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第22試合

 
 
『第22試合となります。
 イーブンサイド、松平 岩造(まつだいら・がんぞう)パイロット、アンド、武者鎧 『鉄の龍神』(むしゃよろい・くろがねのりゅうじん)フェイト・シュタール(ふぇいと・しゅたーる)サブパイロットの龍皇飛閃
 対するは、オッドサイド、AI制御の離偉漸屠です』
 龍皇飛閃はスフィーダをベースとしている。青い機体は関節部が黒く、飛行形態時のデザインが鳥よりも東洋の龍を思わせるものになっていることから、イメージ敵に青龍を思わせる物となっている。人形形態のままでの宇宙空間での運用が主眼におかれており、各部バーニアが強化されている。
 対する離偉漸屠は、まあ、その、離偉漸屠である。巨大な顔に四肢がついたデザインで、頭部に大型砲を装備し、金棒を武器としているが、ベーシックの仕様ではパワー不足は否めない。
「シャンバラ教導団と日本のために、頑張れ頑張れ、岩造! 教導団と日本の勝利のために負けるな、負けるな、岩造!」
 観客席では、ドラニオ・フェイロン(どらにお・ふぇいろん)が巨大な教導団旗と日章旗を振り回して応援していた。その勢いに、周囲の観客たちがちょっと迷惑そうに避難している。にしても、この巨大な応援旗を二本も軽々と振り回しているのは、さすがはドラゴニュートだというところだろうか。
「ふ、あれに応えなければな」
 龍皇飛閃のコックピットの中で、松平岩造が少し嬉しそうに言った。
 山岳基地から飛行形態で飛び出した龍皇飛閃が、予定戦闘エリアに近づく。
「そろそろ戦闘ステージのはずでございますが、敵の反応がありません」
 索敵を行っていたフェイト・シュタールが松平岩造に告げた。山間部のようだが、あまり地上戦むきの地形ではない。空中戦主体のフィールドなのだろうか。
「どういうことだ。臆して逃げだしたのか?」
『これ、決めつけるでない。まずは冷静な状況分析じゃぞ』
 熱くなる松平岩造を、武者鎧『鉄の龍神』が軽く諫めた。
「フェイト、索敵範囲を広げろ」
「了解いたしました……。反応あり。あの洞窟の中に高エネルギー反応があります。
「やっかいな場所だな。変形し、突入する」
 龍皇飛閃を人形形態に変形させると、松平岩造は洞窟に突入していった。
 洞窟は巨大な鍾乳洞になっており、天井からは鍾乳石が、床からは石筍が縦横無尽に突き出ていた。
『機体を引っ掛けないように注意するのじゃぞ』
 武者鎧『鉄の龍神』がアドバイスする。こう障害物が多くては、大きな回避運動は自滅を招く。小型の離偉漸屠には有利な場所だ。
「攻撃来ます!」
 フェイト・シュタールが叫ぶと同時に、天井の一画が爆発して、衝撃で折れた鍾乳石が槍のように龍皇飛閃の上から降り注いできた。
 腕で頭部センサーを守りながら、龍皇飛閃が加速して危機を脱した。
「敵発見。前方50!」
 フェイト・シュタールが告げる方に、頭部キャノンから硝煙をたなびかせながら逃げて行く離偉漸屠があった。
「逃がさん!」
 光条サーベルを引き抜くと、龍皇飛閃が一気に加速した。
 青白い光条サーベルの輝きに、洞窟の中が幻想的に照らし出される。
 逃げられないと判断した離偉漸屠が、くるりと振り返って棍棒を振りかぶった。
 そこを、横一線、龍皇飛閃が光条サーベルで斬り抜ける。
 真っ二つにされた離偉漸屠の上半分がずるりとスライドし、直後にボンと煙をあげて小爆発を起こした。
 
    ★    ★    ★
 
『勝者、龍皇飛閃です!』