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秋のシャンバラ文化祭

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    ★    ★    ★
 
「まったく、なんでサラダが、参加できないのですかあ!」
 観客席で、イコナ・ユア・クックブックはおかんむりです。自称ペットのサラダでペットレースに参加しようとしたのですが、レギュレーション違反でエントリーできなかったのでした。
「そりゃ、サラダは乗り物扱いだからなあ」
 炎雷龍スパーキングブレードドラゴンをペットと言うには、ちょっと無理があるんじゃないかと源鉄心がイコナ・ユア・クックブックに言いました。
「何を言うんですの。サラダは、りっぱな私のペットですわ。ちょっと前までは、手の上に乗るほどちっちゃくて、可愛くて……」
 それが、今や、飼い主のイコナ・ユア・クックブックよりも大きなドラゴンです。
「だから、大きくなりすぎだって」
「もう、サラダの……、サラダの賞味期限切れ!」
 源鉄心に再度だめ出しをされて、イコナ・ユア・クックブックがぺしぺしとサラダを叩きました。叩いたとは言っても、サラダからしてみれば蚊が刺したほどにも感じませんから、全然平気の涼しい顔です。
「イコナちゃん、ちょっと酷いです」
 さすがに、ティー・ティーが止めに入ります。
「分かりましたわ。サラダが勝てないのであれば、誰も勝ってはいけないのです。ふふふふふふ、このパンプキンパイで、卑しいペット共はイチコロなのですわ!」
「こら、まさか毒とか……」
 じゃーんと、イコナ・ユア・クックブックが取り出したパンプキンパイを見て、源鉄心が言いました。
「毒よりも確実ですわ。この美味しさに、ペット共はほっぺが落ちてのたうつのですわ!」
 そう叫ぶと、イコナ・ユア・クックブックは罠を仕掛けにトラックへと掛け出して言ってしまいました。
「後を追いましょう、レガートさん!」
 なぜか、パンプキンパイに目を奪われながら、ティー・ティーが言いました。
 
    ★    ★    ★
 
「頑張るんだぞ、はんぺん」
 がぶっ!
「ははははは、こいつう」
 頭をなでようとしたはんぺんにがっぷりと噛みつかれて、顔をひきつかせながらヴァルベリト・オブシディアンが言いました。
「まったく、骨がほしいなら、そう言ってくれればいいのに……」
 そう言うと、ヴァルベリト・オブシディアンが商売道具の超巨大大風呂敷をごそごそとやり始めました。
「あら、やっぱりその風呂敷、いいもんが入ってるんじゃない」
 銀狼の姿のダイア・セレスタイト(だいあ・せれすたいと)が、それを見てやってきました。
「それなら、充分に罠として使えそうね。いい、はんぺん。覚悟はいいわね。私たちの群れの一員として戦いに出る以上、負けは死を意味するわよ
 ダイア・セレスタイトに脅かされて、はんぺんが尻尾を股の間に入れてクーンと鳴きます。
「またあ、そんなに脅かすものじゃないよ。それに、罠ならちゃんと用意して……」
「そんな、ベリーが用意したようなちんけな罠じゃ、どんなペットも引っ掛からないわよ。もっと、ペットたちが欲しがるような物をたくさん用意しなくっちゃ。その点、あんたの風呂敷には、いい物が入っていそうねえ」
「いや、これは商売道具……」
「つべこべ言うんじゃないわよ。いっそ、あんたごと餌にしてしまえば、絶対馬鹿なペットが引っ掛かるはずよ。野生の欠片もないペットなら、ベリーを弄んでる間に、充分はんぺんが追い抜けるわよ。と言うわけで……」
 そう言うと、ダイア・セレスタイトがヴァルベリト・オブシディアンの襟首を噛んで持ち上げようとしました。
「えっ?」
「あんたごと餌にするに決まってるじゃない」
い、嫌だあ!!
 ローグ・キャストのミニキメラを見て、ヴァルベリト・オブシディアンがパニックになりました。
「餌よ、餌。さあ、行くわよ」
 ダイア・セレスタイトがヴァルベリト・オブシディアンの襟首を噛んで持ち上げると、有無を言わさずそのまま運んで行ってしまいました。
 それと入れ違うようにして、やっとフライングポニーに乗れた南天葛がレース会場へとやってきました。
「おーい、応援に来たよー。あれっ? はんぺんだけ? みんなどこ行っちゃったんだろう。しょうがないよねえ。とにかく、応援しているから、頑張るんだよ、はんぺん」
 南天葛に励まされて、はんぺんがワンと答えました。
 
    ★    ★    ★
 
「ペットレース、ペットレースぅ。わあ、あれなあに? ゴーレム? やだ、ぶさかわいい。ちょっと応援しようかなあ」
 スタートラインに一列にならんだペットたちを見た仁科姫月が、フォルテシモを見てキャッキャッと喜びました。同じゴーレムでも、ローゼンクライネとはデザイン的に大違いです。
「相変わらずだなあ、姫月は」
 ちょっとそのセンスに苦笑しながら、成田樹彦が仁科姫月を見つめました。