇな」
「は!? そういえば私……」
 その言葉に、何を思い出したのかフレンディスが両手を叩く。
「どうした!?」
「私、厄年過ぎても後厄が残っておりました!」
「はあ?」
「これは大変です。やはり、お守りを購入しなければいけませんね!」
 そんな訳で、フレンディス一行は即座に雑貨屋『ウェザー』へ向かうことになったのだった。


「ノーン、ウェザーに行きませんか?」
「……えっ」
 御神楽 陽太(みかぐら・ようた)の珍しい誘いに、ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)は少し意外そうな顔をする。
 陽太にしてみれば、丁度近くに買い物に行くついでがあったので声をかけたというだけだったのだが、そのタイミングはノーンにとって実にありがたいものだった。
 ノーンは、昨夜見た悪夢に捕われていたからだ。
(世界が、壊されちゃう夢…… とっても寂しくて悲しくて、だから皆と会いたいと思ってたんだ)
 もしかしたら、陽太はそんなノーンの表情を気遣ってくれたのかもしれない。
 丁寧に娘と妻の護衛やサポートを頼みながら出かける支度をする陽太を見ながら、ノーンはそんなことを考えた。
「さあ、行きましょうか」
「うん!」


 ウェザーは、廃墟と化していた。
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)は2人、呆然とその前に立つ。
「サニー……」
 手を伸ばして触れれば壁はボロボロと崩れ落ちる。
「サニー、レイン、クラウド……サリー……ラフィルド……皆……どこ?」
 瓦礫を掘り起こしてみるが、誰も……生きている人は見つからなかった。

「どこ、どこに……はっ」
 そして2人は目を覚ます。
 どうやら、2人して同じ世界の終末の夢を見ていたらしい。
「……偶然だね」
「なんだか、嫌な予感がするよ……」
「もう、コハクったらそんな事言わないでよ!」
「わ、美羽、せめて服を着てから……」
 ベッドの上で言い合いとゆう名のいちゃつきを一通り済ませた後、2人は急いで服を着るとウェザーに向かうことにする。
 夢の出来事を信じたわけではないが、ほんの少しだけ心配になったから。
 それに、今日も看板娘たちの笑顔に会いに行こうと思ったから。

