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猫耳メイドが大切なあなたのために作ります♪

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猫耳メイドが大切なあなたのために作ります♪

リアクション

「やっと卵を見つけたねぇ」
「そうですねぇ、緑さん」
 ≪プテラノトプュス≫が生息する山脈。その頂上付近まで昇った佐々良 縁(ささら・よすが)天達 優雨(あまたつ・ゆう)は、ようやく≪プテラノトプュス≫の卵を発見した。
 自身の身長ほどの卵を見つめながら、緑はホッとため息つく。
「それにしても、誰にも気づかれなくてよかったよぉ」
「そうですかぁ? せっかく可愛いのにもったいないですねぇ〜」
 優雨がニコニコ顔で緑の頭を撫でる。
 どっと疲れを感じて肩を落とした緑は俯き、自身が来ているメイド服が目についた。
 緑は≪プテラノトプュス≫の卵をとりに行くにあたって、優雨にメイド服を着せられ、しかも【超感覚】でネコミミまで完備していた。
 あゆむが着ていたのを見て着せたくなったと優雨は言っていたが、緑はこんな恥ずかしい姿を他の人に見られるなどまっぴらごめんだった。
 緑は他の人達のことが気になり、崖から下を覗き込む。
「皆がんばってるみたいねぇ。私達も早く気づかれる前に自分達の仕事をしないとねぇ」
 緑は他の生徒達が≪プテラノトプュス≫との戦いを終える前に、さっさと卵を運び出してあゆむに届けることにした。
 緑が顔を上げようとすると、ふいに下のほうで≪プテラノトプュス≫が咆哮をあげた。
 強烈な咆哮は山脈の頂上付近の緑達がいた巣穴にも届いた。
 緑が揺れる巣穴で緑は四つんばいになり必死に地面にしがみ付いていると、ピキキッと嫌な音が鳴り響く。
「緑さん!」
「え、えぇぇぇ――!!」
 しがみ付いていた地面が砕け、緑は山脈の岩肌と共に地面に落下していったのだ。
「こ、こんな所で死にたくないよぉぉぉぉ!!」
 緑は空中でどうにか光る箒を使用し、地上に激突してぺっちゃんこになる前にどうにか減速することに成功した。
「はぁ、どうにか、あ……」
 緑がゆっくりと岩が散らばった地面に足を付ける。
「メイドさん?」
「え?」
 緑の目の前に魔法少女の衣装に身を包んだ20代男性月詠 司(つくよみ・つかさ)が尻餅をついていた。
 司は咆哮を受けて元の姿に戻ったのだが、気が付くといきなり岩が空から降ってきて、どうにか回避したら今度は猫耳メイドの緑が舞い降りてきたのだ。
 司が呆然と緑をみつめる。
「ネコミミメイドが空から降ってきた……」
「――ッ!!!!」
 緑は目の前に明らかな変態な感じの人がいるとか、司のスカートの中身が開いた足の間から見えているとか、そう言った不快な感情は、さておき。
 なにより自身がメイド服を着ているのを他人に見られたことがとてつもなく恥ずかしかった。
 顔を背けて耳まで真っ赤にする緑に、司はなんと声をかけたらいいか戸惑った。
「え、えっと――」
 すると猛スピードでシオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)が走ってくる。
「ツカサ! 新しい薬よぉぉぉぉ!!」
 シオンは司に向かって振りかぶり――タルタル特製・気付け薬を投げた。
「んぐっ!?」
 タルタル特製・気付け薬が見事に司の開いた口へとヒットし、中身が喉へ流し込まれる。
 そして司の姿が少女の姿へと変貌していった。
「魔法少女ツカサ復活なの! アンジェちゃん、いっしょに行くの!」
「任せといてよ!」
 魔法少女ツカサになった司は、シオンの後を追ってきた強殖魔装鬼 キメラ・アンジェ(きょうしょくまそうき・きめらあんじぇ)と共に≪プテラノトプュス≫へと向かっていった。
 目をぱちくりさせる緑。
 シオンはそんな緑にペコリとお辞儀をして立ち去ってしまった。
「今、なんだか可愛らしい魔法少女がいませんでしたかぁ?」
「……」
 シオンと入れ違うように降りてきた優雨に、緑は何度も首を横に振って答えた。


「これでどうですぅ!」
 ルーシェリア・クレセント(るーしぇりあ・くれせんと)は≪プテラノトプュス≫を【遠当て】で狙って引き付ける。
 その隙にアルトリア・セイバー(あるとりあ・せいばー)は≪プテラノトプュス≫の懐に潜りこみ剣で腹に斬りかかるが、硬い皮膚に跳ね返されてしまい攻撃がなかなか効かない。
 蚊が触れたような痛みに≪プテラノトプュス≫はでかい図体を動かし、太い尻尾でアルトリアを薙ぎ払う。

 一撃のダメージがなかなか通らない以上、続けざまに同じ箇所を狙おうとする生徒隊。
 だが、≪プテラノトプュス≫の咆哮のおかげでなかなか、連続して攻撃することができないでいた。
 ≪プテラノトプュス≫が近づいてきた生徒達を前に、またしても咆哮を上げようとする。生徒達は被害をさけるために距離をおくしかなかった。

