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聖戦のオラトリオ ~転生~ 第3回

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聖戦のオラトリオ ~転生~ 第3回

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間奏曲 〜Recitativo〜


 某国地下。
 水無月 睡蓮(みなづき・すいれん)は、ヴィクター・ウェストの助手として、【ルシファー】と【ベルゼブブ】のモニターを行っていた。
 カミロ達とイコンで出ることも考えたが、何せ次世代機同士の戦場。そこに、第一世代機で加わるのは酔狂が過ぎると判断したのだ。
(ところで……ヴィクター様にお聞きしますが、本当は、メニエスさんにもカミロ様にも期待していないのではないでしょうか?)
(なぜそう思ウ?)
(いえ……はじめから『暴君』を止める気があるように見えなかったのもそうですが、何より自分の作ったモノに自身と信頼を寄せるのは、当然のことかと……。彼らの性能を確認する、いい機会なのかもしれませんね)
 内容が内容なので、念のためテレパシーで話す。
 その間、鉄 九頭切丸(くろがね・くずきりまる)がシュバルツ・フリーゲ・オリジナルと「暴君」――【サタン】の解析を進めている。
「クク、あの二人なら止められるとは思っていたヨ。『暴君』の今の姿を見るまでは」
 【ベルゼブブ】のカメラから送られてきた「暴君」の映像を見る。
「前にシャンバラに現れたとキ、『暴君』は本来の60%の力までしか出していなかっタ。ベトナムで実験段階だったときハ、20%だったカ。今は100%ダ。正直こんなことになるとは思ってなかったナ」
 サタンのデータを九頭切丸に表示してもらう。
「超能力はブレイン・マシン・インターフェイスと呼ばれるシステムを使っていル。設計自体ハ、シャンバラの黒いのと変わらんだろウ。あとは、ナノマシンによる自己修復機能……機体の金属を分解して再構成するものがあル。能力そのものハ、パイロットの扱える力によル。『総帥』クラスの超能力者の力に耐えうる設計にはなっているガ、それほど複雑な造りではなイ」
 基本的な設計は、レイヴンと大差はないだろう。
「だガ、08号のあまりに強い力に当てられてナノマシンが変質してしまっタようダ。パイロットの二人すらも部品として取り込ミ、あれはもはやイコンではなく一つの新しい生命体ともいえる存在になってしまっていル」
 そしてこうも言う。そこのデータはもはや役に立たないと。
「どうやれば止められるのカ、オレが知りたいくらいダ。『総帥』なら止められるだろうがナ」
 元々のサタンは、単なる超能力特化機に過ぎなかった。少なくとも、データ上では。
「開発者にすら分からない……ですか」
「二度はこんなもノ、生まれないだろウ。いわば突然変異ダ」
 実際、他は普通のイコンのようだ。
「それから、その傍らで興味のあることが一つ……クルキアータ・カスタムについてですん。性能は兎も角、特殊機としては『単体或いは少数で複数を相手取る機能』に欠ける気がするんです」
 実際、【マモン】と【アスモデウス】は白兵戦機であるし、【ベルゼブブ】のコンセプトはシュバルツ・フリーゲ・オリジナルの発展型だ。
 【サタン】と【ルシファー】以外の二機は、どうなのだろうか。
「他に必要になりそうなのは、各機の連携や研究を妨害する、通信・記録・レーダー装置へのジャミング。多角攻撃を念頭に置いた全周シールド――【ベルゼブブ】のとは異なるものですね。あとは長射程、もしくは広範囲武装でしょうか。もしかして、『七つの大罪』というからには、残りの二機……【ベルフェゴール】と【レヴィアタン】がそれに該当する機能を持っていたりするのでしょうか?」
 いつものいやらしい笑みをもって、ヴィクターがその疑問に答えた。
「重火力の長射程という点では【レヴィアタン】がそうダ。『七つの大罪』で唯一潜水可能な機体でもあル。【ベルフェゴール】が電子戦機ダ。全周シールドモ、【ベルフェゴール】が持っていル」
「それはどこにあるのですか?」
「【レヴィアタン】をマヌエル枢機卿ガ、【ベルフェゴール】をシスター・エルザが所持していル。もっとモ、【ベルフェゴール】は彼女にしか扱えないがナ」
 F.R.A.G.のトップと契約者養成学校の校長がそれぞれ所持しているとは。
「【マモン】、【ベルゼブブ】、【レヴィアタン】は調整さえすれば大抵の契約者は乗れるガ、【ルシファー】、【サタン】、【アスモデウス】、【ベルフェゴール】はそうはいかなイ。まア、頑張れば【アスモデウス】は乗れるかもしれんガ」
 【ルシファー】、【サタン】は分かるが、あとの二機の理由は分からない。
「何か特殊な機構でも?」
「モーショントレーサー。【アスモデウス】のコックピットはそれダ。いわバ、イコンに乗るのではなく『纏う』感覚ダ。パートナーが魔鎧であれば問題なイ。並の契約者では身体が耐え切れんがナ。【ベルフェゴール】はBMIとそれの併用ダ。もっとモ、超能力を出力するわけではなク、文字通り脳の思考だけで機械を動かすだけだがナ」
 それらのデータは、【サタン】と【ルシファー】と【ベルゼブブ】以外はクルキアータとともに失われてしまったという。
「な二、人道とか禁忌とか気にしなければ大抵のものは作れるのだヨ。キミ自身、やりたいものがあれバやってみたまエ」