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第5章 狂気の実験

「さて、他のみなさんも、研究の補助を行って頂けるということでよろしいのでしょうか?」
 キイ・チークは、慇懃な口調でそういってのけると、生徒たちを、海京アンダーグラウンドの奥へと促した。
「とりあえず、ついていくしかないね。まずは、この施設のことをよく知らないと。捕まった生徒たちがどこにいるのかも、確認しないといけないしね」
 五百蔵東雲(いよろい・しののめ)は、慎重な足取りで歩き始めた。
「東雲のいうことはもっともだが、代表はどうした? 急に姿がみえなくなったが」
 上杉三郎景虎(うえすぎ・さぶろうかげとら)が、東雲について歩きながらいった。
 確かに、榊朝斗(さかき・あさと)たちの姿が見当たらなかった。
「こっそり場を離れて、捕まった生徒たちの居場所を探しているみたいだよ。俺も、一応密偵を放ったんだよね」
 掌についているパラミタシマリスの毛を一本つまんでみせて、東雲はいった。
 他にも、さらわれた生徒を探して艦内の探索に向かった生徒はいるようだった。
「なるほど。それにしても、身体は大丈夫か? その足取り、ただ用心してるだけではなかろう」
 上杉は、鋭く見抜いて、いった。
「ああ。大丈夫。例の件で、若干身体が腐り始めているようだけど、それはそれ。この事件を解決するまでは、もちこたえてみせるよ」
 東雲は、手をぶんぶん振ってみせて、先を歩いていった。
「やれやれ。手荒なことになれば、俺が東雲をかばって闘うことにしよう」
 穏やかならぬことをいいながら、上杉は施設の内部を、仔細に見分した。

「さあ、みなさん。ご覧下さい。この檻に入っているのが、私たちが実験対象として捕獲し、治療を行っている強化人間や、その他の生徒たちです」
 キイは、一群の檻の並びを指して、いった。
「くっ、何をいっているの? 人を檻に入れて、実験だとか、治療だとか」
 東雲は眉をひそめたが、ぐっと感情をこらえた。
 檻の中には、ぽかんとした表情で、じっと体育座りをしている女生徒の姿があった。
 女生徒は、しばらく、見学にきた生徒たちにも気づかないのか、それこそ、ぼうっと空間の一点をみつめていた。
「この被験体は、少々おっちょこちょいなところがあるので、戦闘用としての開発は行わないと決まりました。そして、いまのところ、どのような用途で開発するかも決まらず、まあ、ご奉仕用にはなるのでしょうが、誰も、この子を好んで実験しようという研究者がいないため、こうして、檻の中に放置されている状態です。長い間、監禁して放っておいているので、そろそろ精神に支障をきたしているかもしれませんね」
 キイは、嘲笑を含んだ目で女生徒を見下ろして、言い放った。
 ご奉仕用、という言葉の意味が、東雲は気になった。
 何だか、キイの言動は、何もかもが、東雲にとって不快であった。
「はあ……」
 佐藤奏(さとう・かなで)は、キイの言葉など聞こえていないかのように、ぼうっとした目で宙をみつめているきりだ。
 よくみると、体育座りをしている太ももの間から、パンツがみえてしまっている。
 だが、誰も、そのことを突っ込む気さえ起きなかった。
「まあ、このようなキャラクターだから、幸いにも、ご奉仕用となるのを免れているわけか」
 上杉は、しきりにうなずいている。
「もちろん、被験体の全てが、このように静かなわけではありません。次の例をご披露いたしましょう」
 キイはそういうと、次の檻へと生徒たちを導いた。

