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【ロリオとジュエリン】愛とは奪い合うもの

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【ロリオとジュエリン】愛とは奪い合うもの
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第5章 L’existence en soi・・・pas l’autoriser!l’histoire deux-その存在自体・・・許さん!story2

「そんな顔をするな。あれだけの騒ぎを起こしてしまったんだから」
 眉間にちょこっと皺を寄せて拗ねた顔をする師王 アスカ(しおう・あすか)に、ルーツ・アトマイス(るーつ・あとまいす)が優しく声をかける。
「ついうっかり、遊んじゃうことだってあるじゃないの〜」
「でも、一言謝らなきゃいけないだろう?」
 両手の人差し指の先を合わせ、くにくにとさせて俯く彼女の肩をぽんぽんと軽く叩く。
「(俺もルージュで酷い目に遭った・・・。アスカにじゃないが・・・)」
 言葉には出さないものの、蒼灯 鴉(そうひ・からす)はルージュで5分間歩かされたことを思い出し、ふぅっとため息をついた。
「ん・・・?何か黒い生き物が屋敷を囲んでいるようだな。ここからじゃよく見えないが・・・」
「もっ、もしかして奴らなの・・・?」
「何だ・・・アスカ。あれを知っているのか・・・?」
「知っているの何も・・・あ、あれは・・・」
 鴉が指差す者を睨み、全身にぞわっと鳥肌を立てる。
 -アスカの視線の先-
 5倍ズーム。
「恐怖のランニングチョコレートじゃないのぉ〜」
 10倍ズーム。
「その名前を・・・、口に出すのもおぞましいっ!」
「屋敷・・・というより、ジュエリンも狙われているようだが・・・?」
「うわっ、何あれ!な・・・何か生理的に受け付けないんだけど・・・!?」」
 その大群を見たミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)も、それが何なのかすぐに分かった。
「ジュエリンを嫁にする、って騒いでるっぽいよ」
「コスプレちゃんを嫁にですって〜!?」
 姿形だけですら人々に不快感を与える不気味なやつらが、人の恋人を横取りして嫁にするなんて許さん!
 考えただけでも、うえ・・・っと吐きそうなほど気持ちが悪い。
 -アスカのムカつき度メーター-
 90%。
「―・・・自分達の姿を見て物をいえやぁ!この化石時代の遺物生命体が!!」
 -アスカのムカつき度メーター-
 計測・・・不能!
 ガッシャーンッ!!
「貴様らが出現した事自体が罪だ。私の怒りのレクイエムを聞かせてやるわぁ!!」
「うはぁ、アスカが暴走してるよ〜」
「何か、面白がっていないか・・・?」
「ううん。あたしもやるき満々だもん。問題ない〜問題な〜い♪」
「―・・・・・・そうだろうか」
 鴉がそうぼそっと呟くと、血の気が多い娘に変貌した2人組みは門を飛び越えて突撃していく。
「あ〜、行ってしまいましたね。仕方ありませんわね。加勢致しますわ・・・!」
 ミルディアたちの後を追いかけ、和泉 真奈(いずみ・まな)も特攻する。
「また被害が出なければいいが・・・」
「謝ることが増えそうなフラグだな」
 門の外にいる男2人組は、すっかり置いてきぼりにされてしまった。



