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第2章 なごみもあれば、後ほどジェノサイド・・・?もあるよ

「こんにちは、真口悠希です。今日は悩める者達の悩みを解決する質問にお答えします!」
 カフを上げて真口 悠希(まぐち・ゆき)は、質問コーナーの手紙を手に取る。
「(大人しい曲がいいかな?)」
 SEを担当している静香が暖かな雰囲気のBGMを流す。
「まず最初の質問です。気分が落ち込んだ時どうすればいいですか?・・・確かにそんな時ありますよね。んー・・・そうですね・・・」
 ガラスの向こうにいる静香がいる方へちらりと目をやると、問いかけに詰まる悠希に向かって手を振っている。
「ボクは・・・大好きな人のことを思い浮かべたりします」
 彼女の優しいエールに勇気をもらって答える。
「あぁっ、曲が終わりかけてますね。急がなきゃ・・・っ、では次の質問にいきます!周囲の人が信用できず好きになれません・・・」
 2枚目の投稿をぺらりと手に取って読み上げる。
「あ・・・実はボクもそうでした。けど・・・ある時、気づいたんです。相手を信用するっていうのは相手の方も怖いんです」
 過去に受けた仕打ちを思い出しながらも凛とした態度で喋る。
「だから自分から相手を心から気遣って誠実に接し続けていれば・・・心を開き合える様になると思います。口で言う様に上手くいかないかもですが応援してますっ」
 手紙を見つめて軽く微笑み、投稿者を元気づけようとエールの言葉を送る。
「ボクも周囲の皆や静・・・いえ大切な人にこれからもそうあり続けたい・・・と思います」
 質問を読み終わり手紙をテーブルを置くと、放送室のBGMが止まった。
「それではまた次回・・・機会がありましたらお会いしましょう。お相手は真口悠希でした」
 ニコッと微笑み、カフを下げて番組を終えた。



「どうもこんにちは、パーソナリティーのスレヴィ・ユシライネンだ。じゃあまず1枚のお便りを・・・」
 お悩み相談の投稿を読もうと、スレヴィ・ユシライネン(すれう゛ぃ・ゆしらいねん)はテーブルの上にある手紙を見る。
「パートナーって助け合うものだと思ってたんですが、気がつくと盾にされてたり囮にされてたり生贄にされてたりするんです。たまには立場逆転したいです、・・・か。あれっ、これって質問?要望じゃないのか?」
 質問コーナーなのにどうしてこんな書き方なのかと疑問に思いつつも読む。
「まあ、あれだ。やられる前にやれ。“遅れをとるところに危険がある”とセルバンテスも残してるよ」
 さらりとパートナーを盾にしてまえと言い放つ。
「それじゃあ次の質問を読むよ。お化けダメなんですって言ってるのに、墓地がどうこう言って連れてくんです。何とかしてください。嘘つきで気まぐれで意地悪大王なパートナーをやっつけてくれませんか?あれ、1行で書かれてるけどこれって・・・。あぁ〜っ、ちょと!一応答える回数が決まってるんだけど・・・。どうすればいい、これ?」
 ガラスの向こうにいるSEのエリザベートの方を見る。
「えーっと1つとしてまとめて答えてください・・・か」
 画用紙に書かれたカンペを見て仕方なく答えることにした。
「特別にオーケーが出たけど投稿者さん、今度から気をつけてな!って、だからこれ質問じゃないよな?」
 読みながら顔を顰めて突っ込みを入れる。
「とりあえずまとめて答えるか・・・。怖いって目をつぶるから怖いんだよ。ちゃんと目の前見てる?“現実の恐怖は心に描く恐怖ほど怖くない”ってシェークスピアも言ってたそうだよ。これは・・・依頼されても困るんだけど。視点を変えてみたらどう?“欠点は常に裏から見た長所である”と徳冨蘆花も説いてたらしいよ。」
 ふぅと深呼吸してさらさらっと、いっきに読み上げる。
「ていうかこの文字、見覚えがあるな?」
 自分のパートナーが書く文字に似ているなぁと、お便りを軽く睨む。
「鏡開きに餅と間違えて開いてやろうか?ゆる族の中身は前々から気になってたんだ。ちょうど卯年だしサービスしてもいいんじゃない?」
 新年早々、アグレッシブなセリフをかっ飛ばす。
 家でラジオが聞いているアレフティナ・ストルイピン(あれふてぃな・すとるいぴん)が顔を青ざめさせている。
「まさか字でばれるなんて不覚です!」
 ヘッドホンで聴きながら、パソコンの画面の前であわわと慌てる。
「それにしても見事に自分に都合のいいように回答してますね。まったく・・・・・・」
 答えのセリフを思い出したアレフティナは、蒼白させていた顔からだんだんと怒りの表情へ変える。
「中の人はいないって言ってるじゃないですか。サービスとか卯年とか全然関係ないですから!」
 大事故爆発しろとでもいうのかといわんばかりに、画面に向かって怒鳴る。
「そんなことよりお年玉ください。どケチと意地悪は違う・・・と思いたいです」
 いつも意地悪するならそれくらいくれと最後にぽろりと言う。
 その頃、スレヴィの方はラジオのエンディングを迎えようとしている。
「それでは帰ったら覚えてろよってことで。お相手はスレヴィ・ユシライネン・・・。じゃ、そこを動かずに待ってろ」
 アレフティナに向かって不吉なことを言い、スレヴィはカフを下げて放送を終わらせた。