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リアクション
第2章 こんな可愛い子が男の子なワケないっ!?
時間は少し遡る。
「修学旅行つったら枕投げだよなっ!」
温泉から上がった後、男性ものの浴衣のサイズが合わず、仕方なく女性ものを着込んだレイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)は、その浴衣を気にしながらも枕投げに挑んでいた。
「あれ? レイ居ねぇ?」
「まだお風呂かもしれませんな。枕投げしていたら戻ってくるでしょう」
シャンバラ教導団の泊まる宿を抜け出して遊びにやって来たウォーレン・アルベルタ(うぉーれん・あるべるた)とセオボルト・フィッツジェラルド(せおぼると・ふぃっつじぇらるど)は、レイディスに気付かないまま、枕投げを開始した。
「教導団のイチローですねと言われたこともある」
そう言いながら、投げつけられた枕を持参した野球バットで打ち返しているのは、神代 正義(かみしろ・まさよし)だ。
「それなら、これでどうだ!」
そう言ってウォーレンは、打ち返せないほどの連続技で枕を投げる。
「枕投げ真拳奥義! 布団返し!」
正義は一旦バットを捨て置いて、掛け布団を捲ると、それで投げられた枕を防いだ。
「これならどうですか」
言いながら、セオボルトが用意したのは光学迷彩のスキルのための特殊なフィルターを貼った布で包んだ『ステルス枕』だ。一見、何も持っていないように見えるけれど、セオボルトの手によって投げられたステルス枕は、再びバットを構えた正義に打ち返されると思いきや、さすがに見抜けず顔面にヒットした。
「セオ! すげぇ!」
その様子を見ていたウォーレンが拍手を送る。
「こいつはとっておきの枕ですからな!」
「うわぁ、有難う! 愛してるぜ☆」
セオボルトは2つ目のステルス枕を作るとウォーレンへと渡した。ターゲットは、先ほどからやけに目立っている女の子――友人であるレイディスなのに、彼は気付いていないため、目に付いてターゲットとなったのだ。
「そりゃ!!」
ウォーレンの手から、ステルス枕が投げられる。
目立つ女の子――レイディスはまだ気付いておらず、他の人相手に連続で狙われたりして、苦戦しているようであった。
「む」
苦戦している様子と、何かが投げられたということに気付いたベア・ヘルロット(べあ・へるろっと)が、レイディスとウォーレンの間に割って入る。
「奥義『畳替えし』!」
ベアはそう口にしながら、防御姿勢を取る。見えない枕が彼に柔らかく当たった。
「いくぞケンリュウガー!」
目立っている生徒への攻撃が通らなかったことにより、正義が声を上げた。
「ああ!」
先ほどまでクルードを相手にしていた武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)が大きく頷くと、その彼を正義が布団で簀巻きにしていく。
「枕投げ真拳最終奥義! 超級ヒーロー電影弾!」
「とおおお!」
簀巻きにした牙竜を正義が投げる。その『等身大ヒーロー枕』は目立っている生徒――レイディスへとぶつかった。
「はうっ!?」
咄嗟のことに避けれなかったレイディスに、ヒーロー枕は当たり、倒れこむ。
「お見事じゃ」
カメラを回していた太上老君は、パートナーであるヒーロー枕、もとい牙竜を撮ると共に、倒れた生徒へとカメラを向けた。
「女の子に荒事は関心しませんな」
言ってセオボルトが駆け寄る。
「むむ、本当に女の子だったのか? そうだよな、こんなかわいい子が男のはずはない!」
簀巻きから開放された牙竜も倒れたレイディスの格好に、女の子だと思いこんでそう声を上げる。
「女子部屋に運ぼうぜ!」
正義の言葉に、気を失ったままのレイディスは担がれ、女子部屋へと運ばれていった。
一方、枕投げから逃げるように、女子部屋の入り口で話し込んでいたフィーネ・ヴァンスレー(ふぃーね・う゛ぁんすれー)は、部屋の扉が開かれたことにより、仲間ともどもそちらへと振り向いた。
「女の子が混ざりこんでいましてな。少し無茶をして気を失ってしまったようで、運んできました」
セオボルトの言葉に、それは大変だとフィーネは近くにあった布団へ、その生徒を運んだ。
「この子は私達で面倒見るからじゃ!」
セシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)はそう言って、セオボルトたちを男子部屋へと返す。
「あー……これ、レイディスだよ……何やってるさこの子は」
布団へと運んで寝かせることで露になった顔を見て、フィーネはぽつと呟いた。
「って、ええ! レイかえ!? と、とりあえず女将さんに見つかったら大変じゃ、もっと完璧に女装させるのじゃ!」
フィーネの呟きに、セシリアは驚きを隠せず、思わず声を上げてしまった。
「そうだ! 寝るのだから、本格的じゃなくてもいいけど、少しくらいメイクさせないと!」
そう言って麻上 翼(まがみ・つばさ)は、パートナーの月島 悠(つきしま・ゆう)へとメイク道具を貸して欲しいと告げた。
呟きを聞いておらず、レイディスだということに気付いていない悠は、気を失っている生徒に何をしだすのかと思いながらも道具を渡した。
施すメイクはナチュラル程度。
それでも幼い顔立ちであるレイディスには充分で、女性ものの浴衣だけでなく、見た目からも女子生徒で通るようになった。
「よし完璧」
仕上がったそのメイクに、セシリアは1つ頷く。
(……ん? よく考えたら普通に男部屋に戻せば良かったような……)
けれど、すぐに疑問が思考を過ぎった。
「あ、レイディスお兄ちゃんが居たの……」
枕投げが始まってもマイペースで布団に潜り込んで眠っていた朝野 未羅(あさの・みら)が寝返りを打った先でレイディスを発見する。
「一緒のお布団で寝るのー……すぅ」
寝ぼけた様子で、レイディスに抱きつきながら、また深く眠りの世界へと落ちていった。
「んん……?」
抱きつかれた拍子に、レイディスは目を覚ました。
「あ、あれ? ここっ!?」
周りに居るのは女子生徒。すぐさま、間違われて運ばれたのだと気付いたけれど、もう消灯時間も近く、戻っている時間はない。
「化粧落とすのも面倒だしそのまま寝ろじゃ!」
先ほど、疑問が過ぎったセシリアは、彼が目覚めたことに気付いたけれど、未羅に抱きつかれていることもあって、そのまま寝てしまうことを促す。
「……何でこうなるんだよ……」
納得いかないけれど、下手に動くと未羅を起こしそうで、レイディスは諦めることにした。
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