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四季の彩り・雪消月~せいんとばれんたいん~

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四季の彩り・雪消月~せいんとばれんたいん~
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 第32章 増えていく思い出

「今日は楽しかったぞ、誘ってくれてありがとうな」
 外はすっかり暗くなり、パーティーからの帰り道。
 アリサ・ダリン(ありさ・だりん)は、別れ際に宙野 たまき(そらの・たまき)に笑顔を見せた。
「ああ、また、こういう機会があったら一緒に行こうぜ」
 アリサは何の躊躇も無く頷いて、それから家へと帰っていく。たまきも、また。
 緊張したりテンパったりもしたけれど、見得を張るのを止めてからは2人で楽しく過ごすことが出来た。
 味どころではない、という感じで最初はよく分からなかった料理もちゃんと味わえた。夜になって街のイルミネーションはますます綺麗で。それを眺めながら彼は歩く。
「……あっ! チョコレート!」
 そして、今更になって、肝心のプレゼントとしてのチョコレートを用意するのを忘れていたことに気がついた。
 パーティーでいっぱい食べたからそれで良し……なのか?

              ◇◇◇◇◇◇

 たまきがしまった、と頭を抱えている頃。
 桐生 理知(きりゅう・りち)もホテルから出て、辻永 翔(つじなが・しょう)と歩いていた。幸いというか何というか、歩道にいるのは彼女達だけ。
 チョコを渡して告白する。そう決めていて、この帰り道が最後のチャンス。
「翔くん」
 理知は足を止め、のんびりと歩く翔を呼び止める。緊張が伝わったのか、雰囲気の違いを感じたのか、彼は少し心配そうに戻ってくる。
「どうした? 理知」
「えっとね……これ」
 手作りしてきたチョコレートを取り出す。でも、まだ渡さずに両手に持って。
 ――ドキドキが翔くんに聞こえちゃいそう……。
(フラれちゃうかもって思うと怖いけど、前に進むためには伝えなくちゃ始まらないもん。うじうじ悩んでるのは私らしくないよね)
 うん! と心の中で気合を入れて、すぅっ、と、深呼吸。
「翔くん、私ね……」
 まっすぐに、思いっきり。チョコを持った両手を差し出して。

「翔くんの事が好きだよっ!」

 これまでで1番の、これ以上ないくらいに晴れやかな笑顔で、理知は言った。
「…………」
 正面に、目を丸くした翔の顔があった。びっくりしすぎて動けないというか、呆然としているというか。
 予想はしていたけれど、バレンタインにパーティーに誘われて、もしかしてとは思っていたけれど。気になっていた女子に告白されるというのは、こんな気持ちなのか。
 笑顔の中にも緊張が見えて。チョコレートを受け取りながら、翔は聞く。
「ありがとう。本当に、俺でいいのか?」
「翔くんが、いいの!」
 理知ははっきり、翔の瞳を見てそう答えた。
「俺も、理知が好きだ。これからも、よろしくな」

 静かな歩道を手を繋いで歩きながら、翔は少し照れくさそうに理知に言う。
「理知、その格好、すごく似合ってるよ」
「え? うん! ありがとう」
 可愛い桜色のワンピースに、髪には花の髪飾り。パーティだからいつもよりおめかししてみよう。そう思って頑張ったから、似合ってるって言われるとやっぱり嬉しい。
「今日、本当はずっと緊張してたんだ。普通にしようとしてみたけど、俺、変じゃなかったか?」
「そんなことないよ! めちゃくちゃ落ち着いて見えたよ!」
 2人で飾らない会話をしながら、海京に帰る。
 彼と彼女の思い出は、これからひとつひとつ増えていく。