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リアクション
第二曲 〜Face To Fake〜
「どうした、翔?」
「ああ、少し考えていたんだ」
辻永 翔(つじなが・しょう)はコックピットの中で、アリサ・ダリン(ありさ・だりん)の声に応じた。
「海京での戦いで、鏖殺寺院は相当な痛手を受けたはずだ。にも関わらず、こんな短期間で同時多発テロを起こせるほどイコンを配備出来たのが気になってな」
『地球各地からなんとか寄せ集めたんじゃねーのか?』
無線越しに言ってきたのは、山葉 聡(やまは・さとし)だ。
『あるいは、元から機体の数だけはあって、パイロットの方を量産したのかもしれませんね』
と、サクラ・アーヴィング(さくら・あーう゛ぃんぐ)の声も聞こえてくる。
後者であれば、強化人間を造って契約させれば済む話だ。クローン強化人間のこともあるし、寺院ならばそのくらいのことは平気でするだろう。
『それよりも、どうしてあんなテロを起こしたかの方が謎だぜ。寺院がヤケになったとは思えないしな』
聡が嘆息した。
『テロが成功する確証はきっとあったんだろ。あの新型イコンが想定外だった、ってところじゃないか』
学院にとっても、寝耳に水だった。
『しかし、こうもシャンバラが不利になるような出来事が重なるものだろうか。どうにも、裏がある気がしてならないな』
と、アリサ。
エリュシオン帝国の宣戦布告、同時多発テロ、地球での武装勢力の設立。偶然と言うにはあまりにも出来過ぎていた。
(・鏖殺寺院)
ツァンダ南東部の鏖殺寺院基地。
「き、緊急事態です! シャンバラのイコンがこの基地に接近中です!!」
それを察知し、すぐに基地内のサイレンを鳴らす。
『敵機確認。数は……完全には感知し切れないのか……三十機ほど』
その隣にいた別の寺院メンバーが即座に指示を送る。
『全機出撃!』
シュバルツ・フリーゲ十五機、シュメッターリンク六十機。
その全てをもって、シャンバラのイコン部隊を迎え撃とうというのだ。
そのとき、背後から声が聞こえてきた。
「シャンバラ系の寺院は皆撤退したものだと思ってたが、まさかこんなところに潜っていたとはな」
ジャジラッド・ボゴル(じゃじらっど・ぼごる)が基地を見渡した。
不思議な事ではない。シャンバラへの再進出を図るため、前々から準備を進めていたということだろう。
ジャジラッドはヴァイシャリーへ侵攻しようとした寺院のイコン部隊に協力していた。結局は撤退を余儀なくされたが、そのときの残党がここに身を隠していたのである。
「オレは敵じゃない。イコンの数では勝っているだろうが、今のシャンバラの力を甘く見ない方がいい」
と、基地に残っている人間に対して逃げるように提案する。
「オレがイコン部隊と一緒に引き付ける。ゲシュタール、その間にこいつらを逃がせ」
ゲシュタール・ドワルスキー(げしゅたーる・どわるすきー)が彼の言葉に頷く。
「戦場に出る前に、一つ聞いておく。お前達は地球系の鏖殺寺院か?」
ジャジラッドとしては、旧鏖殺寺院に属していた者と接触したいという思いがある。地球からイコンを持ち込むにあたり、旧派の残党がシャンバラに潜伏し、手引きしていた可能性だって十分にあり得る。
それに、今の『名ばかり』の鏖殺寺院よりも、五千年の歴史がある旧寺院の方がシャンバラにおいては役に立つ可能性が高い。
「地球系? 何の話だ。鏖殺寺院は鏖殺寺院以外の何者でもないんじゃないか?」
どうやら、目の前にいるのは下っ端のようだ。組織の成り立ちを一切知らない様子である。
「ただ、数は少ないがシャンバラの生まれだって連中はいる。そいつらのおかげで、地球から『逃れて』これたんだからな」
ヨーロッパ同時多発テロ以降、地球各地の鏖殺寺院が次々と潰されている。今の彼らにとっては、シャンバラの方が安全だという認識らしい。
「……そう都合よくはいかないものだな」
「?」
「こっちの話だ」
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