「謝りに来たはずだが、すでに暴走しているな・・・」
 ベースを弾き鳴らすアスカの姿に、ルーツが肩をすくめる。
「この前、アスカがルージュで迷惑をかけて悪かったな」
「いえ・・・気にしていませんよ。迷惑な産物を作られる前に、本をジュエリンから取り上げてさっさと抹消しなかったオレにも非がありますから」
「そうか?それならいいんだが」
 コスプレから逃げていてもジュエリンを庇うとは・・・、やっぱり大切に思っているんだな。
 ルーツにはそう見え、黒い集団パニック事件が起こっている中だけど、何だか微笑ましく思えた。
「やつらの苦手な香りを染み込ませておけ。そうすれば、簡単には近寄ってこないだろう」
 迷惑をかけた侘びを兼ねて、ミントのアロマを彼に手渡す。
「まだショックで気絶してようだが・・・。塗っておいてやったらどうだ?」
「そうですね・・・」
 王子や兵に狙われないよう鴉の言う通りに、ジュエリンの頬にオイルをつけてやる。
「やつらはしつこそうだからな。ハーブがあるところへ逃げた方がいいぞ」
「分かりました、ありかとうございます!」
 ロリオはルーツと鴉に軽く頭を下げると、自分の手首にも塗るとハーブ園へ走っていく。
「来るぞ、鴉」
「あぁ・・・分かっている。2人が逃げきるまでに、何とか止めないとな・・・・・・」
 飛来する黒くテカる妖怪を見据え、アルティマ・トゥーレの冷気の刃風を放つ。
「ぶわっ、何だ!?寒いぞ!」
「その程度気にするなっ。突撃ぃいいっ」
 兵たちは寒さを無駄に我慢し向かってくる。
「―・・・羽が凍結しかかっても、飛んでくるのか」
「まったく、恐ろしい生命力だな」
 妖怪の特攻をルーツが念力で止めようとする。
 ブビビビ・・・。
「くっ・・・この数ではサイコキネシスでも止めきれないか」
 羽ばたきは遅くなったものの、何十匹もの相手では止めることが出来ない。
「だったら、幻覚で墜落させてやるまでだ!」
「うわぁあ!?けっ煙が!!あの煙がぁああっ」
 その身を蝕む妄執で恐ろしい幻覚を見せられた兵が墜落する。
「煙だと!?どこからだっ」
 何匹かパニックに陥り、芝生の上で手足をばたつかせているのを、まだ幻覚のターゲットになっていない他の兵が凝視する。
「煙なんてどこにも出てないぞ、どういうことだ!?」
「フッ・・・。そのまま眠るがいい・・・」
 パニクッた者どもを冷気で凍結させた鴉が剣で叩き潰す。
「これだけ足止めしておけば・・・、もうあの2人を終えないだろ」
「そうだな。屋敷も狙われているようだから、近づけさせないようにしておこう」
 ハーブスプレーを手に2人は屋敷の方へ駆けていく。



「2人はハーブ園に逃げたみたいだね」
「ですが、そこにずっといるわけにもいきませんわ」
 となるとやっぱり“害虫駆除”しかない、とミルディアと真奈は顔を見合わせて頷く。
「皆〜、おいでおいで〜♪」
 野性の蹂躙でミルディアが魔獣を呼び寄せる。
「そこでちょっとスタンバッておいてね。―・・・すぅぅ・・・・・・。ぐぁああぉおおーーーっ!!」
 大きく息を吸い、鼓膜を破りそうなほどの龍の咆哮の声を上げる。
「―・・・うるさいぞ、小娘!!」
「ありゃ?利かないみたいだね」
「相手は魔法攻撃を仕掛けてこないみたいですし」
「う〜ん、そっか。じゃあやっぱり。潰しちゃうのがいいかな?」
 パチンッ。
 指を鳴らし待機させている魔獣を走らせる。
 ズドドドドドッ。
 人型の兵たちを踏む潰す。
 ベキョ、メキメキッ。
 骨を砕く音が響き、断末魔を発する間もなく息絶える。
「このままでは我々も潰されてしまうぞ」
「よし、飛ぶんだ!」
 ブビィイインッ。
 原型に戻った兵たちが空を飛び、ミルディアに突撃していくる。
「ぎゃぁあ、やっぱり飛ぶんだ!?」
「汚らわしい悪しき者よ・・・去りなさい、バニッシュ!!」
 パートナーの顔面に向かって飛来する者どもを退かせる。
「むぐぐっ。―・・・それくらいで退くものかーっ」
「バニッシュでは何度も放たないと効き目がなさそうですわね。それなら・・・雷で撃墜してやりますわ」
 ドドドドォオオッ。
 ブゥウ〜ン・・・、ブシャアッ。
 落雷に撃たれたテカテカのボディーが無残に吹っ飛ぶ。
「あらあら、これは殺虫剤でも欲しいところですわねぇ〜」
 屋敷に攻め込もうとする新手を見上げ、肩をすくめて嘆息する。
「2人を屋敷の中へ非難させてください」
「おっけ〜」
 ミルディアはハーブ園へ駆け、魔獣を走らせながら、特攻してくる妖怪をぶっ飛ばしてガードする。
「早く屋敷の中に避難してっ」
「でも、やつらはハーブの香りが苦手だって、ルーツさんが教えてくれましたけど」
「ん〜だけど、しつこそうだから。何か悪知恵を働かせて、何を仕掛けてくるかわからないよ」
「確かにそうですね・・・」
「ハーブが苦手なら、撃退用にちょこっと護身用に持ってればいいんじゃない?」
 ブチブチッと手早く毟り、ロリオが抱えているジュエリンの手にハーブを握らせる。
「あいつらが飛んでくる前に急ごう!」
 呼吸するのを忘れそうなほど、2人を連れて力いっぱい走る。