First Previous |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
Next Last
リアクション
「今の放送、見ました?」
「うん、ちっぱい教とか、しーでいとか言ってたよね」
水橋 エリス(みずばし・えりす)とそのパートナーニーナ・フェアリーテイルズ(にーな・ふぇありーているず)は、牙竜の姿が消えたオーロラビジョンを見上げていた。
夏候惇・元譲(かこうとん・げんじょう)は2人のために飲み物を買いに行っており、エリス達は彼女を待っていた。
その後オーロラビジョンに流れたのは、本日発売の新作アイス『Big Bow』のCMだった。
エリスとニーナはお互いの顔を見合うと、盛大な溜息を付いた。
「せっかくのお休みですから3人で買い物に来ましたが、今日は日が悪そうですね。こんな事なら今朝の星占い、見てくるべきでした」
「エリスお姉ちゃん、珍しくお寝坊さんだったもんね」
「元譲さんが戻ってきたら、帰りま……」
きっと今日のてんびん座の運勢は下から数えた方が早いに違いない。
エリスはそう思うと夏候惇の戻りを待つことにしたが、それが良くなかったようだ。
「ちっぱいだ……見事なまでのちっぱいだ!!」
「うぉぉ、マッサージ……マッサージしてぇぇぇ!!」
「馬鹿野郎! ちっぱいは愛でるもんなんだよ、イエスちっぱいノーマッサージだろうが!!」
運悪くちっぱい教の同志集団に遭遇してしまった。
新しいイルミンスールの制服は身体のラインが出るため、エリスのスレンダーなボディをちっぱい教の同志達は見逃さなかった。
ニーナの服装もアラビアンナイトに登場する踊り子のような露出の多いもので、こちらも彼女の細身を外からでも十分堪能できた。
「な、何なのですか、あなた達は?」
「エリスお姉ちゃん、この人達もしかして……」
「貴様ら、失せろ!!」
困惑するエリスとニーナを余所にヒートアップしていく同志達。
エリスがニーナを背に庇うと同時に、夏候惇が駆け付けてきて、手に持っていた紙コップをちっぱい教の同志達に投げ付けて怯ませ、その包囲網を破ってエリス達の前に立ちはだかった。
すると同志達の視線が一斉に夏候惇へと向かった。
「きょぬーだ! きょぬーが出たぞ!!」
「ちっぱいの敵だ!!」
「ちっぱいに愛を! きょぬーに鉄槌を!!」
「な、なんなんだこいつら……」
同志達は夏候惇に一斉に殺気を向けた。
魏の豪傑として殺気に慣れた夏候惇でも、このような萌え混じりの殺気など浴びたことが無く、得体の知れない気迫に呑まれて後退りしてしまう。
「ふ……ふふふふふふっ……」
「主?」
「エリスお姉ちゃん?」
まさに一触即発! という緊迫した雰囲気の中、急に底冷えのするような笑い声が響いてくる。
その場にいた全員が笑い声が聞こえた場所を見ると……俯いて恐ろしい笑い声を上げるエリスがいた。
「ちっぱいって……胸が小さいって事ですか? ちっぱいって……私の事を言ってるんですか?」
ふっと顔を上げると、彼女は達観した目で同志達に笑いかけていた。
しかし、その手にはリカーブボウが握られていた。
「私だって……元譲さんみたいにスラッと背が高くてスタイルのいい女性になりたかったですよ……ふふふっ、女性を胸で区別する人なんて最低ですよね……だから、滅殺です!!」
「やばいのだよ!」
「うひゃぁ!」
にっこり笑うとそのままリカーブボウを構えて、手当たり次第に撃ち始めたのだった。
夏候惇は間一髪、ニーナを抱き抱えてその場を離脱したが、後には屍の山が築かれたという。
First Previous |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
Next Last