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歴代グランドアイドル決定戦

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歴代グランドアイドル決定戦
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リアクション


四幕

 自分の意志ではなく、事務所の命令によって出場させられている人間というのもいる。
 綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)がそうだった。
「強制だったとはいえ、出る以上は手を抜く気はないわ」
「ええ、分かっています。……行きましょう」
 アデリーヌは優しく微笑むと、さゆみは黙って頷き舞台袖から出てステージに姿を現した。
 ステージ衣装は水着のような肌の露出が大胆なもの。さゆみは可愛らしさを前面に出したパステルカラーのもので、アデリーヌの衣装はデザインは同じだが、さゆみのそれとは違ってフリルなどの装飾はなく、清楚な感じの中に隠れたセクシーさを漂わせるようなものになっている。
 そして、手にはウォーターガンを持っていた。
 思わぬ衣装に観客たちは鼻の穴を膨らませて食い入るようにステージを見つめる。
 曲が始まり、二人の声はヘッドセットによってステージ全体に響き渡る。
 歌は失恋したばかりの女の子が浜辺に来たところから始まった。
 それに合わせて、さゆみはエクスプレス・ザ・ワールドを発動させる。
 瞬間、会場は演奏した音楽のイメージが実体化して真夏の浜辺へと変化した。
 歌にも変化が現れ、女の子の元に一人の男がナンパに来た。頭に来たので水鉄砲で勝負して勝ったら付き合ってあげると言ったら、そのままウォーターガンでの銃撃戦に。
 曲に合わせるように、さゆみとアデリーヌはウォーターガンを使い、互いを撃ち合いそして銃口を観客の方へと向けて放水した。
 観客からはしゃぐような声が次々とあがり、二人は再び歌に戻る。
 とっちめるつもりが、段々惹かれるものを感じ、そして新たな恋の始まりを予感する。
 終始スピード感のある曲を、さゆみは激しく情熱的に、アデリーヌはどこまでもたおやかな印象で歌い上げ、曲が終わると夏の浜辺は同時に消え去り、観客は大盛り上がりで二人の歌を賛辞した。
 さゆみはウォーターガンの水が空になるまで撃ち続け、笑顔でステージを後にした。


 それは数日前に遡る。
 サビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)シャムシエル・サビク(しゃむしえる・さびく)と再開していた。
 が、感動の再会とは程遠い。
 二人の間には浅からぬ因縁があるのだ。
 それでもサビクはシリウスがグランドアイドルのステージに呼んでいることを告げた。
「シリウスからの伝言だ。?逃げるのか? 大嫌いな契約者にもステージじゃ勝てない、しょせん脳筋って認めるわけだ。オレは逃げも隠れもしねーぜ。真っ向勝負だ、当日のステージ、待ってるぜ?」
 息継ぎ無しで言い切ったサビクは深く息を吸い込んで、役目は果たしたと言わんばかりにシャムシエルに背を向ける。
「ついでにボクの真意もいってやる。来なくていいぞ!」
 それだけ言って、サビクはその場を立ち去った。
 そして、今日。
 シャムシエルはやってきた。挑発に乗った形になってしまったが、あのまま引っ込めるわけもない。
「来てくれたんだな。……ありがとう」
シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)はシャムシエルを見るなり開口一番で礼を言う。殺気にも似た気配を滲ませていたシャムシエルは出鼻を挫かれて、フンと鼻を鳴らす。
「今日は演武って題目でバトルダンスだ。国家神を目指した花嫁と、超国家神、神話世界の対決ってわけだ。このカードは人呼べるぜ」
「興味ないよ。要するに、演武なら事故で怪我をしても文句はないわけだよね?」
「ああ、アドリブ上等だ! 本気でこい!」
 シリウスはついてこいと言わんばかりに激しい音楽が鳴り響くステージへと飛び出し、
「変身!」
 さっそく超国家神シリウスへと変身する。
 それを合図にシリウスの背後を急襲するようにシャムシエルが飛び込んでくる。
 嵐のように激しい連撃をシリウスは五獣の女王器・EXで展開して防ぎ、反撃に転じる。
 それは演武という演目でこそあるが、やっていることは白兵戦のそれである。
 それでも観客は二人から目を離さない。
 観客の目には綿密に打ち合わせされた打ち合いにしか見えていないのだ。その実態が、アドリブという名の殴り合いのような状態であってもだ。
 激しい音楽と歓声がステージを揺らすが二人にはそれすら聞こえていない。
 聞こえるのは、相手の動きを読むときに自然と入ってくる相手の唇の動きだけ。
「オレは、お前を憎しみから解放できるなんて思ってない」
「それは懸命だね。だって、そんなことは出来ないんだから」
「でも――受け止めることは出来ると思ってる」
「……なに?」
「お前の怒りとかそういうもん、そういうのが心の中に溜まってるなら全部オレに出して見ろ! オレが全部受け止めてやる!」
「出来ないことは……口にしない方がいい!」
 何撃目か分からない拳の応酬。
 二人は互いに拳に力を込めて両者顔を目がけて拳を振り抜く。
 と、
「ストップストップ! もう曲は終わってますよ!」
 泪が進行よりも長く時間を取っている二人に声を掛けに来た。
 二人の手はピタリと止まり、気づけば曲は終わっており観客席からは惜しみない拍手が送られていた。
「……やっぱり、殺さない戦闘なんてシラけるだけだったよ。……次はボクから出向いて殺してあげる」
「ああ、楽しみにしてる」
 シリウスがそう言うと、シャムシエルは振り返らずにステージを後にした。
 次は。
 シャムシエルはそう言った。
 それが彼女の中での小さな変化だと信じ。シリウスはサビクの元へと帰っていった。