「ふふ。凝ってるわね」
 名古屋宗園(なごや・そうえん)は、妖艶な笑みを浮かべながら、檻の中で、研究者の肩をひたすら揉んであげていた。
「ああ。いい気持ちだ。もっとやってくれ」
 研究者は、恍惚とした目をしている。
「これは、面白い例です」
 キイは、見学の生徒たちを、宗園の檻の前で立ち止まらせて、いった。
「まだ精神操作を施していませんが、その状態でありながら、ずいぶん積極的にご奉仕の役を務めています」
 キイのいうとおりだった。
 宗園は、嬉々として、研究者の身体を喜ばせようとしている。
 肩を揉む、宗園の胸が、研究者の顔に触れていた。
 そのことが、担当の研究者をまた、喜ばせているようだった。
「おい。そろそろ、俺がやってやろう」
 研究者はそういうと、宗園の肩をつかんで座らせた。
「いいわよ。それより……」
 宗園は、ぴとっと研究者に寄り添ってみせた。
「うん……」
 研究者は少しどきっとしたようだが、すぐにまた恍惚となった。
「ねえ。ずっとこうしていたいわね」
 そういって、宗園は頬を研究者の肩にこすりつける。
「あ、ああ……そうだな」
 研究者は、すっかり宗園の色香の虜になってしまったようだ。
「おい、お前が手玉にとられてどうするんだ。少し、実験してやれ」
 キイは、命令口調で、その研究者にいった。
「あっ、はい。おい、立って、手を後ろで組め。拘束してやる」
 研究者は慌てて、宗園を立たせて、後ろで組ませた手に、手枷をはめた。
「あら。何をされちゃうのかしら? どきどきするわね」
 宗園は、ニコッと微笑んでみせた。
「くっ、いいか、ショックを与えて、精神操作の下慣らしをしてやる!!」
 ばちーん
 研究者は、その頬を張り飛ばした。
「あ、ああ……いいわ。もっと!!」
 宗園は、真っ赤に頬を腫れあがらせながら身悶えて、研究者に背中を向けて床に倒れ込むと、そのお尻をたかだかと持ち上げてみせた。
「今度は、お尻を打って。お願い」
「あ、ああ!!」
 研究者は、ズボンのベルトを外すと、そのベルトで宗園のお尻を、夢中になって打ち始めた。
「いい、いいわー。もっとやって! 私は、あなたの奴隷よ」
 打たれるお尻を揺らして、いよいよ身悶える宗園。
 見学の生徒たちは、口をぽかんと開けてしまっていた。
 ここまで状況に適応できるというのも、すごいことだった。
「面白い例といいましたが、ここまで積極的になる実験対象もまた、非常に稀です。それでは、次の檻へ行きましょう」
 キイは、生徒たちの反応をみて、ニヤニヤ笑いながらいった。

「さて、次の檻では、わりとタフなようにも思える被験体をご覧に入れましょう」
 キイは、次の檻へと生徒たちを導いた。
「あ、あああああああああ!!」
 檻の中からは、アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)の、いつ絶えることもない悲鳴があがり続けていた。
「へへへ。いつ聞いても、いい声出して泣く女だぜ」
 レアル・アランダスター(れある・あらんだすたー)は、アリアの足枷から伸びる鎖を引いて、アリアを逆さまにした姿勢で、檻の床を引きずりまわしていた。
 アリアは下着姿だが、その下着ももうボロボロになっている。
「へへへ。オラにもやらせろ」
 ガオ・ゲオ(がお・げお)は、アリアの髪をつかんで引き起こすと、直立させた。
「ギャラリーができたようだからな。そろそろ、あれをやらせてもらおう」
 いって、ガオは、氷術を使って、氷でできた馬の彫刻を檻の中に出現させてみせた。
