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打倒! 鷹の目強盗団

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打倒! 鷹の目強盗団

リアクション


●強襲!
「おい、お前ら! 確かに品は奪ったんだろ?!」
「は、ハイっ!! エトウ兄さんが、確かに人質と一緒に手に入れました。今頃エアカーでこっちに戻ってきてるはずです」
「それにしては遅すぎだ!! 何かあったか? いや、オレの計画は完璧だ、しくじるはずがねぇ。まさか、あの野郎持ち逃げする気か?」
 鷹の目強盗団の頭であるバルタスは、苛立ちを隠せずにいた。
 そんな時だ。

 ドォン!!

 爆音が響き、建物が揺れる。
「な、なんだ、なんだ?!」
 手下たちは慌てふためき、顔を見合わせ動揺する。
「親分、大変だっ!! 何隻もの飛空艇が押し寄せて、攻めこまれてるぜ!!」
「何だと?!」
「親分!! ゲートを破って、こっちに攻め込んでくる野郎もいやがる!」
「……チッ、あの野郎しくじりやがったか? それともこっちの情報を売りやがったか?!」
 椅子から立ち上がり、拳を握るバルタス。
「君たちは、最初から仕組まれた罠にかかっていたのだよ、鷹の目強盗団の諸君」
 殺気立つ部屋に、突然響く見下したような冷めた声。
 部屋の入口に、天鵞絨のような黒髪を後ろで一つにまとめた細身の男が立っていた。
「誰だ、貴様は?」
 殺気をはらんだバルタスの声、それを聞き、彼はフッと微笑し答える。
「我が名は天才科学者、ドクター・ハデス! 鷹の目強盗団の者よ、この程度の罠にかかるとは、まだまだのようだな? だが、心配はいらん! 我ら『オリュンポス』が協力してやろう」
「秘密結社オリュンポスのドクター・ハデス……フッ、ガハハハハ、これはありがてぇぜ!! その力、期待させてもらうぜ? うまくいけば、勿論礼はする。野郎ども、俺達も出るぞ! クソ生意気な奴らに、一泡吹かせてやれっ!!」
「オォー!!」

「ここは、通してもらいますよ」
 御凪 真人(みなぎ・まこと)は、魔杖シアンアンジェロを振りかざし天を指す。
 周囲の空気が瞬時に凍てつき、蒼白く帯電したかと思うと、一条の激しい雷となり前方に立つ敵に襲いかかった。
 身を包むローブの裾をはためかせ、ゲートから、奥の建屋に続く道をこじ開ける。
「散々好きにやってきたのです。ここで、ツケを払ってもらいましょうか? 立ちふさがるなら、容赦しませんよ」
 後続の仲間のために、その圧倒的な魔術の力により突破口を開く真人。
 彼に追従するのは、薔薇の学舎の制服に身を包んだ堀河 一寿(ほりかわ・かずひさ)だ。
 生み出した炎で敵を焼きつくし、真人と共に前へと進む。
「君たちのような悪党に、かける情けは微塵もないよ」
「世の為人の為、正義の為に戦う事こそ騎士の本懐。悪党は、今ここで滅びなさい」
 一寿の隣に立ち、ヴォルフラム・エッシェンバッハ(う゛ぉるふらむ・えっしぇんばっは)は、バスタードソードで横薙ぎに敵を斬り裂いた。
 童顔で、育ちの良さがうかがえるその整った面立ちと裏腹に、臆すること無く敵の只中に突っ込んでいく一寿。
 まだ荒削りな部分が残る戦い方を補佐するかのように、ヴォルフラムは、美しい銀髪と純白のマントをなびかせ彼の傍らで奮闘を続ける。
 そして、その頃上空では、
「よしっ! 予定通り突入しまっす♪」
「ちょ、ちょっと! だからアクロバティックなことはやめてって!!」
 レッサーワイバーンを急降下させるミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)と、彼女の腰に手を回し、必死で身体に掴まる和泉 真奈(いずみ・まな)
 迷彩を施したその姿は、まだ敵に気づかれていないようだが、響く不気味な羽音と風圧を感じ取り、屋上で警戒していた強盗たちは、見えない何かが来ることを察知した様子だ。
「少しは気付いているようだけど、もう遅いよ」
 身の丈を超えるほどのアインマンラムを構えると、ミルディアはレッサーワイバーンの背から飛び降り、強盗を強襲する。
「ギャァ!!」
「おいっ、突然現れたぞ!!」
「強盗さんたち、覚悟してよね!」
 隙きなく長槍を構え、そう宣言するミルディア。
「ヒャヒャヒャ、小娘一人に何ができるっていうんだ?お前のほうこそ覚悟しやがれ、可愛がってやるぜ!!」
 強盗は、凶悪な顔に下卑た笑みを浮かべそう言い放つ。
 しかし、その時上空に一隻の飛空艇が新たに近づき、2つの人影が空から舞い降りた。
「まったく、他人の縄張りで舐めたマネしてくれるわよね? ちょっと私達と『お話』しましょうか」
 そう言って屋上へと降り立ったのは、リネン・エルフト(りねん・えるふと)
 均整のとれた小柄な肉体と、人目を引く大きな胸が特徴的だ。
 そして、彼女の隣に立つのは、官能的な肉体に、男達を惑わすようなドレスを身につけたユーベル・キャリバーン(ゆーべる・きゃりばーん)だった。
 強盗団の男達は、その艶っぽい姿をじっとりとしたまとわりつくような視線で眺めながら、彼女たちに尋ねる。
「なんだ、ネェチャンたち。俺達に話っていうのは、そのおっぱいで、何かイイコトでもしてくれんのか?」
「お前が言うとおり、体中舐め回してやるぜ、うへへへへ」
「そう? 『天空騎士』と畏れられるタシガン空峡の義賊二人を前にして、いつまでそんな口がきけるかしら」
「『シャーウッドの森空賊団』。この名前、知らないとは言わせませんよ?」
 リネンと、ユーベルの言葉を前にして、強盗団の顔色がみるみる変わる。
「少しは分かってくれたのかしら?……随分好き勝手やってるようね? 天空騎士が相手よ、死にたい奴からかかってきなさい!」
 リネンは、そう言っておもむろにカナンの剣を引き抜く。
 その美しい刀身が、陽の光を受け剣呑な輝きを放った。
 ユーベルは、その胸元に手を差し入れると、光条兵器である魔剣ユーベルキャリバーを具現する。
「さぁ、踊りのお相手をしていただきましょうか?」

