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先生、保健室に行っていいですか?

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先生、保健室に行っていいですか?
先生、保健室に行っていいですか? 先生、保健室に行っていいですか?

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CASE8 蒼空学園の場合

 蒼空学園、パラミタの設置された学園で一番のオーソドックスな学校だ。
 ここにももちろん保健室は存在する。
 早速見てみよう。
 ここでは保険医として卜部 泪(うらべ・るい)が生徒たちの傷を治療している。
 彼女をサポートしているのが火村加夜(ひむら・かや)だ。
 加夜は泪に憧れを抱いているので、自ら立候補して保健委員に就任。
 彼女と仕事をして、話す時間がとても楽しく、充実した時間を過ごせていると感じていた。
「先生、最近徹夜の仕事奥ありませんか?お体には気を付けてくださいね」
「ありがとうございます火村さん、私は大丈夫ですからあなたもお体には気を付けてくださいね」
 泪の言葉に加夜は心が安らぐのを感じる。
 そんな保健室に一人の来客が現れる。
「すいませーん」
「はぁい、ってあら。葛葉くん、どうしましたか?」
「少し擦りむいたので、軽く消毒してもらっても良いですか?」
 サッカー部のユニフォームを着て現れた葛葉 翔(くずのは・しょう)は軽く傷の説明をする。
 断る理由もないので泪は椅子に座るように指示する。
 加夜は指示が出る前にガーゼとピンセット、消毒液に傷口に合わせた絆創膏をすぐさま用意した。
 泪は感謝を述べつつ治療を始めた。
「これくらいなら問題ないですね、すぐに終わりますよ」
「すみません、何だか一度ここに来ておきたいなぁと思って」
「えっ?」
「いや、もうすぐ卒業なんで感慨深いかなぁ、なんて……」
「あぁ、そういえばもうそんな時期でしたね。早いですね、一年なんて」
 翔が話した内容で、泪はそういう時期だということを思い出す。
 窓の外で練習を続けている部活を見て三人は哀愁を感じた。
 絆創膏を貼り、翔は立ち上がってお礼を言う。
「ありがとうございます、じゃあ頑張ってきます」
「ええ、一度しかない青春ですからね。張り切ってください」
「はい!失礼しま……すぅぅ!?」
「フハハハハハハ!!ここか保健体育室なる場所は!素晴らしいぞこのエロ河童どもめ!!」
 格好よく去るはずだった。
 扉を開けようとした時、開き戸のはずが何故か押し戸形式で開き、翔はつぶされてしまう。
 高らかに笑いながら参上したのは禁書写本 河馬吸虎(きんしょしゃほん・かうますうとら)だった。
 何がそんなに楽しそうなのか分からないが、唐突な登場なので泪と加夜は茫然としていた。
「さてさて中は如何様になって……何だこのカーテンは!?何故仕切りなどついている!これでは愛の営みが盛れないではないかぁ!!」
「あの、河馬吸虎くん?保健室はそういった場所では……」
「おのれ、ならばこんなもの俺様の愛の炎……はまずいので、アシッドミストで跡形もなく溶かしてくれるわぁ!!」
「お邪魔いたしますわ、ここに騒がしい魔導書がいると聞いて来たのですが……いやがりましたわねこのくそ野郎」
「リカさん落ち着いてください!!河馬吸虎様、アシッドミストなんて放ってはダメですって、放っちゃだめです!!」
「邪魔をするな愚か者め!万死に値するぞ!!」
「とりあえず止めやがれ。さもないと接着剤で全ページ磔の刑コースか、疾風付きでお星さま、もしくはナラカへの招待状もれなくプレゼントコースのどちらかをかましやがりますよ。さっさと選びやがれ、はい、5……!」
「リカさん取り合えず落ち着いてください!!」
「そんなものが怖くて俺様の欲望が収まるかぁフハハハハハハっ!!」
 河馬吸虎の連れであろう二人、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)ソルファイン・アンフィニス(そるふぁいん・あんふぃにす)が彼を止めようと参上した。
 だがリカインはすでに戦闘モードに入っているのか、いつでも動けるようにしている。
 一方のソルファインは二人を止めるのに努力しているが、個性の強い二人に押され気味だ。
 何だかよく分からない展開になってきたので、泪が止めに入ろうとするが心配は杞憂に終わる。
「失礼いたします」
「……!」
「む、この気配は……!!」
「と、鞆絵さん……!?」
「何やら大騒ぎしている女子生徒と魔導書がいると聞いてきましたら……全くあなた方は……」
「と、鞆絵さん、あのぅ〜……」
「ご迷惑をおかけいたしました、ソルさん。後片付けをお願いいたします」
「はいっ!!」
「リカさん、河馬さん?後でいつもの場所へいらっしゃいませ。来なかったらどうなるか、お分かりでしょうね……?」
 中原 鞆絵(なかはら・ともえ)、彼女の登場により騒いでいた二人も黙り込んでしまう。
 どうやら彼女にはだれも逆らえないらしく、皆その雰囲気に圧倒されていた。
 見える人には見えていた、彼女からとてつもない巨大な黒いオーラを……。
 鞆絵はゆっくりと保健室を去り、リカインと河馬吸虎もとぼとぼと外へ、ソルは溶け掛けたカーテンを新しいものに交換して保健室を後にした。
 嵐が去った後の静けさに呆然とするしかない加夜。
 一方の泪は椅子から離れて、押し倒された入り口に来て、扉を持ち上げると軽傷だった人が一気に重症患者に大変身を遂げていた。
「火村さん、ベッドと諸々の治療道具を用意して下さい」
「かしこまりました」
 泪の指示に加夜はすぐさま動く。
 泪の下では、眼鏡の割れた翔が完全に意識を失うように首がカクンと傾いた。

