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恋なんて知らない!

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恋なんて知らない!

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「…………さぁ、洗浄は終わったし。セリカ、行こう」

「あ、あぁ」


 ドラム缶型の洗濯機から武藏が出てくると、まるで興味を無くしたかの様に冷たい目を武藏に向け、ヴァイスは去って行く。


「がはっ、ぐふっ」


 大量に飲んだ水を吐き出す武藏。その姿には、その場に居た誰もが目を当てられない。


「……む、武藏殿!?」

「がふ、げふっ……。…………!?こ、小町、殿……!?」


 そんな武藏に声をかけたのは、他ならぬ小野小町、彼女だ。


「い、一体どうしたのですか、濡れて身体も冷え切っているではありませんか!」

「いえ、なんのこれし、き……がはっ」

「む、武藏殿!……身体も傷だらけで……」

「はっは……。私のことは、この程度では、何の問題もありませんよ。……それより、小町殿は……」

「わ、私は、何の問題もございませぬ」

「……よ、良かった…………」




「……で、どうするわけ?」


 いつの間にか、周囲には武蔵達を取り巻く大量の人だかりができていた。
 誰しも、見た顔ばかり。先ほど武蔵達と一戦交えたもの達ばかりだ。

 そんな中、一人前へ出て、武蔵達へ一言問う女性がいた。

 ネスティ・レーベル(ねすてぃ・れーべる)。サイオニックである彼女は、一際人の感情の動きに敏感なのかもしれない。


「……どうする、とは?」

「こんだけ囲まれて、まだ街の人達に迷惑をかけるワケ?」

「……」

「一言くらい、言われてるでしょ。……あなた達、お似合いだと思うよ。私は」

「……なっ!?」

「……!?」

「私、途中からずっと見てたけどさ、その武藏って武者、あなたの事ずっと心配してたし」

「あなたも、そうじゃないの?」

「……」

「こ、小町殿を、たぶらかすな……不届き者が……!!」


 小さく震えながら、おぼつかない足を無理に固めて。
 武藏は立ち上がる。先刀頭が無い刀を松葉杖の様に両手で持ち、誰よりも頼りない姿で、立ち上がる。

「似合う、似合わない等、どうでもいい……!」

「……我らは、生きていた時代に自由恋愛など謳えなかった。そこに平等なんて言葉は存在せん。……しかし、だからこそ。成し遂げられた事が有る」

「……だが、今はどうだ? 忌むべき文化に染まり、高潔な精神を忘れた若者が蔓延り、無為に過ごしているではないか」

「その先を辿ると、恋愛などという言葉が口から出てくる。……それを取り除き、世界の未来を案じる我らの何処が悪いと言うのだ!?」

「んなことねえだろ!!」

「っ!!」


 叫ぶ様な声で訴える武藏に対し、間髪入れずに答えた者が居た。
 ウォーレン・シュトロン(うぉーれん・しゅとろん)。ビーストマスターであり、ルファン・グルーガのパートナーだ。

「どんな時代でも、人を好きな事に罪なんてねえ!」

「だからこそ、おまえらの時代でも、『夜這』なんて言葉があったんだろ!」

「そりゃ、昔に比べたら軽い奴らも増えて来てるのかもしれねえけど!!」

「大事なのは、真心だろ!?」

「いつ、どんな時でも誠心誠意相手に向かい合ってる奴らがいることを尊重すべきなんじゃねえのか!?」

「そんな気持ちがねぇから、いつまでも恋なんてこねぇんだよおまえらは!憂うことばかりしやがって、腰抜けが!」

「……勝手な事ばかり、言いおって…………!」


 足に力を入れようとするが、力が入らない。
 手に何かを握りしめようとするが、握れない。
 武蔵の身体は、連戦による連戦で、どうこうしようもない程疲労し切っていた。


「武蔵殿……。もう、我らの負けじゃよ」

「……小町殿!?」

「……言われて少し気付いたんじゃ。他人を不幸にしていては、自分芋いつまでも幸せはこないとな…………」

「現に、今は幸せなんて無い。……疲れと、傷だけが残る」

「……」

「だから、少し休もうではないか。そして、罪を償って、我らの怨根が消える様に、それからの事を考えよう」


「……」

「駄目、かの……?」

「……いや」

「……む、武藏殿…………!」

「……小町殿…………。貴女には分からないが……。拙者には、良かった事はあったぞ」

「……?」

「……こんな捻くれた阿呆だからこそ…………。
 貴女に、会えたではないか」


 それから。
 恋人達の幸せを、いつよりも大きく感じる日に起きた事件は、幕を閉じた。


――


 二日後。


 ホワイトデーのプレゼントを奪ったカップル達に集まってもらい、全員に謝罪した後、全て返したという。

 傷がついたり、破損してしまったものは弁償し、気の済むような形で返した、と。


 プレゼントが返って来て喜ぶカップル達を見て、宮本 武藏と小野 小町が浮かべたのは、思いのほか朗らかな表情だったと言う。
 実質彼らが奪った物よりも集まった人数が多かったそうだが、全ての弁償や謝罪は彼らがすすんで受け入れたそうだ。


「……それじゃ、行きましょうか」

「そうですね。……一緒に」


 これは、最後に彼らを見たという街人の話。


『手を繋いで、出口に向かう階段を上っている所見たよ。……幸せそうだったなぁ』



 ――老若男女、若人老人。


 ――全恋人たちに、幸あれ。





担当マスターより

▼担当マスター

憧感 ヒエェ

▼マスターコメント

 本日は、御日柄も良い事で……なんて難しい挨拶はできませんので割愛させて頂きます、申し訳ございません。
 今回は、『恋なんて知らない!』シナリオに参加して下さったプレイヤーの皆様、ありがとうございました!
 いやぁ、ホワイトデーとバレンタインデー、そしてクリスマスって…………。

 敵ですよね!

 じゃなくて、素敵ですよね!笑
 実際、恋愛って凄い事だと思います!人間同士、もの凄く気が合って、幾重にも重なる偶然があって、初めて実る物ですし。
 そんなテーマで今回シナリオを書く事が出来て、本当に光栄です。

 それでは、皆様、本当にこのシナリオに参加して頂き、ありがとうございました。
 また、次の機会がありましたら、ぜひよろしく御願いします。

 素敵な恋愛ができますように……!


 憧感 ヒェェ

▼マスター個別コメント