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【裂空の弾丸――ホーティ盗賊団サイド――】零れ落ちる泪

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【裂空の弾丸――ホーティ盗賊団サイド――】零れ落ちる泪

リアクション


ブルニス内の水量 残り55%

 ファナティックの前から撤退し、奪われた人魚の声を手に入れるためにホーティたちは動いていた。
「しっかし、水中で喋れるなんてすっごいな。お前さん、すっごいな!」
「いえ、私にはこれくらいしかできませんから」
 水中の中でバルクとピィチー。
 現在、ピィチーに頼んで空気の球の中に入ったホーティたち。
「人魚の声だけでもいいのに、人魚の声までも奪える装置なんて、高くつきそうじゃないか」
「だけど姐さん、その装置はどこにあるんで?」
「場所不明」
 バルクに続いてルニも疑問の声を上げる。
 だが、ホーティはちっちっと言いながら指をふり得意げに言った。
「そんだけの装置なら、守るのに人手がいる。ってことは人が多いところに装置はあるんだよ!」
 すごく大雑把だった。
 だが、ホーティの読みは当たっていたのだ。
 前方に、あからさまに『僕ここで装置守ってるんで!』と言わんばかりの雰囲気をかもしだす大所帯がいた。
「ほらみたことか!」
「さっすが姐さん! それで、どうやってあの人数をくぐりぬけて盗み出すんで?」
 尊敬の眼差しをしながらホーティを見やるバルク。
「……さて、様子見でもしようかね」
「策不足」
「うるさい!」
 ルニに突っ込みを入れられるホーティだった。
 その後ろから契約者たちがやってくる。無論、人魚の声を取り戻すために。
「いた! 敵の一団にホーティ盗賊団! 今度は逃がさないんだから!」
 風のように水面と壁面を疾走し、いち早く装置奪還にかけつけたのは騎沙良 詩穂(きさら・しほ)
 その後ろからは清風 青白磁(せいふう・せいびゃくじ)セルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)も追随している。
「……成る程。詩穂様、どうやら水中でも問題なく活動できる術を、ピィチーさんがご存知のようですわ」
「ほんと? でも彼女はホーティたちに捕らわれてるし」
「それなら、わしにまかせえ。ちょいとやってみたいことがあるけぇの」
 先んじた青白磁が『エバーグリーン』を発動。その対象は、海草だった。
 地上に生える草よりも葉が長い種が多い海草を操ると、それをホーティたちへと差し向ける。
「ちょ、ちょいとなんだい!?」
「動く海草」
「か、海草程度なら!」
 意気込んだバルクが果敢に海草に挑む。
 が、あっという間に絡め取られ、バルクの海草巻きができあがっただけだった。
「だ、だめだったあああああああ!」
「……ホーティ」
「ん? なんだい、ルニ」
 ホーティの問いに、無言で見つめ返すだけのルニ。
「……」
「ああ、そういうことかい。ピィチー、あいつらにあたしらと同じ魔法だか術をかけてやりな」
「あ、はい!」
 言われて、すぐに契約者たちに術をかけるピィチー。
 これで契約者たちも水中で行動ができるようになった。
「これは、薄い膜が球状になって私たちを包んでるの?」
 少しだけ膜に触れてみる詩穂。視認しづらいほど薄いにも関わらず、触れた程度ではまったく損傷しない。
「恐らく、彼女たちが水中で活動できているのもこの膜のおかげでしょう」
「おおう! 水の中でもしゃべれるじゃけん。こりゃすごかね」
 青白磁が水中でも活動し、喋れるのを見て詩穂も水中へ。
「ああ、本当! これってすっごい経験かも! って言ってる場合じゃないや!」
 目的をちょっとだけ見失った詩穂はすぐさま我に返り、ファナティックの部下たちへ向き直る。
「詩穂様、『パスファインダー』の展開をお願いいたします」
「りょーかい! 青白磁はそのまま海草ちゃんたちをロックンロールさせちゃって!」
「了解じゃけん」
 水中でも安定した連携をとる三人。
 更に、事前に手回ししていた飛行機晶兵たちに空からファナティックの部下たちに近づかせていた。
 そして、ある距離になったとき部下たちが機晶兵たちに攻撃をしたのを見て、相手の攻撃の間合いを把握。
「後は空賊たちに援護してもらいつつ、奪還するのみ! いくよ!」
 詩穂の声と共に、空賊たちが一斉に突撃。こちらでも盛大な戦闘が始まった。

「今度は水中戦だなんて、面白いことだらけだね!」
 水中に、超ハイパーミニスカートの、沈没船のマストをもったシルエットが。
 魔法のステッキ(ミスリルバット)に代わり、魔法のステッキ(沈没船のマスト)をもって登場したのは小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)
「さあ、人魚の声を奪った装置を出しなさい!」
「そうだよ! 人魚たちの声を返しなさい!」
 美羽と共に詩穂がファナティックの部下たちに叫ぶ。
「その装置はぶっ壊します!」
「そうそう、ってええ!? だ、だめだよ! ちゃんと取り返して安全に声を取り戻さなきゃ!」
 突然の美羽の宣言に驚く詩穂だったが、美羽は止まらない。
「大丈夫! きっとなんとかなるよ! さあこの新しい魔法のステッキで殴られたくなかったら装置を返しなさい!」
 と、言いつつ部下たちへと猛突進。壁面を思い切り蹴り、魚雷のような出で立ちで向っていく。
「……はちゃめちゃすぎやしないか? あの嬢ちゃん」
「美羽さんったら……あ、ルニちゃんはこちらへ。危ないですから」
「?」
 いつの間にか現れたベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)がルニの手を引きながら、安全な場所へ移動する。
「タマーラ」
「え?」
 ルニの声にはてな顔のベアトリーチェ。その二人の前にはタマーラがいた。
「ん」
「ん」
「あらあら、お友達ができたのですね。喜ばしいことですね」
 ほんわかムードの三人。対して。
「ていやー! 渦巻けー!」
 魔法のステッキ(沈没船のマスト)を振り回しやたらめったらに水中をかき回す美羽。
「……なんだこの絵」
 バルクが呟く。
 そんなバルクにベアトリーチェが声をかける。
「あ、バルクさん! そこ、そろそろあぶなっ」
「へっ?」
「ちょっと通るよー!」
「げふっ!」
 注意も虚しく、バルクの顔面へ美羽のとび蹴りが炸裂。その反動を利用してまた前線へと戻っていった。
「……な、んで、みえない、んだ」
 謎の言葉だけを残して、しばしバルクは眠り(強制)についた。
「まったく、何やってんだか」
 呆れるホーティ。その後ろに一人の契約者の姿が。
「あなたがホーティさん、ですね」
 かけられた声にホーティが振り向くと、そこには佐々布 牡丹(さそう・ぼたん)レナリィ・クエーサー(れなりぃ・くえーさー)がいた。
「いや〜本当に水中だよ〜、すごいねー」
 マイペースなレナリィは置いて、牡丹がホーティにある話を持ちかける。
「あなたたちの力をお貸し願えないでしょうか?」
「お断りだね。私たちは私たちの信念で動いてるんだ、譲れないよ」
 即座に切って捨てるホーティ。だが牡丹も引かない。
「私があの装置の制御方法を見つけ出し、教えましょう。装置を手に入れても扱えない、では話になりませんよね?」
「うっ……」
「あれほどの数がいれば十分取り返すことも可能でしょうが、万一もあります」
 万策を施しておきたい牡丹。対して、ホーティはどうするのか。