校長室
【2022クリスマス】聖なる時に
リアクション公開中!
「パッフェル、パーティお疲れ様」 「お疲れ、さま……円」 桐生 円(きりゅう・まどか)は、パッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)とグラスをカチンと合せた。 コンサートの手伝いと、ダンスパーティを楽しんだ後、2人は飲み物を持って、休憩室に下がっていた。 華やかなドレスや、メイク道具が置かれたその部屋で、2人は、2人きりでソファーに並んで腰掛けている。 「この一年楽しかったー、沢山デートとか出来たし、一緒に実家にも帰れたし。将来の明確な目標とかもできたりして、有意義な一年だったかも」 「目標……?」 パッフェルが不思議そうな目を円に向ける。 「ほら、パッフェルと一緒に、サバイバルゲームショップを2人で開くってヤツだよ」 「……ん」 「いいお店つくれたらいいなー、従業員にDSペンギン使おうよ。可愛いし、アルバイトとか沢山経験してるし、いい戦力になると思うよ」 「……面白、そう」 2人で開こうと約束した店の事を、楽しく語り合っていく。 だけど。 それは、楽しいのだけれど。 円は、グラスを置いて、少し沈黙した。 「円……?」 円の変化に、すぐにパッフェルは気付いて、じっと彼女を見つめてきた。 「なんだか、不思議な気分で」 円は弱い笑みを見せた。 (自然と将来一緒になるって感じ……それは、本当にうれしいし、このままでいいのかもしれない) でも。 円も、じっとパッフェルの目を見る。 (きちんと気持ちを伝えたい) 「あのね、パッフェル」 「……何?」 「よかったら、僕と契約してくれないかな」 円には、失ったパートナーもいる。 大切な人をパートナーにすることに、怖いという感情もある。 だけれどそれ以上に、繋がりが欲しかった。 パッフェルと一緒になりたいという気持ちが、抑えられなくて。 「今すぐって訳じゃないんだ、契約が特別な意味を持つか、それは解らない。これは、ボクの我が儘かもしれないけど、ずっと繋がっていたい」 どんどん顔が赤くなっていくことがわかる。 断られたらどうしようと考えてしまい、鼓動が高鳴っていき、不安が押し寄せて、逃げ出したいような衝動に駆られる。 円は大きく息をついて、真剣に自分を見つめ続けてくれている、パッフェルに想いの全てを話していく。 「そして、短大を卒業して。世の中の情勢とか、全部落ち着いたら」 「うん……」 「そして、一緒にサバイバルゲームショップを作ったら。あの……」 パッフェルはじっと、円の次の言葉を待っていた。 「結婚して、人生を一緒に過ごしてくれませんか?」 「うん、私も……円と、一緒がいい、わ」 ほっとした円の手に、パッフェルが手を伸ばした。 「約束、こういうの……婚約っていう、のよね?」 「う、うん。婚約だね」 「約束の、印……」 パッフェルは円の左手の薬指を、愛しげに自分の手で包み込んだ。 「ここに、用意する、わ。給料三か月分の」 「それって、婚約指輪? 給料三か月分とか……パッフェルどこでそんなことを?」 「円と、一緒にいるには……どうしたらいいのか、調べたの。だから」 印、を手に入れたら。 今度は自分の方から――大切な、貴方と約束を交わしたい。 そんなパッフェルの想いが伝わってきて、円の心に響いた。 どちらからともなく、顔を近づけてキスを交わした。