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海に潜むは亡国の艦 ~大界征くは幻の艦~(第1回/全3回)

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海に潜むは亡国の艦 ~大界征くは幻の艦~(第1回/全3回)
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「偵察機、帰還します」
 ジヴァ・アカーシのフィーニクス・ストライカー/Fとティー・ティーのマルコキアスからの帰還シグナルを受けて、リカイン・フェルマータが官制室に指示を送った。
「フィールド・キャッチャー展開」
 二本の滑走路に、フィールドキャッチャーが展開される。カタパルトは逆に、中を通る物体を順次減速して急停止される物だ。
 わずかにタイミングをずらして、二機のフィーニクスが滑走路に降りてくる。艦首近くの上空に位置した高崎朋美のウィンダムが、敵機を警戒する。
「敵反応……。ヴァラヌスが来るぜ」
「了解したわ」
 ヴァラヌス・フライヤーが、滑走路ごとフィーニクスに狙いをつける。
「味方の着艦は狙わせないわよ」
 高崎朋美が、アサルトライフルでヴァラヌス・フライヤーを撃った。だが、命中してバランスを崩すものの、ヴァラヌス・フライヤーから、無理矢理ミサイルが発射された。
「落とすよ!」
 上空待機していた笠置生駒のジェファルコン特務仕様が、補給したばかりの多弾頭ミサイルを発射して、敵ミサイルを迎撃する。
「今じゃ」
 名も無き白き詩篇の合図で、御凪真人がパラスアテナ・セカンドの大型ビームキャノンでヴァラヌス・フライヤーを撃墜した。
 無事着艦できたフィーニクス・ストライカー/Fとマルコキアスがリフトでイコンデッキへと降りていく。
「ティー、無事でしたかー。ああっ、マルコキアスに傷が……、それに、ウサ耳が折れていますわ!」
 ティー・ティーを迎えにきたイコナ・ユア・クックブックが、マルコキアスの被弾した跡を見つけてあわてた。
「きっと、鉄心のせいですわね。そうに決まってますわ」
 言われて、言い返せない源鉄心であった。
 
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「こいつが、デカ物の最後の奴かあ!」
 最後に残った敵戦艦にレールガンを叩き込みつつ、夜刀神甚五郎がバロウズ・Fを降下させた。連続して主砲を撃ち抜かれた敵戦艦が沈黙する。そこへ、強攻型に変形したバロウズの巨体が上甲板を脚部で削り取るようにして降りてきた。それは、まさに着艦というよりも、踏みつぶしに来たと言う方がふさわしい。うっかりすると貫通してしまいそうになるのを、両腕のシールドのエッジを突き立ててなんとか止める。ブルーメタリックの機体装甲が、舞い散る甲板の破片を映して輝いた。
「敵、中型艦も残っています」
 戦艦に随伴する形でいた敵駆逐艦をさして、ホリイ・パワーズが言った。
残らず、いただく!
 夜刀神甚五郎が、バロウズの両腕のシールドソードに内蔵されたレールガンを戦艦の艦橋基部に叩き込みつつ、その腕を左右に開いていった。高速の弾丸が、左右にいた駆逐艦の船体にも大穴を開けていく。
「ば、爆発? やり過ぎちゃったかしら。とりあえず十分かな。脱出!」
 艦内で小爆発を起こしていく敵駆逐艦から、あわててシルフィスティ・ロスヴァイセが脱出していった。
 
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「敵大型艦、全艦大破撃沈。敵残存艦艇1。イコンは増援があったため、未だ20機は確認。敵旗艦、アトラスの傷跡の宇宙港に近づいています。随伴艦、戦艦2。イコンおよそ20機」
 リカイン・フェルマータが、ブラックバードから逐次入ってくる情報を纏めてエステル・シャンフロウに報告した。
「アストロラーベ号、オクスペタルム号、シグルドリーヴァ、バロウズを敵駆逐艦へ。艦隊は敵旗艦へむかう。敵イコンを近づけるなよ。全艦最大船速!」
 エステル・シャンフロウの方を一瞥して無言で確認を取ってから、グレン・ドミトリーが命令を発した。
 
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『こっちですよー』
 リネン・エルフトの乗ったシャーウッドDが、アイランド・イーリの甲板からシュヴェルツェ・シュヴェルトを手招きした。
 やっと地上からあがってきたシュヴェルツェ・シュヴェルトがアイランド・イーリの甲板に着艦する。
『補給、満タンで。あっ、カードでいい?』
 追加装備パックを開くと、鬼龍貴仁が言った。
 リネン・エルフトのシャーウッドDが、コネクターにアイランド・イーリの機晶ジェネレーターからのエネルギー伝導パイプを繋いで、シュヴェルツェ・シュヴェルトのコンデンサーにエネルギーを充填する。
『センサー、お拭きしますか?』
 シリコン製のグラスクリーナーをシャーウッドDに持たせて、リネン・エルフトが聞いた。
 
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「ああっ、貴仁ったら、なんであっちで補給受けてるのよ。受けるならこっちでしょう、こっち。ああっ、もうっ」
 いきがかり上アイランド・イーリで補給を受ける鬼龍貴仁のシュヴェルツェ・シュヴェルトを見て、鬼龍白羽が可愛く地団駄を踏んだ。
『そこのイコンの人、エネルギー補給どうですか?』
 他に補給できるイコンはいないかと、鬼龍白羽がトーマス・ジェファーソンのアウクトール・ジェイセルに目をつけた。
『えっ、でも、まだエネルギーは十分にあるし、ブラキウムにモードチェンジすれば節約でき……』
『補給どうですか。補給どうですか! 補給どうですか!!』
 ちょっと戸惑うトーマス・ジェファーソンに、鬼龍白羽が繰り返した。
「あんなに言っているんだから、補給してあげればいいのに?」
『そうね、それじゃあ、少しだけ……』
 キャロライン・エルヴィラ・ハンターに言われて、仕方なくトーマス・ジェファーソンが補給を了承した。
 
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「筋肉痛です……」
 フリングホルニの医療室のベッドの上に倒れ込みながら、秋月葵が言った。
「それは……。では、すぐにほぐして、戦線復帰してもらわなければ」
 そのままフリングホルニに残った魯粛子敬が言った。トマス・ファーニナルは、HMS・テメレーアに戻っていっている。
「葵も、もう少し鍛えないとな」
 ミカエラ・ウォーレンシュタットの入れてくれたコーヒーを飲みながら、フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』がのほほんと言った。
「むきむきは嫌ー」
 上着を脱いでベッドに突っ伏した秋月葵が、魯粛子敬に背中にぶすぶすと鍼を刺されながら答えた。
 
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「サツキ、戦況はどうなっている?」
 シュヴァルツガイストの医務室でザーフィア・ノイヴィントに包帯を腕に巻いてもらいながら新風燕馬がブリッジのサツキ・シャルフリヒターに艦内回線で訊ねた。
「旗艦隊と合流して、戦線は一つに纏まったようです。現在、敵旗艦を追っています」
 レーザーマシンガンで周囲の敵イコンを牽制しながらサツキ・シャルフリヒターが答えた。シュヴァルツガイストは、適当に味方イコンの足場になっているらしい。
 広範囲に広がっていた戦場は、だんだんと一つに纏まろうとしていた。