「さあ次のエントリーは、オリュンポス12神! 男性のみで構成されたグループです! それではどうぞー!」
 泪がステージ袖を見ると――覆面に全身黒タイツの男たちが十二人現れた。
 さすがの出で立ちに泪の表情もさすがに固まる。
 そこにステージ中に高笑いが響く。
「フハハハ! 我らは世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポス! この会場は、我らが乗っ取った!」
 ドクター・ハデス(どくたー・はです)はステージに現れると号令をかけて、司会進行をしている泪を襲わせようとすると、それを止める声が聞こえた。
「そこまでです! 悪の秘密結社オリュンポスの戦闘員たち! それ以上の悪事は、この正義の騎士アルテミスが許しませんっ!」
「ったく、せっかく二人で遊びに来てたのに邪魔するなっての!」
 アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)キロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)はハデスたちに剣を向ける。
「ふん、いつもいつも鬱陶しい連中だ。行け!」
 オリュンポス12神に号令を発し、一斉に襲いかかる。
「キロスさん。私が正面で戦っている隙に背後に回ってください」
「ああ、頑張れよアルテミス」
 キロスが離れると、アルテミスはオリュンポス12神を相手に一人で戦い始める。
 その間にキロスは円を描くようにしてハデスの方へと周り込む。
「毎度毎度しつこいヤツらだな。いい加減に征服ごっこも辞めたらどうだ?」
 キロスは剣の切っ先をハデスに向けるが、それでもハデスの笑みは消えない。
「フハハハハ! そういう台詞は、向こうを見てから言うのだな」
「なに!?」
 キロスがハデスの視線を追うと、すでに戦闘員にやられたアルテミスの姿があった。
 戦闘員の手には女性もの下着、アルテミスは目に涙を溜めてステージに座り込んでいた。
 ブチッ……と、キロスの中で何かがキレた。
「てめえら……! そんなに死にてぇならそうしてやるぜ!」
「もし、そうするのなら彼女にはさらに辱めを受けることになるがいいのかな?」
「ぐ……!」
 キロスが悔しそうに歯噛みすると、
「いつまで出張ってるつもりだ! てめえらの出番は終わってるだろうが!」
 騒音と共にオリュンポス12神が吹き飛ばされる。
 ステージから出てきたのはギターを片手に狩生 乱世(かりゅう・らんぜ)だった。
 次の出番だったのに、いつまでもハデスたちがいるので文句を言いに来たのだ。
 体勢が崩れたことでキロスはハデスに剣を振り下ろす。
「むっ……余計な邪魔が入ったか……致し方ない撤退するぞ!」
 ハデスはステージを降りて観客をかき分けて逃げていく。
 キロスはハデスを追う前にアルテミスの方へ駆け寄った。
「大丈夫かアルテミス」
「ええ……一刻も早くハデスを追いましょう!」
 そう言うと、二人もステージを降りてハデスを追いかけた。
「なんなんだあいつら……。まあいい、気を取り直して……よぉっし、テメエら! 準備はいいか! あたいらフーリガンの二度目のライブだ! テンション上げていけ!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
 乱世はゴシックパンクな漆黒の軍服風コスチュームに身をつつみ、シャウトするように叫ぶと観客たちは野太い声で応えた。
「前回とは比べ物にならないほどの規模、人数……観客席からこれだけ声援があると、その熱気も凄まじいものがあるな……」
 キーボードを担当するグレアム・ギャラガー(ぐれあむ・ぎゃらがー)はステージから観客を一望しながら感嘆の声を上げる。
「始まる前からなに言ってやがる。これからぶっ倒れるくらい盛り上げるんだからよぉ。オラ! テメエらも気合い入れてけ!」
 乱世はドラムのモヒカンヒーロー、ベースのすごいパラ実生にも声を掛けてから再び観客に向かって叫ぶ。
「テメェらアゲていくぞ! 叫べ! 唸れ! 拳を振りあげろ! 派手に決めるぜ! 早速飛ばしていくぞ! 『Hack and Slash』!」
 激しい音楽がうねりを上げて、観客席を包み始める。
 
