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聖戦のオラトリオ ~転生~ 第3回

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聖戦のオラトリオ ~転生~ 第3回

リアクション


(・英霊とイコン)


「バラーノワ、エルザ校長が呼んでたぞ」
 ジナイーダ・バラーノワという名前でアカデミーに留学している富永 佐那(とみなが・さな)は、日々訓練に明け暮れていた。
  彼女のパートナーである立花 宗茂(たちばな・むねしげ)も伊東満所の英霊としてやってきている。当然、アカデミーの宗教的な行事には二人とも怪しまれないように熱心に参加していた。
 ここに来てもうすぐ二ヶ月が経とうとしている。元々天御柱学院のパイロット科所属ということもあり、現在の操縦技量は中の上といったところだ。目を付けられても怪しまれない程度に抑えてはいるものの、教官として指導しているF.R.A.G.第一部隊の面々や、アカデミーのエリート組の実力は驚異的だった。
「あの校長がねぇ。まぁ、向こうから呼んでくれるなら好都合じゃん」
「……?」
「ああ、こっちの話」
 天学にいるときとは話し方も変えている。素性を調べられないように、徹底的に手を打っているためだ。
「『聖歌隊』への抜擢だといいな」
「まさか。あたしみたいな新参者に、それはないでしょ」
 アカデミーのパイロットのうち、ある程度の水準に達している者は有事の際にF.R.A.G.第三部隊に編入されることが決定している。その第三部隊の中でも、成績上位者の中から構成される一小隊が「聖歌隊」と呼ばれるものだ。補欠候補も含めて、現在六組のパイロットが選抜されているらしい。
 一応頭の隅の方にはおいといて、校長室へと向かう。
「とりあえず単刀直入に聞くわ。あなたがここに来た本当の目的、それは何かしら? そろそろ教えてくれてもいいんじゃない?」
 不敵に微笑みながら、佐那に視線を送ってくる。まるで、全てを見透かしているかのように。
「あなたがどこの誰かなんていうのは大した問題じゃないわ。操縦の難しいクルキアータへの順応も早かったし、おそらく搭乗経験はあるんでしょう。だけど、そこではなせない何かがあったからここにやって来た。違うかしら?」
 どのみち、隠すほどのものでもない。エルザに対し、自分の真の目的を話す。
「英霊の『ヒロイックアサルト』をイコンに反映させる術はないか。あたしはそれを知りたくてね。あたしがいたところだと、英霊と契約したパイロットはごく少数だから、そういった技術が確立されてなかったのよ」
 ごく一部だが、種族別の能力もイコンに反映されつつある。とはいえ、英霊にはまだそれがない。
「ここは上よりもずっと英霊をよく理解しているって思ってさぁ、あたしはここに来た、ってわけ。ねぇシスター。あたしはさ、ヴァルキリーのバーストダッシュや強化人間の反射回避みたいな芸当が、何か英霊にも出来る、その可能性を探りたいのよ。F.R.A.G.の強さの秘密も、その辺にあったりしないもんかなぁ、ってね」
「ふぅん。だけど、F.R.A.G.の強さとは関係ないわね。アカデミーには確かに英霊が多いけど、F.R.A.G.だと実は少数派なのよ。もっとも、そんなF.R.A.G.の正規パイロットとの溝を埋めるために、何か出来ないものかと検討はされてるわね」
 研究は、F.R.A.G.の技術局の担当であり、アカデミーの管轄ではないらしい。
「基本的に本部の人は生徒が来るのを嫌うから、こっちに出向している技術者に聞いた方がいいわね」
 どの程度進んでいるかは分からないが、彼女が知りたい情報は近いうちに得られるかもしれなかった。