校長室
狩るのは果物? モンスター?
リアクション公開中!
☆★☆★☆★ 「ほら、まだまだあるからね! 沢山食べとくれよ!」 日が陰り始めた頃、村はお祭り状態だった。 「よしっ、まだまだぁっ!」 ようやくありつけた林檎に、アッシュの食欲は止まらない。 「美味しいよ、美味しいけど……。お腹一杯だよ……」 フィッツは胃の辺りを擦った。 「ならば俺が頂こう」 皿をひょいと取り上げて、アルツールは表情1つ変えずに食べている。 「収穫って楽しかったね!」 ネスティが焼きたてアップルパイを頬張った。 「次は、モンスター退治のオプションが無いと有難いがねぇ」 尚司もそのアップルパイに手を出した。 泥棒もモンスターも居なくなり、林檎の殆どは無傷であった。 更に特別な林檎まで収穫出来たのだから、騒がずには居られない! と、言った所なのだ。 「ぷぅ〜♪ ぷふぷふ、ぷひぷいぷぅ〜♪」 甘いお菓子を食べさせて貰い、ルゥのふかふか枕でぷぅはご機嫌だ。 「観月季にも抱っこして貰っておいで」 そう言うと、ルゥはアップルティーに口を付けた。 「ぴっぴこぷぅさんは可愛いですわね。今度、お洋服作ってあげましょうね」 観月季はぷぅを撫でた。 (どんなに僕が頑張ってもふかふかさせてくれないのにィ!) 観月季の隣でアディールは魔乳を狙って歯ぎしりギリギリ……。 このトン丼め……どうしてくれよう。 「ぷぅちゃーん、僕にも抱っこさせてー」 とびきりスマイルでアディールはぷぅを観月季から離そうと近付き…… 「ぷぅ!」 ゴッ という嫌な音がして、ぷぅに頭突きをされたアディールは倒れこんでしまった。 「何だかんだで、ちゃーんと泥棒捕まえたやん。ワタシは只の酔っ払いと違うねんでー」 「偶然だと思うがのう……」 「同感だね」 アルコール臭を振り撒いてはいけないと、生駒とジョージはシーニーを皆より少し離れた場所に隔離していた。 「姉ちゃん、ご機嫌だな! 呑め呑め!」 村の酔っ払いおじさんとシーニーが意気投合しているのを見ながら、2人は呆れた視線を送るだけだった。 「美味いぎゃー!」 「これ、出荷できないから加工用なんだけど……構わないなら食べとくれ」 おばちゃんが持ってきたのは箱一杯の林檎、所謂B級品だが、夜鷹は全く気にせずに平らげていく。 「火加減は大丈夫ね。はい、先に焼き林檎が出来たわよ」 セシリアは自分も少し食べながら、出来上がった物を皆の方へと運んだ。 「ありがとう! 輝の歌が終わったらボクが料理を代わるからね」 レナはお皿に手を伸ばしながら言った。 「皆の体のどこに、あれだけの量が入るのでしょうか……」 アルテッツァは呟いた。 「ボクの歌、聴いて下さい♪」 組み上げられたステージの前から歓声が上がり、輝は存分にその歌声を披露する。 「さぁ、こっちも召し上がれ」 セレンフィリティの前に皿が並べられた。 「ポークソテーだわ。美味しーい!」 先程別の料理を食べたばかりだと言うのに、食欲は納まらない。 「こんな使い方もあるのね。誰が作ったのかしら」 セレアナは思わず口に出した。 「ああ、それかい? あそこの、ほら、あの人だよ」 おばちゃんはアルクラントに目をやった。 「マスター、これ食べてもいい?」 ペトラは盛り付けられたお皿の前で、とても楽しそうだ。 「熱いから気を付けてな。ああ、済まない八雲、そこの大匙スプーンを取ってくれないか」 「大匙……これだろうか」 アルクラントに言われた八雲が手にしたのはお玉だった。 「八雲、それはお玉だ」 ヴィクトリアは正しい大匙を手にした。 「お台所借りられて……良かったです……」 牡丹は言った。 台所と言うには少し異なるが、村の人が外で煮炊きする場所を貸してくれたのだ。 「皆さんが喜んで食べてくれると……嬉しいですね……」 椿は皆が美味しく食べる姿を見て、微笑んだ。 「ルナちゃん、今日はありがとうね。助かったよ!」 「お任せあれですぅ〜」 知り合いのおばちゃんと、ルナは親しくお喋りをしている。 「そちらの2人も、ありがとね」 話し掛けられたが、人見知りの為、アニスは和輝の後ろに隠れる様にして、頷くだけが精一杯だった。 「また何かあれば、いつでも協力しよう」 和輝は言った。 「帰りは迷わない様にな」 「はい、ありがとうございます」 暗くなる前に気を付けて、と言い残し、村のおじさんは果樹園から離れた。 「ソフィア、もう誰も居ないよ」 借りたランプを手に、リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)は物陰に向けて声を掛けた。 「……」 そこから怯える様に顔を出したソフィア・ステファノティス(そふぃあ・すてふぁのてぃす)は、リアトリスの姿だけを確認して、少し安心した様だった。そして素早く駆け寄り、リアトリスのチャイナドレスを握る。 「今の時間は誰も果樹園に来ないから、大丈夫だよ」 リアトリスはソフィアに優しく言った。 少し特殊な外見のソフィアは、多くの人の目に入るのが怖いので、村の人にお願いし、人の居ない時間に林檎狩りをさせて貰うのだ。 「1つ、取ってごらん」 リアトリスはソフィアを抱っこした。 ソフィアは林檎にゆっくりと手を伸ばし、その手中に収める。 林檎の香りにソフィアは微かに笑った。おそらく、誰もその笑みに気付く事は無いだろう程に、微かに。 「ソフィア、星が見えるよ」 リアトリスは言った。 暗くなり始めた空には、既に幾つかの輝きが浮かんでいる。 「林檎、美味しそうだね」 その声に、ソフィアは頷く。 遠く、村の方から、盛り上がった声が小さく聞こえた。 宴はまだまだ、終わりそうに無い――
▼担当マスター
奈々子
▼マスターコメント
初リアクションを無事に書くことが出来ました。ありがとうございます奈々子です。 皆様の林檎パワーに圧倒されながら、楽しく書かせていただきました。 どんだけ林檎食べたいんだ! と。 いえ、私も林檎に限らず美味しいものは大好きです。食べるの専門ですが。 それではまたの機会に、是非お会いしましょう。