張り付いた仮面のような顔で 今日も愛想笑い
そんな日々に一体 何の意味がある?

ひとりはみんなのために みんなはひとりのために
だから全てを捧げ イケニエになれと迫る

いつだって悪魔は 笑顔の裏に
ドス黒い本性を 隠しているものさ

正直者がバカを見る 自己責任の世の中なら
フリーダムに キングダムに 俺様流貫いてやる

Hack and Slash! ぶち壊せ
虐げられた怒りが今 マグマとなって煮えたぎってるぜ

Hack and Slash! 打ち破れ
お前を塞ぐ見えない壁に 拳を振りあげ 打ちおろせ

欲しい未来があるなら その手で奪い取れ

ヘッドバンキングで観客の頭が不揃いな波を作る。
 強化人間として感情を抑制しているグレアムにも人の心を揺さぶる音楽の力は理解することが出来た。
 その追体験が彼の世界をまた少し変化させた。


「それじゃあ、ブルーウォーターファミリーのステージ開幕といきましょうかねぇ」
 ノンビリした口調でレティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)に声をかける。
「うん! 夫妻アイドルになって世界一になろう!」
「まあ、ほどほどに頑張りましょうねぇ」
 リアトリスはやる気十分だが、レティシアにはどこか覇気の抜けている感じがあった。
 二人の衣装はオレンジと白を基調にしたフラメンコドレスで揃えられており、リアトリスは超感覚によって、大きな白い犬耳と尻尾が生えていた。
 のんびりしたレティシアのテンションに合わせること無く、それでもリアトリスはやる気に目を輝かせて、スプリングロンド・ヨシュア(すぷりんぐろんど・よしゅあ)を見つめる。
「それじゃあ、よろしくね」
「ああ。任せておけ」
 ヨシュアは二人を背に乗せると、ステージへと飛び出す。
 ステージにはすでに情熱的な音楽が流れており、リアトリスとレティシアはギターの伴奏に合わせて円を描くように舞い、リアトリスが男役、レティシアが女役を務めてダンスは進行する。
 力強く大地を踏み、手拍子のテンポを細かく変えてステージを縦横無尽に動き回って徐々にテンポを速めていく。
 先ほどまで覇気の感じられなかったレティシアもリアトリスのダンスに応えるべく真剣な眼差しで相手をする。
 燃えるような激しいダンスに観客は息を呑み、最後はリアトリスがレティシアをお姫様だっこのように抱きかかえてダンスは終了した。
 拍手に手を振りながらステージから姿を消すと、いち早くステージを抜けていたヨシュアがワインを用意していた。
 二人はグラスにワインを注ぐと乾杯し、ワインを飲みながらリアトリスはレティシアに全力で甘えた。
「ん〜! 僕頑張ったよレティ〜!」
 レティシアの顔や胸に頬ずりしながら尻尾を左右に振る。
「うんうん。頑張りましたねぇ」
 レティシアも特に嫌がりもせず、リアトリスの頭を撫でた。
「やれやれ……」
 見ていられないとでも言うように、ヨシュアはため息をついて自らのグラスにワインを注ぎ、少し離れたところで二人を見ながらグラスを傾けた。