 前日の大騒ぎで、保健室の扉が壊れたままだ。
 ガラスやら備品がいくつか無くなってしまったので泪は買い出しに出かけていた。
 そこへ、コトノハ・リナファ(ことのは・りなふぁ)ルオシン・アルカナロード(るおしん・あるかなろーど)が保健室に訪れていた。
「大丈夫かコトノハ?」
「ありがとう、さっきよりかはだいぶ落ち着きました」
「しかし、参ったな。よりによって保険医が不在とはな……」 
「そう、ですわね……」
 ベッドに座らせたコトノハを気遣うルオシン。
 保険医がいないためにしばらく待つしかないが、コトノハは別の事を考えていた。
 この二人、実は大人な関係を気付いていた。
 そしていつの日にか、二人は背徳の気分を味わいたいとばかりに保健室で燃え上がったことがある。
 コトノハはその時の事を思い出していた。
 いけないことと分かっていても、その状況下で我慢することのできなかった欲望の解放。
 その瞬間、普段の営みでは味わえない刺激的な快感を思い出していた。
「ねぇ、ルオシン……?」
「何だ……ってなぜ肌を露出しようとしている?」
「……しませんか?」
「!!だ、駄目だ駄目だ!一回きりと約束したはずだ、それにいつ保険医が戻ってくるか……」
「声を出さなければ大丈夫よ、だからねぇ……」
 コトノハの誘惑に乗ってしまいそうになるルオシンだが一歩手前で踏みとどまる。
 しかしコトノハは谷間、生足、そして肩を露出させて魅惑的な肢体を愛しい人に見せつけた。
 ルオシンの中で何かが切れた。
 コトノハを押し倒して、仕切りのカーテンを閉める。
 どうやら我慢の限界だったのか、せわしそうに服の一部を弄っている。
「声は出さないようにしますわ」
「当たり前だ、全く……後悔するなよ」
 そう一言告げるとルオシンはコトノハの唇を奪う。
 火がついてしまった二人は極力物音をたてないように静かに燃え上がろうとした。
 その時、保健室の扉が開いて誰かが入ってくるのを感じた。
 二人は心臓が飛び出るほど心拍数が上がるが、お互いがお互いの口を塞いでやり過ごそうとする。
「誰もいないな、仕方がない。備品を借りて後で言っておくか」
「刀真、私がやるわ。あなたは座ってて」
「散らかっているように見えるが、何かあったのか?」
 樹月 刀真(きづき・とうま)漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)玉藻 前(たまもの・まえ)の三人が保健室へ訪れた。
 ここでばれたら非常にまずい二人はなんとしてもごまかそうと耐え続ける。
「ん?誰かいるようじゃな、すまんが……」
「止めなさいよ玉藻、寝ているのに起こしたら失礼だわ」
「多分卜部先生がいた時の生徒がそのまま居るんだろう、静かにしていろ」
「それもそうじゃな」
「先生、いつごろ戻るだろう?明日も任務があるからな、備品の事を伝えなければならないし……」
「それなら我が待っていよう。刀真は疲れておるのだから寝ておれ」
「そうだね。ベッド空いているし、どうせだから寝てなよ」
「……そうか、じゃあ甘えようかな?」
 どうやら備品を使ったらしく、三人はしばらくの間保健室に滞在することになった。
 このことはその前から潜伏していた二人にも聞こえ、非常に気まずい状況になる。