 一方で、彼女たちとは別に、建屋の入口付近へ降下しようとする仲間達もいた。
「強盗と名乗ってはいますが、やっていることは人攫いのようなものですよね」
 安芸宮 和輝(あきみや・かずき)は、クレア・シルフィアミッド(くれあ・しるふぃあみっど)安芸宮 稔(あきみや・みのる)にそう言った。
「呆れるほど、最低な連中です」
 稔は、そう答える。
「この強盗団のような存在が、孤児を作り出したりするのでしょう。絶対に許せません。その罪は、しっかりと償って頂きます」
 クレアは、そう言ってあたり一面を霧で包み込む。
 見張りらしき数名の強盗たちは、突然の霧に視界を遮られうろたえる。
 ロープを伝い、素早く地面に降り立った稔は、敵が動くより早く、矛を構え敵に繰り出す。
 見張りの一人は、悲鳴を上げる暇もなく昏倒した。
 続けて和輝も、特殊な形状の大剣『天津十束舞世曙』を引きぬいた。
「くらえ!」
 強烈な一撃は、敵の鎧を両断し強盗は、仰け反るようにその場に倒れる。
「問題は、この中ですわね。囚われている人も多いはず、早く救ってさし上げるためにも、ここで、頑張りませんと」
 地面に降り立ったクレアは、入り口を見つめそう言った。
「もう誰も苦しまないように……悪しき存在は、総てこの剣で、断ちます!」
 和輝は、閉じられていた扉を剣で叩き斬る。
 薄暗く、広い空間には木箱が積まれて置かれていた。
 慎重に、中へと進む3人。
「グルルルル……」
 低い唸り声が響き、突如、木箱の上から黒い影が跳びかかる。
「シルフィー!」
 稔は、彼女の前に立ちはだかる。
 とっさに庇った左腕に、大きな黒犬が、牙を向き噛み付いた。
「クッ!」
「稔さんっ!」
 和輝は剣を横に薙ぐが、黒犬は素早い動きでそれを躱し木箱の影へと隠れる。 
 そして、また他方から新たな黒犬が現れ、今度は和輝に飛びかかった。
「番犬ですか。よく、訓練されているようですね……!」
 次々と、間髪入れず襲い掛かる犬達。
 壁際にクレアを庇いながら、黒犬の攻撃をしのぐ二人。
「左側から、1体来ますわっ!」
「私に任せてください!」
 和輝は、飛びかかってきたところを音速の速さで剣を振りぬき、敵の体を2つに両断する。
「お前ら、大丈夫か?!」
 
 突然の声。
 新たに入り口から突入した仲間猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)は、番犬達と対峙する和輝達を見つけ、そう声をかけた。
 ここで手を貸すこともできるが……!
「ここは、私達に任せて、先に進んでください!」
「番犬達は、私達で引き受けますわ。強盗団のボスや、奴隷にされた人達が待っているはずです、先に進んでください」
「大丈夫。この数なら、私達が責任をもって始末します」
 力強くそう告げる和輝・クレア・稔の3人。
「おい、勇平、奴らに任せて行こうぜ! ちょっとの攻撃じゃ俺は砕けねえからよ、気にせずつっこめ!」
 魔鎧であるウルカ・ライネル(うるか・らいねる)がそう促した。
「分かった、ここは任せたぜ!」
 敵の攻撃の合間の隙をつき、勇平達は一気に奥の2回へ続く階段めがけ部屋を突っ切る。
 追いすがる犬達には気も止めず、全速力で階段を駆け上がった。
 犬達は、そう訓練されているのか、階段の途中にある踊り場まではついてきたものの、それ以上は上がってこない。
 2階から、階下の和輝たちに合図を送ると、彼は頼もしい笑顔で答える。
「そなたらの武運を祈るぞ」
 立ち去り際、魔導書『複韻魔書』(まどうしょ・ふくいんましょ)は、そう告げて、彼らの傷を治療する。
「どけぇ!!」
 立ちふさがる敵を問答無用で退け、先を急ぐ勇平達。
 