「朱里、頼むから無茶はしないでくれ」
 アイン・ブラウ(あいん・ぶらう)は何度目か分からない台詞を口にした。
 朱里・ブラウ(しゅり・ぶらう)は噴き出すように笑った。
「大丈夫だよ……まだ何も始まってないうちから心配してたら身体が保たないよ?」
 清楚な白のドレスに花冠姿の朱里はねー? と話しかけながらまだ目立たないお腹を優しくさすった。
「ブラウさん。そんな調子で本番失敗しないでくださいよ?」
 朱里と同じく白のドレスに身をつつんだアイビス・エメラルド(あいびす・えめらるど)はからかうような口調で言った。
「ああ、任せろ。この子の前でかっこ悪い真似はしないさ。その心配は向こうにしてやった方がいい」
 アインは薄く微笑みながら、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)の方を見やった。
「ううう……」
 ルカルカは身体をそわそわと揺らして、見るからに落ち着かない様子で視線をさまよわせていた。
 そんな様子を見てパートナーのダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は呆れたようにため息をついた。
「S@MPでもやってる事だろ?」
 ルカルカはS@MPというアイドルグループのボーカルやってる。
「それとこれとは違うよ」
「そういうものか」
 ダリルは言いながらルカルカの前に指を出すと、パチンと鳴らし幸運のおまじないをかけた。
「落ち着いたか?」
「……うん! 少し気分が楽になったかも。……あ! そうだ、みんなに渡したいものがあるんだ」
 ルカルカが慌ただしく出したのは翼の形をしたブローチだった。
 まずそれを、涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)に渡した。
「どうしたんだ? これ」
「いや、なんか連帯感っていうかさ、こういうの作ってみたかったから」
「へえ、いいねこれ。なんか、気が引き締まったよ」
 涼介は自らのスーツにブローチを取り付けて、顎を引きながらそれを見つめた。
 全員がブローチをつけて笑顔を浮かべる。涼介の言うように全員の気が引き締まる。
「と、朝斗。楽器のチューニングは出来た?」
 自分のブローチを見つめていた榊 朝斗(さかき・あさと)は、もちろんと頷いてみせた。
 朝斗は先端テクノロジー、機晶技術で全員の楽器を最高の状態に仕上げていた。
「朝斗は裏方でいいの?」
「これ以上あさにゃんとして有名になると色々と大変になるから……」
 朝斗は遠い目をしながら、ポツリといって、アイビスはそれ以上は何も言わなかった。
「それじゃあ、エール・ド・レーヴ。行きましょうか」
 朱里が全員に声をかけて、朝斗はその背を見送り全員がステージに出た。
 観客は朱里たちを拍手で迎え入れ、六人はお辞儀をしながら決められた位置に向かい、アイビスは合図を出して、六人でのアカペラが始まる。
 男性は涼介がテノール、ダリルがテナー、アインはバリトン。
 女性はルカルカと朱里がソプラノ、アイビスはメゾソプラノ。
 幸せの歌とマジカルステージ♪ で観客を惹き付けると、トランスシンパシーを発動させる。
 柔らかな女性の声と男性の深みの声が合わさり、六人の優しい歌声は観客に穏やかで幸せな記憶を想起させ、それがトランスシンパシーにより「幸せを願う思い」をより深く感じさせ、共鳴させてゆく。
 そしてアイビスは歌詞を五感で感じさせるために夢想の宴を使う。
 六人が紡ぐ歌が、観客の前に幻として現れステージにまで感嘆の声が漏れる。
 今、六人の歌声だけで会場は確かに一つになっていた。
 そして歌が終わると、しめやかな拍手が降り注いだ。
 朱里は一礼しながら、一歩前に出た。
「皆さん。ありがとうございます。今日は皆さんと、沢山の幸せを共有するために歌わせていただきました……出来れば、もう一度だけ歌わせていただけませんか? 幸福を願い、出会いを祝福するために『命愛づる詩』を」
「次は演奏付きだよ」
 アイビスが付け足すように言うと、観客から拍手が返ってくる。
 それが答えだった。
 男性陣はゆっくりと自分が演奏する楽器の前に向かう。
ダリルはシンセ二台、一台を電脳支配と光条零式によって思考で操作し、ピアノ系と弦楽器を同時に演奏し、伴奏が始める。
 それに合わせて、アインのピアノがダリルの機晶シンセサイザーが厚みと幻想的な雰囲気を重ね、涼介のコントラバスが二人の演奏に力強さを加える。
 そこに再び六人の歌声が響く。
 観客はいつしか、自然と身体を揺らし曲を静かに聴いていた。

