百合園女学院

リアクション

第５章　エピローグ

　優子の館内放送が流れた後、テロリストは逃走に転じた。
　扉の破壊に成功した契約者は、捕らえられていた人々を実験室から出していった。
　ただ、実験室には多少神経ガスが撒かれていたため、救出に入った者も中毒を起こしてしまう。
「またせたな」
「マスクをしていない者は、救出より先に、廊下の窓を開けろ！」
「一人も死なせない……！」
　テロリストから奪ったガスマスクをして、コウ、燕馬、かつみが解毒剤を持って駆け付けた。
「羽純くん……！」
　遅れて、歌菜とダリルも駆け付け、救出に当たる。
「手遅れか……いや、まだだ。時代はまだ、貴女を必要としている」
　ダリルは心肺停止状態のラズィーヤの蘇生を試みる――。

　上空からテロリスト逃走を確認し次第、関係国の特殊部隊がキャンパスに送りこまれた。
　研究棟の屋上に着陸したヘリコプターに、症状の重い者から運び込まれ、日本の病院へと搬送されていった。

　神楽崎優子は、ラズィーヤと同じヘリコプターに乗ることを望み、共に病院に運ばれるはずだった。

　しかし。
　病院に到着したヘリの中に、ラズィーヤの姿はなかった。



　ラズィーヤの身体は忽然と消えたままだったが、事件の真相と、彼女の真意は世界中に知れ渡った。
　いや、それが真意だったのかは、彼女自身にしか分からない。
　ただ、命を賭けて、シャンバラを守ろうとしたこと。
　シャンバラと捕らえられた人々を守るために、命を賭して皆を導いたことは事実だろう。

　捕らえられたテロリストにより、マスコミに虚偽の情報を流した者、そして犯行グループの正体はグランツ教の残党であったことが判明した。
　再選したミルザム・ツァンダや、裏からサポートしていたフィローズ・ヴァイシャリーの政治的力を削ぎ、地球人、シャンバラ人双方の不信感を募らせること。
　ひいては、地球とシャンバラの結びつきを弱めることが彼等の目的だった。

　フィローズは事件終息後すぐに、冤罪が証明され釈放された。
「ラズィーヤの身体が消えたそうだな。パートナーの桜井静香にもパートナーロストの影響は表れていないと聞いた」
　迎えの車に乗り込み、秘書へ告げる。
「妹は死んでいない。おそらく、光条世界の仕業だろう。光条世界の使者エルキナはラズィーヤに幾度も接触していた。連中の目的は、日本側の政治的調整役である俺への牽制だけではなかったということだろう」
　ゆっくりと走りだした車の中でフィローズは独白のように続けた。
「……奴らはラズィーヤに代替としての“資格”を見出したというのか」
　流れる景色に目を細めながら、フィローズは苦く呟いたのだった。



■リアクション担当マスター
神楽崎班…川岸満里亜
キロス班…冷泉みのり

■イラストレーター
２頁…ケイマ
遠野　歌菜（とおの・かな）
ロザリンド・セリナ（ろざりんど・せりな）
神楽崎　優子（かぐらざき・ゆうこ）

３頁…竜生真希
新風　燕馬（にいかぜ・えんま）
瓜生　コウ（うりゅう・こう）
千返　かつみ（ちがえ・かつみ）

４頁…月島たるほ
ダリル・ガイザック（だりる・がいざっく）
キロス・コンモドゥス（きろす・こんもどぅす）
アルテミス・カリスト（あるてみす・かりすと）

５頁…藤　千明
ジャジラッド・ボゴル（じゃじらっど・ぼごる）
ラズィーヤ・ヴァイシャリー（らずぃーや・う゛ぁいしゃりー）
国頭　武尊（くにがみ・たける）

６頁…ＴＳＵＬＵＧＩ
レン・オズワルド（れん・おずわるど）
ベアトリーチェ・アイブリンガー（べあとりーちぇ・あいぶりんがー）
セレアナ・ミアキス（せれあな・みあきす）

■ボイスドラマキャスト
瓜生　コウ（うりゅう・こう）…領家サイカ
国頭　武尊（くにがみ・たける）…ＫＥＩＩＣＨＩ
ベアトリーチェ・アイブリンガー（べあとりーちぇ・あいぶりんがー）…栗原璃栖
ロザリンド・セリナ（ろざりんど・せりな）…シジマ
遠野　歌菜（とおの・かな）…山口紀子
ダリル・ガイザック（だりる・がいざっく）…遠野志貴
レン・オズワルド（れん・おずわるど）…遠野志貴
ジャジラッド・ボゴル（じゃじらっど・ぼごる）…大熊誠一郎
セレアナ・ミアキス（せれあな・みあきす）…瑞木にょこ
新風　燕馬（にいかぜ・えんま）…田村マミ
アルテミス・カリスト（あるてみす・かりすと）…成田佳恵
千返　かつみ（ちがえ・かつみ）…平辻朔耶
神楽崎　優子（かぐらざき・ゆうこ）…岡田みほ
キロス・コンモドゥス（きろす・こんもどぅす）…ま〜坊
ラズィーヤ・ヴァイシャリー（らずぃーや・う゛ぁいしゃりー）…成田佳恵
機晶ロボット１…久潟椎奈
機晶ロボット２…熊谷奈保
機晶ロボット３…績利
テロリスト…蒼空のフロンティア運営チーム