「ちょ、ちょっと、レアルさんもガオさんも、何やってるんですか!? 一緒に調査にきたんじゃなかったんですか? それがどうして……」
 水原ゆかり(みずはら・ゆかり)は、講堂まで一緒にいたはずの2人が早くも檻の中で研究者たちに協力している姿をみて、ショックを隠しきれない様子だった。
「なにって、提案があっただろ? 俺たちは、研究の補助を積極的にやらせてもらうことにしたんだ。この女、とことんまでいたぶると、精神波がむしろ安定してくるんだそうだ。その境地まで徹底的にやらせてもらうのさ」
 レアルは、ニヤッと笑っていった。
 ゆかりには、男たちが楽しんでいるようにしかみえなかった。
「ひ、ひどい!! アリアさんは、自分から望んだわけじゃなく、無理やりにさらわれてきた人なんですよ。それを……!!」
「カーリー。抑えて。いまは、状況確認。行動は後よ」
 マリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)が、ゆかりの肩をつかんでいった。
 そういうマリエッタも、内心では、憤懣やるかたない想いだった。
(とんでもない施設ね。絶対破壊だわ)
 だが、女生徒たちを確実に救出するには、研究者たちの隙をつく必要があった。
 ここで感情を露にすることは、任務遂行上、得策でないように思えたのである。
 いまは、研究者たちにうまくとりいって、情報をできるだけ得ることだ。
 相手の方が有利な状況だから、狡猾のうえにも狡猾になる必要があった。
「この生徒は、意外にも、いくらいたぶっても、悲鳴はあげ続けるのですが、精神に支障をきたすようなことがありません。むしろ、本人の意に反し、徐々に適応しているようにさえ思えます。うまく誘導すれば、精神的にタフなご奉仕者となることが期待されるのです」
 キイは、淡々とした口調で解説をした。
「素晴らしい研究対象だというのはよくわかりました。でも、お願いです。せめて、もう少し軽い責め方にしてもらえないでしょうか」
 ゆかりの言葉に、キイは、歯を剥き出して笑うと、こういった。
「ダメです」
「へへへ。ほら、冷えてるだろう。乗ったら、肌が凍りついてビリビリにしびれるほどになあ」
 ガオは、氷の馬の温度を急激に低下させ、恐るべき冷気を発散させながら、おびえきっているアリアにいった。
「やめて。もう満足じゃないんですか?」
「いや、全然。さあ、乗せてやろう」
 レアルとガオは、アリアの身体を抱きあげて、氷の死の馬にまたがらせた。
「いや。ああああああああ!!」
 恐るべき極低温の氷に素肌が触れたアリアは、突き刺すような冷気に悲鳴をあげて、身悶えた。
「く、くうっ」
 アリアの悲劇をまざまざとみせつけられたゆかりは、拳を握りしめた。
 地獄に堕ちて欲しい。
 それが、研究者たちに対するゆかりの、偽らざる心情であった。

「さあ、次は、最近は珍しくなりましたが、男性の被験体です」
 キイが示した檻の中には、ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)の姿があった。
「くっそー、この鎖、この俺がいくら力を込めても、びくともしないぜ」
 全裸の状態で鎖に拘束されているラルクは、舌打ちして、床を思いきり殴りつけていた。
「はっはっは。ラルク君!! 絶対絶命のピンチだな!!」
 体格のいい研究者が、腰に手を当てて仁王立ちになり、勝ち誇ったような視線でラルクを見下ろして、いった。
