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リアクション
「ついにミリーネさんとハルカさんが結婚するんですね」
「二人もようやく結婚かぁ。ハルカの必死のアプローチが身を結んだな」
黒崎 竜斗(くろさき・りゅうと)と黒崎 ユリナ(くろさき・ゆりな)は、とある結婚式場の前にいた。
この式場は、昨年竜斗とユリナが結婚式を挙げた式場だ。
竜斗は、ちょうど今立っているここで、ユリナにプロポーズをした。
そしてそのままこの式場で幸せな結婚式を行い、結ばれたのだ。
「なんか、ここに来るといろいろと思い出すなぁ……」
「いろいろと、思い出しますね……本当に思い出深い……」
ユリナがしみじみと呟いた。それもそのはず、ユリナと竜斗はその前にもこの式場で模擬結婚式を行っているのだ。
何度も訪れている、ユリナにとっても竜斗にとっても、大切な思い出の場所だった。
そんな思い入れのある式場で今日、ミリーネ・セレスティア(みりーね・せれすてぃあ)と椿 ハルカ(つばき・はるか)が結婚式を挙げることになっている。
「ミリーネさんったら、プロポーズの仕方を教えてくれーなんて言うからビックリしちゃいました」
「そうなのか?」
「私はプロポーズされた側だから大したアドバイスもできませんでしたけど」
竜斗とユリナはそんな話をしながら、式場に入っていく。
「でも、結局なんて言ってプロポーズしたんでしょうか? 本人に聞いても教えてもらえなさそうですし、ハルカさんにこっそり聞いちゃいましょう♪」
そう言って、幸せそうに竜斗とユリナは微笑み合った。
今度は、祝われる側から祝う側に回った二人は、ミリーネとハルカの入場を心待ちにしていた。
式が始まると、竜斗たちは式の様子を静かに見守った。
入場してきたハルカとミリーネは、お互いにとても幸せそうに微笑んでいた。
ハルカとミリーネの式は滞りなく行われていく。
竜斗たちは、自分たちが結婚式を行っていた時のことに記憶を重ね合わせながら、見守っている。
(主殿に仕える身として幸せになってもよいのだろうか……)
一方でミリーネは式が始まったとき、そんなことを考えていた。
(いや、主殿ならばそんなことは気にしないであろうな)
隣を歩くハルカがあまりに幸せそうで、ミリーネも幸せな気持ちになったのだ。
今、ハルカが自分のことを幸せにしてくれているのだから、幸せになっても良いだろう、と。
「主殿とハルカ殿、どちらも大切な存在だ。健やかな時も病める時も二人を必ず護ってみせよう!」
ミリーネは、そう誓いの言葉を告げた。
ハルカはミリーネの誓いの言葉を嬉しそうに聞いていたのだった。
式が終わった後で、ユリナはこっそりハルカにプロポーズの言葉を訊ねた。
「どうプロポーズされたかは、わたくしとミリーネさんだけの秘密ですわ♪」
ハルカは、そう言って笑った。だが、ハルカの脳裏には刻み込まれている。
ミリーネがしどろもどろになって噛みながら『結婚してくれ』と、ストレートにプロポーズした姿が。
それは、ハルカとミリーネだけの秘密だった。