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第四章 みんなでほっこり大作戦!


「森から帰って来る子供達を驚かせたいな。そうだ」

 イリアは翠が『空飛ぶ魔法↑↑』で小鳥を飛ばしていたことを思い出し、名案を思いつき協力して貰うためにみんなに話した。当然、みんなはその名案に賛成し、動き出した。

「こんな感じかなぁ」
 北都は小さな魚を数十匹作り上げていた。
「イリアもたくさん作ったよ。どんどん甘くしてね」
 イリアも北都に負けないほど大量に魚を作り上げた。
 園庭には大量の魚だけで子供達は誰もいない。子供達は別の作業をするため教室に移動しているのだ。つまり、これは幼稚園に残った子供達にもびっくりさせる計画なのだ。
「たくさんお菓子を入れますよー」
 水穂は出来上がった魚にどんどんお菓子を詰め込んでいく。

「セレアナ、もっとお菓子を入れたら」

「詰め込み過ぎだって」

 セレンフィリティとセレアナもなんやかんやとお菓子をたくさん詰め込んでいき、甘いお魚が次々と誕生していく。
 ちなみ出来上がったお魚はびっくりさせるためバケツに入れて隠すことに。
 
 園庭で魚作りをしている間、暖かな教室では別の作業をしていた。

「赤がいい。緑やだ」

 魔女の女の子が配られた緑色の画用紙に不満を口にしていた。
「赤色ですわね。余っていないか聞いてきますわ」
 紫蘭は女の子のために同じように画用紙配りをしているルファンに訊ねた。
「ルファンさん、赤色の画用紙ありませんかしら」
 ちらりとぐずり顔の女の子を確認した後、訊ねた。
「……すまんが、持っておらん。他の色なら持っておるが」
 手に持っている大量の画用紙を確認するもなぜだか赤色だけが無い。
「そうですか。ナコ先生は赤色の画用紙ありませんかしら」
 次はナコに聞きに行く。
「……ごめんなさい。持っていないです。オレンジ色ならありますけど」
 ナコもまた同じように赤色は無いが、同じ暖色系のオレンジ色は持っていたが、それで満足するかどうか。
「困りましたわね」
 最初から配り直しをする訳にもいかないので紫蘭はすっかり困ってしまった。
 
 画用紙配りを中断してナコは保育士としてぐずる女の子の所に行った。
「ごめんね。赤色はないからオレンジ色でいいかな。オレンジ色も素敵だよ」
 優しく宥めつつオレンジ色の画用紙で我慢してくれないか交渉するが、うまくいかない。
「やだ。赤がいいの。赤が好きなのー」
 涙を流して精一杯ぐずる。周りの子供達は心配そうにその子を見ている。
「ほら、泣かないでキリスちゃん。ピンク色もあるよ」
 新米なりにも何とか宥めようと鮮やかなピンク色を女の子に見せるが、赤色一点張り。
 このままでは雰囲気自体が悪くなってしまう。

 そんな時、

「僕、赤色だからあげるよ」

 さっきから様子を見ていたシュウヤが自分の画用紙を持ってキリスの所にやって来た。
「シュウヤ君」
 以前までお友達と関わろうとしなかった彼が自分から関わってきたことにナコは驚いてしまった。
「緑色も好きだから。はい」
 自分の画用紙をテーブルに置いて代わりに緑色の画用紙を取った。
「ありがとう、シュウヤ君」
 大好きな赤色に涙を拭いてシュウヤに礼を言った。
「うん」
 言われたシュウヤは少し照れてから自分の席に戻って行った。
「一安心ですわ」
 紫蘭は何とか場が収まって胸をなで下ろした。

「先生、良かったのう」
 ルファンはナコに言葉をかけた。今回のお楽しみ会は成功だと。大成功になるには森に行っている子供達が帰って来る必要があるが。
「はい」
 ナコはルファンに頷き、少し変わったシュウヤを嬉しそうに見た。
 画用紙を全員に配り終えてからナコは画用紙を丸めながら棒状にして先に糸を付けて釣り竿を作って説明をした。その後、ルファンや紫蘭も子供達の釣り竿作りを手伝い、森に行っている子供達の分も作った。きちんと名前を書くことも忘れない。

「きっとみんな、お腹を空かせてるはず。たくさんカレーを作らないと」
 みんなが魚や釣り竿を作っている間、小さな厨房ではネージュが大きな鍋の前に立っていた。今日の昼食はお弁当ではなくて自身の得意料理を振る舞うことは交渉済み。
 手際よく材料やルーを入れて煮込んでいる時、厨房のドアが入ってもう一人料理人が現れた。
「ここが台所ですか」
 新鮮な肉を手にルイが現れた。

「ルイさん。それは何?」

 ネージュは肉が気になって訊ねた。どう見ても店で買って来た感じではない。

「これはツァンダグリズリーの肉ですよ。仕留めたばかりの新鮮な肉です。これで鍋を作ろうかと思いまして」

 ルイは答えながらさっさと大鍋や野菜に味噌を準備していく。
「うわぁ、いいね。体が温まるよ」
 嬉しそうな子供達の顔が浮かんでくる。これはちょっとしたご馳走になりそうだ。
「そちらは何を作っているのですか。何ともスパイシーな匂い」
 先ほどから香ってくる刺激的な匂いが気になり訊ねた。
「特製のカレー。辛さは子供達に合わせて甘口だよ」
 鍋をかき混ぜながら答えた。昼食は少し先だが、カレーは煮込めば煮込むほど美味しいので早めに準備をしているのだ。

「それはいいですね。子供達に喜ばれるよう頑張りましょう」

「うん、頑張ろう!!」

 ルイも早速、料理を始めた。互いに子供達のために腕をふるった。