「んだとぉ? うん、なかなかいい身体してるじゃないか。熱く語りあえそうだぜ!!」
 研究者の身体つきをみて、ラルクはなぜだか、胸がときめく想いだった。
「ちょ、ちょっと、ラルクさん!! 全裸なんですか?」
 一連のやりとりをみていたゆかりが、我慢できなくなっていった。
「あぁ? みりゃわかるだろ!! 惚れたか?」
 ラルクは、ゆかりに片目をつむってみせた。
「何、いってるんですか。少しは隠したらどうですか?」
 ゆかりは、ため息をついた。
「俺は正々堂々!! お天道様の下で、隠すことなぞ、何もありゃしないぜ!! ど、どーん!!」
 ラルクはお尻に手を当てて、股間を勢いよく突き出して叫んだ。
「隠すところは、隠してよ」
 マリエッタが、頭痛をこらえながらいった。
「おいおい。実験中なのを忘れたか?」
 檻の中の研究者が、呆れたような口調でいった。
「ああ、そうだったな。まっ、好きにしてくれ!! いっとくが俺は、そう簡単には精神操作されないと思うぜ!!」
「まあ、そうだろうな。実は、お前を戦闘マシーンにすべきか、そういう系統の人向けのお色気マシーンにすべきか、私たちの間でも議論がわかれているところだ。いっそのこと、ハイブリッド型にするのも面白いと思っているが」
 研究者の言葉に、ラルクはかーっと吠えて、笑ってみせた。
「お色気っていうと、あれか? うふん、好きにしてっ、とか」
 四つん這いになり、研究者にごついお尻を向けて、甘えたような顔を出すラルク。
 みている生徒たちは、頭を抱えてしまっていた。
「ま、まあ、そうだな。それじゃ、四つん這いになってもらったところで、その状態で、どこまで激しい動きができるか、みせてもらおうか」
 鎖を引いて、研究者はいった。
「お? 四つん這いのままで暴れろってか? いいぜ、みせてやるぜ、野獣の本能を!! がおー!!」
 ラルクは吠えると、四つん這いの姿勢でダッシュして、研究者に襲いかかっていった。
「お、おわああああ」
 押し倒された研究者に、ラルクがのしかかっていく。
「ノリのいい被験体ですが、元気すぎて、教育が難しいようですね。まあ、いろいろな研究対象があった方が、データが豊富に揃いますので」
 生徒たちにそう解説するキイに、ラルクが吠えた。
「おい、あんた、責任者だろ? 俺、あんたに教育されたいぜ!! 今度、がっつり組み合おうぜ!! な? 捧げてやるぜ!!」
 キイにお尻を向け、おねだりするラルク。
「うん……まあ、気が向いたら、ですね。いまはやめておきましょう」
 キイは、そういうのみだった。
「ラルクさん、何だか楽しそうですね」
 ゆかりは、いった。
「でも、拉致されて乱暴されていることには変わりないわ。早急に解放しなくては」
 マリエッタが、いった。

「さあ、次の被験体は、既に精神操作済です」
 キイは、ラルクの隣の檻へと生徒たちを導いた。
「あっ、実験でしょうか」
 東朱鷺(あずま・とき)は、神妙な口調でそういうと、立ち上がって、キイたちの前に全身をさらしてみせた。
 例によって下着一枚の姿だが、目がとろんとして、虚ろだった。
「こ、これは!? ひどいよ。ここまでやってしまうなんてー」
 ネスティ・レーベル(ねすてぃ・れーべる)は目を丸くした。
 これが、精神操作を受け、マシーンにされた生徒の姿なのだ。
 禁忌の技術に触れているのだと、ネスティは思った。
「ネスティ。あまりみない方がいい」
 レム・アーネスト(れむ・あーねすと)が、ネスティの目を塞ぐようにした。
「ダメ。ちゃんとみる!! そして」
 みんな解放するんだから!!
