リアクション
【マリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)の一日】
「ほら、起きて下さい」
「まだ眠いー……あと五分、いや五十分……」
「そんなに待てませんよ」
マリエッタはベットから出てこようとはしない。水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)の声を持ってしても、まったく起き上がる気配はない。
と、一度むくりと起き上がる。我々もゆかりと一緒になって、おはようと言おうとする。
「……まだ寝れる、空気がそう言っている」
そう言ってマリエッタはまた眠ってしまった。
その甲斐(もといせい)あって、順当にあわただしく出勤する羽目になったのは言うまでもなく。
マリエッタたちがやってきたのは教導団本部にあるオフィス。
いつもはオフィス内で仕事をするそうだが、仕事柄機密情報を取り扱うことも多いそうなので中での撮影はできない、とのこと。
機密情報を守ろうとしているのはひしひしと伝わってくる。だが番組的にはあまりよろしくはない。
「まっ、一先ずどこか座れるところで、簡単な仕事説明でもしようか」
そう言ってマリエッタとゆかり、我々は近くの喫茶店に入った。
彼女たちの説明を聞きながら、我々も気になった箇所を気にかけてみるが、
返ってくる言葉の多くは「答えられない」等味気ないものになってしまった。
仕事風景も一応は見せてくれたが、味気がなさすぎる懸念はあった。
それは夕方まで変わらず、我々はダメ元でこう切り出してみた。
―屋内プールで撮影、というのはいかがでしょう。
何故スタッフBがこんなことを言ったかは謎である。が男としては賞賛しておきたい。
その言葉にゆかりはきょとんとしていたが、マリエッタは特に考える風もなく「いいんじゃない」と答えてくれた。
こうして我々は肌色成分たっぷりの水着シーンを手に入れることに成功した。
「なんだか脱線しているような気が……」
「構わない構わない、気にしちゃ負けだよ!」
二人は同じ水着を着用していた。なのだが、ゆかりは体の凹凸がはっきりしているのに対し、マリエッタはなだらかな線を描いている。
「……気にしちゃ負けだよ!」
マリエッタは涙目になりながらも、ゆかりと一緒にプールでトレーニングをして一日を締めくくった。
これがマリエッタ・シュヴァールの一日――