 そしてその頃、圧倒的な力で敵を駆逐していた真人と、堀河・ヴォルフラムの3人は、中庭の方へ敵を追い詰めていた。
 しかし、その先に待ち構えていたのは……。
「私の名は、オリュンポスの騎士アルテミス! いざ、尋常に勝負です!」
 アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)は、そう言って舞うような剣戟で、現れた三人を攻撃する。
「つッ! なかなかやるようだね」
 一寿は、肩に受けた傷を押さえそう言った。
「ここは私が惹きつけて、その間に、一気に行きましょう」
 ヴォルフラムはそう答え、短期で勝負をかけるべく、地を蹴ると一寿と共に飛び出すが……!
「ふふふ。アルテミスさんと敵契約者さんが、トラップ地帯に踏み込まれたようですわね」
「はい。時間をかけることが出来なかったので、総てが万全、とは言い難いですが。頃合いでしょう」
 強盗団の隠れ家から離れた別の場所で、止めた車の中優雅にお茶を飲む、ミネルヴァ・プロセルピナ(みねるう゛ぁ・ぷろせるぴな)と、モニターを見ながら、イーボードを叩く天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)
『秘密結社オリュンポス』の一員である彼ら、参謀である十六凪は、その端正な顔の口元に微笑みを浮かべ言った。
「敵を欺くには、まず味方からです」
「ふふふ。アルテミスさんはよくやってくれていますわ。 さぁ、終わりにして差し上げましょう」
 ミネルヴァは、そう言って、機晶爆弾を起動させるためのスイッチを押した。
 ドドーン!!
「キャー!」
「うわーッ!!」
 中庭で、激しい爆発音とともに地面に埋め込まれていた機晶爆弾が爆発し、一体を爆煙が包み込む。
「結果がたのしみですわね。さぁ、もうわたくしたちに用は無いですね、行きましょうか」
 ミネルヴァがそう言うと、十六凪は車を走らせる……。

 そんな中庭の様子とはうって変わり、建物の中、突き当たりにある両開きの扉を開けた勇平。
「来やがったな。だが、この先には進ませないぜ」
 彼らの到着を待ち構えていたのか、細身の男は、そう言って手にするナイフに舌を這わせる。
 男の周りには、手下と思われる数名の男達。
 今まで倒してきた雑魚とは違う、そう直感した勇平。
 張り詰めた部屋の空気。
「おまえら、ちょっと悪事が過ぎたようだな。怒らせてはいけない人物(山葉 涼司)を怒らせるなんて……」
 勇平は、不敵にそう言った。
「それは、テメエらも同じだぜ? 親分はご立腹だ。殺すだけじゃ、物足りないってよ!」
「へぇ? じゃぁ、お前も『ただの手下』、なんだな?」
「……口の減らねぇガキめ! 殺っちまえ!!」
 襲い来る敵たち。
 最初に動いたのは、複韻魔書だ。
「わらわに記されし魔法、その身に受けてみよっ!」
 凍てつく炎が、リーダーらしきナイフの男を飲み込む。
「いくぜ、ソーオドオブオーダー!『抜剣』!!」
 勇平が叫ぶと、それまで彼の傍らについてきていた銀の毛並みを持つ機晶生命体の狼が、その姿を剣に変え、彼の手の中に収まる。
「いくぜ!!」
 勇平は、態勢を低くしゃがみ込み、そこから踏み込むと、振り回すように片刃の剣を一閃させる。
「ぐうぉおあ!」
「ぐぎゃ!!」
 攻撃を受け、壁に叩きつけられる手下達。
 しかしナイフの男は、燃える炎を切り裂くと、渾身の一撃を繰り出す。
 足に突き刺さる1本のナイフ。
「ヒヒヒ、そのナイフにはたっぷり毒を染み込ませているからなぁ、テメェはもう終わりだぜ?」
「そんな卑怯な手は通用しねぇよ!」
 叫んだのは、鎧であるウルカだ。
 心得のある彼女は、彼の受けた猛毒をたちどころに癒す。
「馬鹿なっ?!」
「お前らの罪の清算、ここでさせてもらうぜ!」
 複韻魔書の放つ攻撃、それに合わせ、勇平は剣を上段に構え一気に敵の懐へと飛び込むと、情け容赦のない一撃をその身体に叩きこむ。
 しかし。
「キヘヘヘ、簡単に殺られるかよぉ、この俺がぁ」
 ナイフの男は、不気味に嗤った。
「大丈夫か?!」
 部屋に、仲間の一人が飛び込んできた。
 勇平達の様子を見て取ると、大岡 永谷(おおおか・とと)もまた、武器を手に構える。
「俺も一緒に、暴れさせてもらうぜ。お前らみたいな悪党は、絶対に許さない!」
 破邪滅殺の札を構えると、永谷は敵に向かい投げつける。