「こんにちは! サニーちゃんいる? ねーねーちょっと聞いてよー」
 一番乗りは、ノーンだった。
 いや残念。先客……いや既に身内だろうか。
 三月が開店準備を手伝っていた。
「ノーンちゃん、おはよう!」
「あのね、ワタシ怖い夢を見て……」
「少し夢見が悪かったので、お守りなどは御座いますか?」
「よかった、お店あったー! サニーちゃん元気ー!?」
 ノーンとサニーが話していると、フレンディス一行と美羽に、遠山 陽菜都(とおやま・ひなつ)たちもやって来る。
「まあまあ、大勢で立ち話も何ですから……皆でお茶でも飲みませんか?」
 陽太の誘いで一行は喫茶コーナーへと移動する。
「そういえばノーンちゃんもフレンディスちゃんも、新顔さんがいらっしゃるけど、こちらの方々は?」
 サニーがまじまじと陽太と霞の顔を見る。
「御神楽 陽太です。いつもノーンがお世話になっています」
「わあ、あなたがあの愛妻家の! お噂はかねがね!」
「か、かねがね、なんですか……?」
 どんな噂をと戸惑う陽太。
「貴女様がサニー様とご家族の皆様ですわね。フレイ様から賑やかな御家族様とお伺いしておりますわ」
「お、お伺いしてるの?」
「……申し遅れました、わたくし霞と申します。以後お見知りおき下さいまし」
 何を伺っているのかと焦るサニーに霞が丁寧にお辞儀をする。
 自己紹介も終わった所で、楽しいお茶会が始まった。
 陽太は自己紹介も早々に自分の娘と似た名前の陽菜都に親近感を感じて卒業生の立場で蒼空学園の様子を尋ねたり、サニーは陽太にノーンのイベントでの奮戦ぶりを大仰に話しノーンに慌てて止められたり。
 お勧めのお守りを聞かれたサニーが怪しい物を取り出そうとするのを慌ててレインとクラウドが止め、サリーが選んでみたり。
 ひとしきり話が弾んだ後、ノーンがふと語り出す。
「そういえば昨日ね、怖い夢を見たの……」
 ノーンは夢の中でパラミタが壊れ、誰もいなくなった世界に1人佇みとても寂しく悲しかったと、皆に話す。
「あ! 私も……そういえば見たわ、そんな夢」
「僕も……」
「三月も? それであんなに激しく……いえいえ」
 慌ててサニーが口籠っていると、幸いな事に空気を読まないフレンディスがそれに同意する。
「そういえば私も見ました。この世界が終る夢を」
「私も! 私も見たの! コハクと一緒に。この世界が壊れて……ウェザーも壊れてしまった夢を」
「えぇえ、そんな縁起でもない!?」
「ごめんねー!」
 皆の夢の話でもちきりとなる中で、ノーンが立ち上がった。
「夢の中だけど……もう生きられなくなった人たちと消えちゃった誰かの為に歌ってあげたいな」
 そう言うと、清らかな声で天使のレクイエムを歌いだす。
 終ってしまった世界を、悼むように。
 全員がその歌声に耳を傾けた後、陽太は小さく、しかしはっきりと告げる。
「世界が理不尽に終わることがあるかもしれません。だからこそ俺は環菜と陽菜、それとノーンたち家族のみんなと過ごせるこの世界と日常を大切に守っていきたいと想います」
「そーだね、みんなと一緒に過ごせるこの世界がわたしも大好きだよ!」
「私も!」
「私だって!」
「私も……みなさんのことも、マスターのことも大好きです」
「ふ、フレイ……」
 サニーと美羽が口々に同意する中、不意にフレンディスの本音を聞いて感動するベルク。
「そうだ、サニー、今日のお勧めの商品とか、ない?」
「ええと……そうそう、あるわよ、とっておきのが!」
 美羽に言われてサニーは手を打つと、踊り出さんばかりの勢いで店の奥へと走り出す。
「姉さん……何を」
「まさかアレを!」
 それを見たレインとクラウドが顔色を変えてそれを追いかける。
 心配になった三月も慌てて後を追う。

「見てみて! これ、すっごく面白いんじゃない?」
「何でしょう、これは?」
「えー、何何ー?」
「うわー、すっごーい!」

 今日もいつもと変わらぬ明るい声が、蒼空の元に響き渡る。


担当マスターより

▼担当マスター

こみか

▼マスターコメント

 初めての方、はじめまして。もしくはお世話になっております。
 ――そして、最後の最後まで、どうもありがとうございました。
『終りゆく世界を、あなたと共に』を担当させていただきました、こみか、と申します。
 最後にまた、こうして皆さんのアクションを担当できたこと大変ありがたく思います。
 蒼空のフロンティアも間もなくラストということで、最後にこういった形のシナリオを出すことができとても感慨深いです。
 皆様のキャラクターを蒼空のフロンティアという舞台で活躍していただくお手伝いができ、大変嬉しく思っております。
 自分だけではとても見ることが出来なかった世界を見せていただけたと、とても感謝しております。
 自分の物語を紡ぐためにこちらを選んでくださった方、物語の補完のために動いてくださった方……本当にお世話になりました。
 エロ目的の方も相当数いらっしゃいましたが……最後の最後なので楽しんでいただければと。
 今後もこみかのえろい? 文章が気になるという方、それ以外でも気にして頂けると言う方は、またよろしければ『岡野こみか』の名前で電子書籍の方をチェックしていただけるとありがたいです。
 Renta!、パピレスさんにてこみかのBL小説『ゼロコンマ』シリーズ等を配信させていただければと思っております。
 そしてもし機会がありましたら、三千界のアバターの方でも、よろしくお願いします。

 それでは、最後の最後まで、どうもありがとうございました!