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砂上楼閣 第二部 【後編】

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砂上楼閣 第二部 【後編】

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飛空挺が用意され、一行は、タシガン北西部の使われていない貴族の屋敷に向かおうとしていた。

白茶のパンダもどきのゆる族マルクス・ブルータス(まるくす・ぶるーたす)が、
アーダルヴェルト卿救出隊に片っ端から声をかける。
「烏龍様のご加護で生還間違いなしの我のストラップが欲しければ、
特別価格で御奉仕するアル!
 今ならたったの100Gアルよー!
 残していくパートナーのことが心配な人は、
 遺言状の書き方の本も一緒に買うといいアル!」
「って、マルクス! また人様に迷惑をかけやがって……!」
北条 御影(ほうじょう・みかげ)がマルクスをつまみ出そうとする。
「ミカゲんも、万一のことを考えてストラップを買うといいアル!」
「100Gって日本円換算で数万円だろ! ボッタクリだろうが!」
「薔薇学のお坊ちゃんならそんなの気にしねーアル。
 烏龍様のお告げでそう聞いたアルよ」
「あーはいはい脳内神様な」
「君子危うきに近寄らずアル。
我は精一杯応援してるアルから、みんな頑張って来るアルよー」
御影に捕まりそうになり、マルクスは適当な声援を送って光学迷彩で雲隠れした。
「御影殿、新たなイエニチェリが選ばれた今、
 この戦にてしっかり武功を立てていただかねば!
 せっかくならか弱き乙女を救出するのが最善でしたじゃが、
 もはやそのようなことを言っている場合ではござりませぬ!
 わしも気合を入れて掛かりますぞ……!」
「ああ、まったく……」
もう一人のパートナーの豊臣 秀吉(とよとみ・ひでよし)は暑苦しく燃えており、御影はこめかみを押さえた。


一方、グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)は、
ウィリアム・セシル(うぃりあむ・せしる)に密かに接触していた。
「久しいな、ウィル。422年振りか」
「陛下……」
エリザベス一世とかつての重臣の再会であった。
「積もる話もあるだろうが、力を貸してはくれぬだろうか? 一人の友人として、頼みたい」
ライザは、事件後を見据えたアフターケアのために、
ウィリアムの知恵を借りたいと思っていたのだった。
タシガン領主アーダルヴェルトの拉致により機運の高まる地球人排斥を押し留めるため、
この戦いの後の処理として、
武威だけでなく言葉などあらゆる手段で彼らの機運を和らげる方法はないかというのが、
ライザの頼みであった。
「例え信長何某が表向き民を纏めたように見えても、
 それだけでは事も収まるまい。
 武断の刻の後には平穏の日々が来るべきだ」
「陛下の御心のままに」
ウィリアムは現在ではパートナーであるヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)の本妻に忠誠を誓っているが、
かつての主君であるエリザベス一世にも変わらぬ敬愛を抱いている。
元より、タシガンの平穏を取り戻すことをウィリアムも望んでおり、救出作戦に参加するつもりであった。


いよいよ飛空挺が出発しようというとき、
スレヴィ・ユシライネン(すれう゛ぃ・ゆしらいねん)が追ってくる。
「探したぜ、アディーン
「なんだよ、俺は無理やり連れてかれるっていうのにタシガンに残るつもりかよ」
パートナーの梶原 大河にアーダルヴェルト救出に
強制参加させられているアディーンは、
薔薇学に残るというスレヴィに恨みがましい視線を送る。
「そう言うなよ。
 あんたに伝えたいことがあったんだ」
スレヴィは言う。
メニエス・レイン(めにえす・れいん)が魅力的なのは同感だけど、
好意を持つのと言いなりになるのは違う。
どうせなら彼女を味方につけられるよう、あんたの魅力で迫ってみたらどうだ?」
アディーンはきょとんとする。
「なんで俺にそんなこと言うんだ? あのお姫さんに興味あるわけ?」
「うん、機会があればゆっくりお茶でも飲みたいと思ってるよ」
スレヴィはにっこり笑ってみせる。
恋愛的意味ではないが、メニエスに対しての興味を持っているのだった。
「そうだな。あんな可愛いのに仲良くなれないはずがねえよ。
 ……っと、先に目つけたのは俺だからな」
「わかってるよ」
アディーンに、スレヴィはうなずいて見せた。