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地球に帰らせていただきますっ!

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地球に帰らせていただきますっ! 地球に帰らせていただきますっ!

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 剣のお嫁さん……? 
 
 
「ああ、日本だあ……」
 なし崩しにパラミタに行ってしまったけれど、元々片良木 冬哉(かたらぎ・とうや)にとっては我が家が一番。
「あーあ、このままずっとこっちにいたいなあ」
 慣れ親しんだ日本にいると、もうパラミタには行きたくなくなってしまう。といっても、中途半端で逃げ出すのは嫌だから、休みが終わったらパラミタに戻るつもりではいるのだけれど。
 
 子供の頃は金持ち趣味で嫌だと思っていた無駄に広くて豪華な屋敷も、久しぶりに見れば懐かしさがこみあげてくる。ここが冬哉の生まれ育った家なのだから。
「ただいまー」
 どうせ父親は仕事でいないだろう。マルティナ・グレイ(まるてぃな・ぐれい)から持たされてきた土産を母親に渡して、しばらくはのんびりさせてもらおう。
 そんな考えで家に入って行くと、母の片良木 秋子が迎えてくれた。
「あら冬哉お帰りなさい」
 冬哉という息子がいながらも、秋子は随分若く見える。といっても派手さは無く、落ち着いた線の細い和風美人といった雰囲気だ。
 帰ってきた冬哉を嬉しそうに迎え、秋子は言う。
「向こうの話は聞いてるわ。日本にいる時ぐらいはゆっくりしていってね」
「は? 聞いてるって?」
 誰からと問うまでもなく、秋子は答えた。
「マルティナさん、だったかしら。あなたのお嫁さんからメールで」
 どうやら冬哉の知らぬうちに、パートナーのマルティナと母とは連絡を取り合っていたらしい。
「アイツ……」
「まめに連絡をくれるのよ。内容はなんだかよく分からないことも多いんだけど……」
 マルティナが送ってくるパラミタでの出来事は、秋子にとってあまりにもファンタジーで、いまひとつ理解できていないようだ。ただ、息子が元気でいるのを知らせてくれるマルティナには感謝している。
「ほんとうにいいお嫁さんを見つけたみたいで。私も安心したわぁ」
「って、さっきからお嫁さんお嫁さんって、あいつは剣の花嫁だからな」
 お嫁さん、なんて言い方をされると紛らわしいと冬哉が指摘すると、秋子はあら、と首を傾げる。
「え? だから、お嫁さんでしょう? あの子もそう言ってたわよ」
 母親の笑顔がどかんと冬哉を打ちのめす。
 剣の花嫁という概念をよく理解できない母親と、マルティナのボケがあいまって、とんでもない勘違いを生んでいるらしい。
「良かったわね、家庭的なお嫁さんが見つかって。今度帰ってくるときにはぜひ連れてきてね。私もちゃんとご挨拶しないといけないから」
「ち、違っ……ま、マルチィィィィィ!」
 喉を裂かんばかりの冬哉の叫び。
 けれどそれは、パラミタにまでは届かないのだった――。