緑なす大地に またひとつ生まれ来る 命
甘やかな風を運んで 花は咲き誇り 

ささやかな幸せを 願い捧げる 祈り
見上げた空の彼方に 光 輝いて

草むらを駆ける貴方を
雨音に口ずさむ貴方を
いついかなる時も護り 支え続けましょう

悲しみに涙する日が訪れても
差し伸べた手の温もりを忘れないように
この胸に抱きしめ 愛を誓いましょう

愛しい人よ 安らかに
まだ見ぬ明日に 夢の翼広げ 羽ばたいて


「さて、グランドアイドル決定戦もいよいよ終盤……なのですが。ここで運営に物言いが入りまして、なんでゆる族と動物部門がないのか……とのことです。そんなわけで、メインの前にこのお二方に歌っていただきましょう! 皆さん盛大な拍手を!」
 泪が会場を煽り、ステージ袖に手招きすると忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)緒方 コタロー(おがた・こたろう)が出てきた。
「かわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
 観客から甲高い声が響く。
「ポチちゃん、コタちゃん、頑張ってー」
 観客席に混じって、ポチの助の飼い主であるフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)は声援を送る。
 ポチ太郎は声援に応えながら、コタローの方を見た。
「さあ、コタちゃん! 動物とゆる族タッグの力、見せてやるです!」
「うん、ぽちたん、ここは『はいてく』の力れかっこいーきょくを、えんそうすうれすよ!」
 そう言って、コタローはこたのくらーとPCを使って作成した曲の再生を始める。
「ねーたん。こた、がんばるれす」
 コタローは自宅で待機している身重の緒方 樹(おがた・いつき)ことを思い浮かべながら、ポチの助と共に踊り始めた。
 曲は歌詞のないダンスポップ。
 底抜けに明るい調子の音楽に合わせて身体を動かす。
 女性の観客から甲高い歓声が聞こえる。
 コタローは空飛ぶ箒ミランで空を飛びながら隠れ身で出たり消えたりしてみせて、ぽちの助はステージを駆け回る。
 曲が終わると女性たちの黄色い声援が木霊する。
 ステージが盛り上がるのと次の曲が始まりジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)アリッサ・ブランド(ありっさ・ぶらんど)がステージ袖から出てきた。
 それと同時に二人は歌い出す。
 歌詞の内容は中々の電波ソングであったが、会場のテンションはそのまま二人を応援した。
 歌詞の一番目を歌い終えると曲はフェードアウトして、ジーナが先ほど歌った曲、ふたりはロリペタの電波ソングのCDを取り出した。
「みなさーん♪ ワタシ達のCDは買って頂けやがりましたかー? ダウンロード版は待ち受け画面が貰えるシリアルコード付きですのでそちらの方もよろしくお願いしやがりますです!」
「よろしくお願いします☆」
 アリッサは可愛らしいポーズを取る。商魂たくましい二人に半分は引いて、もう半分はその可愛らしさに魅了されて歓声を送っていた。
