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バレンタイン…雪が解け美しき花びら開く…

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第31章 尊敬する貴女に・・・

「剛太郎、そなた・・・男から女にチョコをやるってどう思う?」
「えっ!?どうって・・・」
 大洞 藤右衛門(おおほら・とうえもん)の突然の言葉に、大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)は目を白黒させる。
「ていうか誰に渡す気ですか?」
「その、アーデルハイトに・・・っ」
「な、本気ですか!?」
 照れながら言う彼に剛太郎が驚愕の声を上げる。
「しかし、どこにいるか分からんから、ちと探して来てはくれないか?」
「分かりました・・・」
 本命チョコなのだろうか、それとも義理なのだろうかと考えつつ、アーデルハイトを探しに行く。
 剛太郎がアーデルハイトを探しにいった頃、彼は民家のキッチンを借りて作り始める。
「むっ、チョコは丸ごと溶かしてはいけないのか」
 市販のチョコを溶かしてみたものの、上手く溶かせず歪んだ形になってしまった。
「ふむ・・・チョコとはこうやって溶かすものか」
 携帯で溶かし方を調べ、銀紙をベリベリと剥がす。
「なるべく細かく切らないといけないみたいじゃのぅ」
 包丁でザクザクと板チョコを刻んでいく。
「とろとろになってきたな」
 ゴムベラでコトコトと湯煎で溶かし、型の中に流し込む。
「ふぅ、後は固まるのを待つだけじゃな」
 数十分後、ひえひえに固まったチョコを冷蔵庫から取り出す。
「箱は森色にするかな」
 型から丁寧に外したそれをイルミンスールらしい箱に詰める。
「包む紙はこれにしよう」
 箱を包装紙で包んでリボンを花のようにアレンジをする。
 可愛らしくラッピング出来たが、見る者が見れば本命チョコのように見えてしまう。
「ちゃんと連れてきてくれるのだろうか。もし遊園地なんかに行かれて、2人で遊んでたりしたらわしは・・・っ」
 不安に思いながら落ち着かない様子でキッチンの近くをうろうろと歩く。
 その頃、剛太郎はアーデルハイトを町中で探し歩いている。
「超じいちゃんはどういう気持ちで渡すんでしょうか?まさか、本当に本命だったりなんてことは・・・」
 どんな意味で渡すのか気になりながら魔女を探す。
「あそこのショップにいるのは、もしかしてアーデルハイト・・・?」
 ウィンドウ越しに美味しそうなお菓子を眺めている彼女を発見する。
「アーデルハイト、今って暇ですか?」
「ん、食べ歩きを楽しもうと来たからのぅ。暇といえば暇じゃなく、暇じゃないといえば、暇ではない。そんな感じじゃ」
「では自分と一緒にちょっと来てもらえませんか?自分の超じいちゃんがチョコを渡したいそうです」
「何っ、チョコとな!?さっそく行こうではないか!」
 杖をふりふりアーデルハイトは彼について行く。
「連れてきましたよ、超じいちゃん」
「ありがとう、剛太郎」
「のう、チョコはどこじゃ?」
 空気を読まずアーデルハイトがチョコを探す。
「どうしたんですか、渡さないんですか?」
「―・・・いや、いざとなると、どう渡したらいいものか」
「はぁ、まったく。ほら、早く渡してください。(世話が焼ける超じいちゃんですね)」
 剛太郎は彼の背中をドンッと押してアーデルハイトの方へ押した。
「おぉ、それを私にくれるのか?」
「ど、どうぞっ。アーデルハイトのために一生懸命作ったんじゃ」
「ありがたくいただくとしようか!」
 アーデルハイトはラッピングを開き、その場で食べ始めた。
「ふむ、美味いのぅ」
「喜んでもらえてなによりだ」
「(アーデルハイトがこのまま自分の超ばあちゃんになったらどうしましょうか?そしたらエリザべートが義理の妹に?)」
 その光景を眺めている剛太郎は、頭の中でぐるぐると想像を膨らませてしまう。
 じいちゃんの方はアーデルハイトのことを、自分の子孫を幾代に渡って見守っている存在として、彼女のようになりたいと尊敬している。
 剛太郎には義理か本命か分からず、しばらくもしも・・・という状況を想像しっぱなしな状態が続いた。