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2024年ジューンブライド

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リアクション

 一昨年のクリスマスだったよなぁ。俺が気持ちに気付いたのは。
 パラミタに来る前に出会って。それから今まで、戦う時も、ふざける時も……ずっと一緒にいたよなぁ。
 俺たちの関係が変わって、二年が経った。未だに実感できずにいるのは、片時も離れることがなかったからだろうか。

 キルラス・ケイ(きるらす・けい)アルベルト・スタンガ(あるべると・すたんが)を連れて来たのは、周囲に人気のない丘の、廃れたチャペルだった。
 不思議そうなアルベルトに何も言わず、キルラスはチャペルに入っていく。
 人気のない静かな空間に、ステンドグラスだけが煌めいていた。
「……アル」
 アルベルトを連れ出してからずっと黙ったままでいたキルラスが、ようやく口を開いた。
「俺はずっと、永遠なんてなくてもこの関係が続いていけばいいって……思ってたんさぁ」
 でも、とキルラスはすぐに言葉を続けた。
「アルも俺も軍人だから、何時命を落とすかわからない。そう思ったら、せめてこの関係を形として思い出に残したいなぁ……って」
 アルベルトと恋人になった頃は、結婚なんて考えたこともなかった。
 けれど……いつからだろう。結婚式が羨ましいと思うようになったのは。
「……」
 いつも積極的なのはアルベルトで、キルラスを引っ張ってくれていた。だから、
「せめて、こういう時くらいは俺にやらせてくれてもいいよなぁ?」
 だって同じ男なんだもの、いい格好したい時だって……。
 腕を差し出すキルラスに、アルベルトの表情が、ふっと和らぐ。
(あぁそうだ、お前も男だったなァ……)
 アルベルトは静かに笑って、キルラスの差し出す腕を取った。
(俺ばかりがずっとずっと、お前のことが好きだとばかり思ってたなんて)
 キルラスの横顔は、凛々しく見えた。

 キルラスはアルベルトの手を引いて、神父のいない祭壇の前まで歩いてきた。
 祭壇の前でアルベルトと向き合ったキルラスは、そっと箱を取り出した。
 ひっそり隠し持っていたその箱を開けば、小さなリングが2つ入っている。
「これ……キルが作ったのか……?」
 キルラスがアルベルトに内緒で指のサイズを測った、手作りのマリッジリング。
 そのシンプルなリングにはキラリと一粒、互いの瞳の色の石が嵌めこまれている。
 リングを一つ手に取ったキルラスは、アルベルトを見つめた。
「なぁ、一度しか言わないから聞いてくれなぁ……」
 泣きそうな顔をしていたキルラスが、ふっと笑った。
「アル……」
 プロポーズの言葉が終わるまで、アルベルトは優しく微笑んだまま、静かに聞いていた。
 言葉が途切れた。まだ泣きそうな表情のキルラスの顔に、アルベルトの手が優しく触れた。


 ……出会った時から、好きだった。
 キルラスがアルベルトの想いに気付いてからも、二人の関係はあまり代わり映えがしなかったかもしれない。
 それでもアルベルトは、キルラスの心に今までより近付けただけで良かった。
「ずっと、ずっと愛したかったんだ」
 ステンドグラス越しに零れる光がキルラスを照らしている。
 普段より男らしく見えたキルラスに、降り注ぐ光があまりに綺麗で……思わず惚れ直しただなんて。
「キル……俺も」
 愛している、という言葉にできるより、二人の気持ちの方が強くて。
 静寂の中で、キルラスとアルベルトは静かに見つめあって、静かに口付けを交わした。

 それは二人の間で結んだ、揺るぎない誓約の証だった。