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【2022クリスマス】聖なる時に

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第13章 一歩踏み込んで

「宇宙を散歩しているような気分でした。思わず飛びたくなってしまいました」
 ルミーナ・レバレッジ(るみーな・ればれっじ)が微笑を浮かべながら、スープを口へ運ぶ。
「その翼で、宇宙をも飛び回れたら素敵だよな」
 パンを手に風祭 隼人(かざまつり・はやと)も微笑んだ。
 隼人は恋人のルミーナを誘い、空京を訪れていた。
 日中はスカイプラネタリウムで、星空の中をルミーナと一緒にゆっくり散歩して。
 夜には、予約していた高級レストランを訪れた。
 ここは2年前から、ルミーナと訪れることを夢見ていた場所だ。
 豪華なテーブルに椅子に、ずっと眺めていても飽きないほど美しい作りのシャンデリア。
 活けられた花々も美しく、最高の雰囲気のレストランだったが。
 それだけではなく、大きな窓から見える夜景がまた素晴らしいのだ。
「プラネタリウムで見た星々も綺麗でしたが、ここから見える星々も賑やかでとっても綺麗」
 ルミーナはうっとり景色を眺めている。
「ホント、ここまで綺麗だとは思わなかった」
 色のついた星たちは、空に浮かぶ遠くの星々のように瞬いている。
 窓からは大きなツリーも見えて。
 賑やかな飾りに、心が浮き立っていく。
 隼人は景色にも見惚れていたけれど。
 窓に映るルミーナの顔にも、見惚れていた。
「この光の中に、多くの人々が生きているのですね。多くの人々にとって、幸せな光でありますように」
 ルミーナは夜景を見ながら、人々の幸せを願っていた。
「幸せな夜でありますように」
 隼人も一緒に、空京の人々の幸せを祈る。

 隼人に合せて、ルミーナはお酒を飲まなかった。
 食後は、珈琲を飲みながらゆっくり談笑して。
 会話が途切れたその時に。
 隼人はルミーナの左手を取った。
 不思議そうに自分を見る彼女の薬指に。
 用意しておいた指輪をはめた。
 ルミーナは驚きの表情を浮かべる。
「俺は来年、大人になる。大人になってルミーナさんを愛し守る男になることを誓う」
 隼人は来年、ようやく20歳になる。
 だから――今年のジューンブライドの時よりも、一歩踏み込んで。
 彼女に、伝えたい。
 彼女に誓うことを決意していた。
「俺と結婚して一緒に幸せになってください」
 ルミーナは、しばらく驚いた表情のままだったけれど。
 隼人がじっと、真剣な目で彼女を見つめていると。
 我に返ったように、ほのかに赤くなって。
「ありがとうございます……」
 礼の言葉と共に、確かに首を縦に振った。
 隼人は触れたままのルミーナの手を握りしめた。
 ルミーナはもう一方の手を、彼の手に添えて、両手で包み込んだ。
「約束、です」

 隼人の言葉は。誓いは。
 大人になる――年齢が20になるということだけではなくて。
 大人になって。
 そして、彼女を愛し守る男になるという決意だ。