 ネスティは、肚を決めた。
「そうですね。どこまで忠実にやれるか、定期的に試さなければいけないですからね」
 そういって、キイは、檻の中に手を差し入れた。
「はい。ありがとうございます」
 いって、朱鷺はひざまずくと、キイが差し入れた手に顔を近づけて、その掌をペロペロと舐め始めた。
「あ、ああ!!」
 ネスティは、叫ばずにはいられない。
 無惨な光景だった。
「誰か、私もやってみたい、という方はいますか?」
 キイは、生徒たちに冷やかすような目を向けた。
「手の掃除はもういいですよ。さあ、八卦術をみせなさい」
 キイに促されて、朱鷺は立ち上がると、術を発動した。
「八卦術・壱式!!」
 呪符がばらまかれ、まばゆいばかりの光が檻の中にあふれだす。
 光に照らされて、朱鷺の太ももが輝いていた。
「ご苦労様。このように、敵に奉仕して油断させたところで、瞬時に攻撃に移れる。これが、この被験体の魅力的なところです」
 そういって、キイは、朱鷺の首輪から伸びる鎖を、思いきり引っ張った。
 ふらふらっ、すてーん
 よろけた朱鷺は、床に転倒した。
「ありがとうございます。次は、何をすればよろしいでしょうか」
「しばらく、その無様な姿をさらしていて下さい」
 キイはいった。
 いわれたとおり、朱鷺は、倒れこんで、両足を広げた格好のまま、虚ろな目を天井に向けていた。
「こ、このまま放置しておくの?」
 ネスティは尋ねた。
「ええ。私がいいというまで、いつまでもこの姿勢でいますよ。たとえ、身体に異常をきたしたとしてもね」
 キイは笑っていった。
「く……最低だ」
 レムは、拳をきつく握りしめたが、それでも、そこで暴れることは控えた。

「さて、次は、暴れすぎて、処置せざるをえなかった例です」
 そういって、キイは、次の檻へと導いた。
「うふぅ、ぐわぁ」
 声にならない呻きをあげて、レグルス・レオンハート(れぐるす・れおんはーと)は、檻の中で身悶えていた。
「こ、この人は!?」
 ネスティは、驚愕に目を見開いてた。
 天井から鎖で吊り下げられているその男子生徒は、身体をただぶるぶるふるわせて、呻いているのみだった。
「あまり暴れるので、筋弛緩剤を打たせてもらいました。声もあげられない状態ですが、肉体を徐々に、順応させていきます」
 キイは、あくまで淡々と解説する。
 レグルスの周囲には2、3人の研究者がいて、よってたかって、棒で叩いたり、鞭で打ったりしていた。
 ぼご、どごっ
「が、があっ」
 レグルスは、すごい目で研究者をにらみつけていたが、身体が動かないので、どうすることもできないようだ。
「まるで、拷問ですね」
 レムが、キイを睨みつけていった。
「あくまで、育成です。手間のかかるトレーニングなどせずとも、肉体を鋼のように変えていくことができるんですよ」
 キイは、冷淡な口調だった。
「おや?」
 キイは、目を細めた。
 先ほど解説した檻のひとつの扉が開かれ、研究者が、鎖につないだラルクを、四つん這いにさせて歩かせてきたのだ。
「お散歩ですか」
「いやいや、面白いことを考えたので」
 そういって、研究者は、ラルクを、レグルスの檻の中に入れた。
「さあ、ラルク!! やってみろ、こいつを食らえ!!」
 研究者は命じた。
「よっしゃあ!! こいつもいい身体してるじゃねえか!! 気に入ったぜぇ!! がおー」
 ラルクは歓喜の叫びをあげると、レグルスの身体にかぶりついていった。
「お、おぐ、あ」
 ラルクの愛撫を受けて、レグルスの表情が和む。
「おりゃあああああ!! 根性入れてやるぜぇ!!」
 ラルクはレグルスの脇腹を抱えこんで、腰をこすりつける。
「あ、あああああああああ」
 レグルスは、あえいだ。
 不思議と、歓喜の想いがこみあげてきた。
 そして。
 レグルスは、筋弛緩剤を打たれたにも関わらず、身体を動かせるようになっていたのである。
「はあ。絶頂に達して、何かが突き抜けたようだ。あんた、すごいな」
 レグルスは、ラルクの肉体に悩ましい視線を向けて、いった。