 と、
「おおーっと、今日はこの一曲だけじゃねぇぜ! オレ様もいるぜぇ!」
 上空から空飛ぶ箒ファルケに乗って新谷 衛(しんたに・まもる)はペンギンアヴァターラ・ヘルムと共にステージに舞い降りる。
オレ様☆惨状!
 そして、どこかの魔法少女のようなポーズを決めた。
 瞬間、ジーナがどこからともなくハリセンを出して衛の頭を引っぱたいた。
「何でバカマモが居やがりますですか?」
「何だよじなぽん、ありっちゃから聞いてねーのか? 今回はオレ様提供の新曲も披露するんだ」
「ああ、あの歌ですね。練習したから大丈夫で御座いやがりますよ!」
「みんなも一緒にれっつだんしんぐヨロシクだもんね! いつもの曲とアリッサちゃん達も初めて歌う新曲で行くよ〜☆」
「もちろん、オレ様もユニットに入ってるぜ〜! それじゃーいっくぜー!『それはムリ☆ムリ♪』」
 再びステージに脳髄が解けそうな曲調が流れ出し、三人は自分のパートになるとセンターに立って歌声を披露する。


きみのこと どうしてそんなに きになるの
もしかして これがこいって ものかしら?
でもわたし ちっともむねが いたまない
やっぱりね これはこいでは ないかもね?

ジーナ
きみが立っても座っても授業中でも居眠りしてても
きみの事だけずっと見てちゃうずっと見てちゃうずーっと見てちゃう!

アリッサ
かれが立っても座っても授業中でも気になっちゃうなら
だったら言ったら好きって言ったら好きって言ったら直接言ったら?

ジーナ
それは違うの誤解なの勘違いなのお門違いなの
彼の事だけずっと見ててもずっと見ててもずーっと見てても!

アリッサ
あなた違うわ誤解じゃないわ勘違いでもお門違いでも
やっぱり好きだわゼッタイ好きだわ好きって言うべきゼッタイ言うべき!

ねっ ねっ ねっ♪
気付いていてもいなくても 言葉にすれば何か変わるわ
ケンカなんかは 棚上げしましょ わたし達には必要ないわ
隠し事なんてムリムリ♪ 仲違いなんてムリムリ♪
ずっと仲良しだもの ね♪
だって だって わたし達 ふたりはロリペタ♪
だって だって わたし達…


ぺたんどうしは あらそわないわ もめないんだもの♪

「じゃ、つぎ2ばーん♪ 『きみのむね どうしてたにまが みえないの?』……って、アレレ? じなぽーん、ありっちゃー、なんでイキナリ歌うの止まったのかなー?」
 衛がそう言って、振り返った瞬間――ジーナのフルスイングしたハリセンが顔面に直撃した。
 地雷ワードを口にした衛への制裁はここで終わらなかった。
「逝ってこい三途の川!」
 衛に向かってジーナはさらに激しくハリセンを振り下ろす。それに便乗して、アリッサも衛を踏み付け始めた。
 突然コントでも始まったのかと観客は笑い始めるが、予定にないハプニングに泪が慌てて止めに入る。
 しばらくステージでモメながら、退場していく三人を見て、
「あいどるとはどの世界でもかような戦いなのですね……私、勉強になります」
 フレンディスは少しずれたことを言いながら、そんなことを呟いた。