「陽子さん、今度こそ咆哮を止めるですよ〜」
「はい。これ以上あれの好きにはさせません!」
 生徒達から離れた位置で神代 明日香(かみしろ・あすか)緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)はそれぞれの銃口を≪プテラノトプュス≫の喉元へと向ける。
 ≪プテラノトプュス≫が空に向かって、高らかに咆哮を上げようとしたその瞬間、頬の周りを覆う鬣の隙間から喉が少しだけ見えた。
「撃ちます!」
「いくですぅ!」
 二人が同時にトリガーを引いた。
 咆哮が発せられるその一瞬。――≪プテラノトプュス≫の喉に何十発目かわからない弾丸が直撃した。
 そしてついに、蓄積したダメージが≪プテラノトプュス≫に大打撃を与えた。
 苦しめていた≪プテラノトプュス≫の咆哮が、弱々しい物へと変化したのだ。
「咆哮が弱まった!?」
 ガディで空中を飛んでいたグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)はこの機を逃さず突撃しようとする。
「よし、このまま一気に――ぐっ!?」
 グラキエスの顔が苦痛に歪む。
「主、どうしました!?」
 グラキエスは全身を駆け巡る締め付けるような痛みに身体のバランスを崩してガディから落下した。
 地面でももがくグラキエスに魔鎧となったアウレウス・アルゲンテウス(あうれうす・あるげんてうす)が何度も声をかけるが、苦しそうなうめき声が返ってくるだけでまともな返事がない。
 グラキエスは狂った魔力を体内に宿す特殊な体質の持ち主だった。どうやら、≪プテラノトプュス≫の咆哮を食らううちに体内の魔力が、一時的に暴走しようとしているようだった。
 地面に横たわるグラキエスに、≪プテラノトプュス≫が突進してくる。
「まずい! グラキエス!」
 咆哮をさけるために距離をおいていたゴルガイス・アラバンディット(ごるがいす・あらばんでぃっと)は、慌ててグラキエスの元へ駆けつけようとするが、間に合わない。
 すると、グラキエスと≪プテラノトプュス≫の間に赤い閃光が走った。
「やらせないよ!!」
 緋柱 透乃(ひばしら・とうの)が走り込んだのである。
 透乃は正面から≪プテラノトプュス≫を止めようとする。
「っう!!」
 ≪プテラノトプュス≫の広い頭に手が触れた瞬間、透乃は腕ごと吹き飛ばされそうになった。
 それでも陽子達が集中的に足を狙って≪プテラノトプュス≫に膝を着かせたことにより、数メートル押し流された所でどうにか踏ん張ることができた。
「……全身が痛い。けど、これくらいまだいけるよぉ!」
 透乃は地面についた≪プテラノトプュス≫の巨大な頭を蹴って空中へと舞い上がる。
「はぁぁぁぁ――!!」
 そして渾身の力を込めた燃える拳を、曲線をえがく≪プテラノトプュス≫の右角へと叩きつけた。
 次の瞬間、角が砕ける轟音に続いて≪プテラノトプュス≫が叫びをあげる。
 跳ねるように立ち上がった≪プテラノトプュス≫の頭にぶつかり透乃は吹き飛ばされながらも、どうにか受け身をとって地面をころがる。
 顔を上げ、起き上がろうとする透乃の目の前に、怒り狂った≪プテラノトプュス≫が尻尾が迫る。
「しまっ――!!」
「させるか!」
 ゴルガイスが透乃に迫った尻尾を、近くの大木をぶつけて跳ね返した。
「援護は任せて今のうちに拳を叩き込め!」
「サンキュー、まっかせといて!」
 透乃はゴルガイスの援護を受けながら≪プテラノトプュス≫の懐に飛び込んだ。
 そして、脇をしめた透乃は目にもとまらぬ速さで≪プテラノトプュス≫の腹に拳を叩き込んだ。

「くらぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 連続して叩き込まれる拳。蓄積したダメージが≪プテラノトプュス≫の腹の皮膚にヒビを入れる。
 ≪プテラノトプュス≫がもはや絶叫のような咆哮を喉をつぶしながらあげた。
 至近距離でくらった透乃とゴルガイスは、≪プテラノトプュス≫の喉がつぶれていたおかげで鼓膜が破れることはなかったものの、動きを止めてしまう。
「うおっ!」
「きゃっ!」
 二人は強烈な尻尾に薙ぎ払われ吹き飛ばされた。
 ≪プテラノトプュス≫は飛んで逃げようとする。
「逃がさないですよぉ!」
 逃げ出そうとした≪プテラノトプュス≫をルーシェリアが【光術】を当てて、抑えつけようとする。
「今のうちに、アルトリアちゃん!」
「承知!」
 すでにアルトリアは全力で駆けていた。
 狙うただ一つ。透乃とゴルガイスが作ってくれた、もっとも効果的な部分――ひび割れた腹のみ。
 一気に懐に踏み込んだアルトリアは、持ちうる全ての力で剣を振り下ろす。

「これで、終わりです!!」

 爆音と共に掠れた≪プテラノトプュス≫の悲痛な叫びが山脈に木霊する。
 ≪プテラノトプュス≫が膝から倒れていく。生徒達はようやく山脈に住む怪鳥を倒したのだった。


「迷惑をかけてしまったな」
「別に気にしなくていいよ♪」
 症状が落ち着いてきたグラキエスは、透乃の手を借りながら立ち上がり、感謝を述べる。
 すると、明日香が【召喚獣:ウェンディゴ】を呼び出し、≪プテラノトプュス≫を抱えさせた。
「皆さん、どいてくださ〜いですぅ」
 卵も無事回収し、生徒達は≪ヴィ・デ・クル≫へと戻ることにした。