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リアクション
第2章 準備
花火当日。
学校は休みだったが、昼頃には生徒達、及び他校生が訪れ相談と準備を行なっていた。
「あたしもちっちゃな頃、花火を見に行って迷子になっちゃったことあるから、迷子になった子の為に、迷子センター作った方がいいと思うの!」
イルミンスールの周藤 鈴花(すどう・れいか)は、会議室でそう提案をした。
「わらわもじゃ。昔から方向感覚が鈍くてのう。普段行かない場所へ行くと必ずと言っていいくらい迷子になるんじゃ」
蒼空学園の五明 漆(ごみょう・うるし)もふむふむと頷き、賛成する。
「私も賛成です。では、百合園の先生にどの辺りに作ったら良いか、指示を仰ぎますね。先に屋上に机や椅子を運んでおいて下さい」
「うん!」
「了解じゃ」
教導団のクロス・クロノス(くろす・くろのす)の言葉に、2人は元気に答えて会議室から出て行った。
――が。
「お2人は?」
クロスが先に屋上で準備を始めていたパートナーのカイン・セフィト(かいん・せふぃと)に問いかけるも、カインは首を横に振るばかりだった。
仕方なく、2人で迷子センターの設置を行なうことにする。
迷子センターの場所として割り当てられた場所は、花火は見難い場所だけれど階段から近い位置だった。
台車から下ろしたパイプ椅子と机を並べて、その上に紙コップ、紙皿、菓子、ティーパックを置く。
来場者が現れる頃には、紙皿に菓子を並べる予定だ。
「私達はこの辺りをお借りしましょうか」
イルミンスールの本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)は、百合園女学院から借りた床机を下ろした。
「うん、ゆっくり観賞できそうだね」
パートナーのクレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)は、床机に赤い毛氈をかける。
2人は階段近くと中央付近は避けて場所を選び、憩いの場所として茶を楽しめる用意を進めていた。
「ここにおいておけばいいか?」
蒼空学園のアルフレート・シャリオヴァルト(あるふれーと・しゃりおう゛ぁると)が、パートナーのテオディス・ハルムート(ておでぃす・はるむーと)と共に、野点傘や茶道具などの荷物を持ち、現れる。
「ええ、お願いします」
「ありがと!」
「他にも何かあったら、言ってくれよな」
「力仕事なら任せてくれ」
アルフレートとテオディスは、荷物を下ろすと回りを見回して学校関係ナシのスペースに手伝いに向かうことにする。
「観覧スペースがあるといいよな。椅子もあるみたいだが……升席みたいにある程度の区切りと座布団でくつろいで見てもらうというのもよさそうだ」
畏まって観ても楽しくないだろうと考え、アルフレートは敷物と座布団を用意し、フリーのスペースに並べて行く。
「案内板も必要だよな……よし、俺が招き猫を描……!」
「却下」
目を輝かせたテオディスだが最後まで言い終わらないうちに、アルフレートに遮られる。
「テオ、直筆の案内板は却下だ。案内にならないからな」
「……そうですか、はい」
テオはガクリと肩を落とした。
「迷子センターなんかは作ってくれてるし、屋台もいくつか出るみたいだから、ゴミ箱が必要だよな」
アルフレートは回りを見回して、どの位置にゴミ箱を設置すべきか考える。
そんなパートナーや、野点の準備を進めているイルミンスールの涼介、クレア。迷子センターを設置している教導団のクロス、カイン。様々な学校に所属する若者達が、無償で準備を進める姿に、テオディスは微笑みを浮かべていた。
「まだ打ち上げてもいないのに、皆楽しそうだな……花火ももちろん楽しみだが、皆で一つのことに打ち込むのも、楽しいものなんだな……」
「そうだ、テオ。お前生きる案内板やったらどうだ? 首から案内板のプレート下げてさ。デカイし目立つし」
「ええと、却下の方向で」
それも悪くないけれど、楽しむ皆の中で自分も楽しみたいと思った。
調理室にも、沢山の若者が集まり菓子作りや仕込みを進めている。
「やっぱり、始まる前と終わった後が忙しいよね」
百合園女学院の山田 晃代(やまだ・あきよ)は、校長の許可をとり、定番のやきそば屋を行なうことにした。
「とりあえず、野菜とお肉は軽く炒めた後一食分ずつに分けておいて……」
学園祭用の道具も借りれないこともなかったのだけれど、今回は基本的に屋上限定の観賞会であり、担当も晃代1人であることから、少し大きめなホットプレートを借りて行なうことにした。
「少し分けてもらえたら、焼きそばパンも出来るかな?」
イルミンスールのラーフィン・エリッド(らーふぃん・えりっど)は、サンドウィッチを作っている。
レタスにトマトにチーズ。ハムと卵。がっつりいきたい人用にはトンカツを用意した。
傍ではパートナーのドン・カイザー(どん・かいざー)が、時々「……くぇー……」と鳴きながらラーフィンを手伝っている。
ドンは料理は出来なため、必要や材料を取り出したり、屋上へ運ぶための台車やバスケットの準備に勤しむ。
「それじゃ、練習も兼ねて数人前作るね」
晃代は焼きそばパン用に焼きそばを炒め始めた。
「やった、上手く焼けた〜♪」
オーブンを使って、ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)はマドレーヌを焼いていた。
串を生地に刺して生地がつかないことを確認すると、鉄板を取り出してテーブルの上に並べていく。
「たのし〜しおいし〜し♪ さいこ〜だね〜♪」
楽しそうに次の生地を焼いていくミルディアの姿に、パートナーの和泉 真奈(いずみ・まな)は微笑みながらも、
「あまり作りすぎると、後始末が大変な事になりますよ!」
と軽く注意を促す。料理は不得手なので、手伝うことはしなかった。
「へいきへいき〜♪」
「こっちのオーブンでもパウンドケーキ焼けたわ」
百合園女学院のアリス・ハーバート(ありす・はーばーと)は、小さな型でパウンドケーキを焼いていた。
「美味しそうですね」
真奈はアリスにも微笑みを向ける。
「メインは花火だから、こういったシンプルなケーキの方が喜んでもらえそうよね」
「うん♪」
アリスの言葉に、ミルディアは元気に返事をし、真奈は優しく頷いた。
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