「ああ。元気になって、何よりだ。それじゃ、今度は、俺にやってくれやあ!!」
 レグルスを床に降ろすと、ラルクは、ごついお尻をレグルスに向けて差し出し、怪しく揺らしてみせるのだった。
「いきましょうか」
 キイは、関心をなくしたような口調でいった。
 こうして、悪夢の見学は続いていったのである。

「入っていいかしら」
 水原ゆかり(みずはら・ゆかり)は、キイの研究室の扉をノックして、意を決していった。
「どうぞ。おや? 何の用でしょうか」
 キイは、予期せぬ客に興味深げな視線を注いだ。
 もう、捕われの生徒たちの実験を見学するのも終わって、調査隊の生徒たちは、各自、研究者たちとの交流に務めているところだった。
 みな、何とか情報を聞き出して、ゆくゆくは、実験対象の生徒たちを解放しようと、懸命だった。
 そんな中、ゆかりは、直接キイにあたる決心をかためたのである。
「単刀直入にいいます。あなたは、私をどう思いますか?」
 ゆかりは、座っているキイの前に身体を直立させて、いった。
「どうって……ああ、美しい方だとは思いますが。できれば、あなたを実験対象にしたいところです」
 ゆかりの全身を舐めるようにみてから、キイは、笑っていった。
 ゆかりは、キイの手をとって、握りしめた。
「む?」
「私を好きにして構わない、といったらどうしますか?」
 ゆかりは、キイの耳元に、甘く囁いていた。
 内心では、キイには嫌悪感しか感じないゆかりだったが、それでも、会心の演技を披露してみせた。
「なるほど。私の女になる、というわけですか。確かに魅力的ですね。で? 情報が欲しいのですか?」
 キイは、ゆかりの背中に腕をまわして、自分に引き寄せながら尋ねた。
「そう。情報も欲しいですが、それより、私を好きにもてあそんで構わないので、檻の中の生徒たちの扱いを、緩和して欲しいんです」
 ゆかりは、スカートの裾をちょっと持ち上げて、太ももをちらつかせてみせた。
 その太ももに、キイの目が釘づけになる。
「君は、そうするだけの値打ちがあるのでしょうか?」
「試してみますか?」
「そうですね。お約束はできませんが、こういう展開は大歓迎ですよ。いろいろとあなたを検分してから、回答させて頂きます」
 ガチャリ
 そのとき、またしても扉が開いて、マリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)が研究室に入ってきた。
「カーリーだけを、そんな目にあわせるわけにはいかないわ」
「マリー!!」
 ゆかりは、驚いていった。
「おや。それでは、あなたも私にかしずくのですか?」
 キイは、ゆかりの太ももに手を這わせながら、マリエッタをみて、目を細めた。
 キイにしてみれば、夢のようなシチュエーションだった。
「変な言い方しないで。あたしも参加するけど、あたしはあたしなりのやり方で、やらせてもらうわ。いろいろやってあげるんだから、絶対、こちらのいうことも聞いてもらうわ。いいわね」
 マリエッタは腰に手を当てて、キイを睨みつけていった。
「マリー。あなたまで、いいです」
「ダメ! 心配なんだから」
 マリエッタは、頬を膨らませた。
「さあ、キイとやら。あたしをどうしたいかしら? すぐに決められないなら、あたしからやってあげるわ」
 マリエッタは、キイの胸元に手を差し入れていた。
「何ともまあ、面白い展開ですね。ただ、私だって、選ぶ権利はありますよ。そうですね、とりあえず、3人でお風呂に入りましょう。そのうえで、いろいろ考えさせて頂きます」
 キイはそういうと、ゆかりとマリエッタの手を引いて、2人をキイ専用の浴室へと導いていった。
「キイさん。それでは、身体を洗ってあげますね」
 ゆかりは、妖艶な口調でいって、先に歩くキイの背中をさする。
「くうっ、女慣れしてるみたいね。いいわ。骨抜きにしてやるから」
 マリエッタは舌打ちして、浴室に向かいながら、次々に着衣を脱ぎ捨てていった。
 恥じらいなどはない。
 この機会にいっそ、キイを征服してしまおうとさえ、マリエッタは考えていた。