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◇最終章 英雄の味◇

 ――目を覚ましたのはいつだろうか?

 影野 陽太(かげの・ようた)が起きた時、周りには誰もいなかった。打撃を受けすぎて、身体中が熱い。まるで熱病に冒されたように鈍い痛みが走っている。今日は一人で屋台を回り、御神楽 環菜に声をかけたが断られ、戦いを挑めばボコボコにやられた。お祭りなのに散々な一日だったと言えよう。しかたがないので帰ろうとする。でも、身体への苦痛と心の痛みが骨の髄まで響き渡った。
 歩きはじめて何分だろうか?
 陽太は不思議な光景に出会った。そこにはいるはずのない御神楽 環菜の姿があったのだ。彼女はコンピュータを巧みに操り、陽太を見ると冷笑し言葉を紡いだ。
「見てたわ。実力の割に弱いわね?」」
「ごめんなさい」
 何故か謝っていた。泣き笑いを交えながらだ。
「待ちなさい、強くなりたくないの?」
「……M気質だもんで強くはなれないようです。別に強くもなりたくないし」
「そう、情けない男ね。それじゃあ、将来の夢は小さなモノね」
「将来の夢……そんなモノは……」
 陽太の将来の夢は大きなモノだった。しかし、誰かに言えるような事でもない。達成できるかどうかもわからないのにそんな事は言える訳がない。結局、何に対しても消極的なんだろう。強くなっても、強くなっても自信なんかもてそうにない。皆の中心に立つ事なんて、出来そうにない。
「クスッ、どうやら、あなたは目の前の事も未来の事も……自分を信じることが出来ないようね?」
「俺は兵卒ですから……」
 陽太は環菜の前を通り過ぎようとした。しかし、彼女はいきなり陽太の腕を掴み歩き出したのだ。時間にしたら1分間ほどだったかもしれない。心地よい香水の香りと柔らかな身体。まるで、環菜とカップルになったような夢みたいな時間が過ぎていった。
「……どう、これが英雄の味よ?」
 彼女は言った。鼓動が止まらなかった。心臓も止まる寸前だ。どっちだよ!!?
 そして、彼女は長い髪を掻きあげて、陽太の横を通り過ぎていく。まるで、何も無かったように……陽太は勿論、呼び止めた。呼び止めざる得なかったのだ。
「い、いつか、機会があれば今日みたいに……また一緒に散策でもできると良いなぁ、とか思う次第なわけなので……あ、ありますが?」
 それは超駄目元かつ意味不明なお誘いだった。これでは彼女にも嫌われる。……が一年に一度のお祭りの夜は奇跡が起きる。月の満ち欠けのせいか、はたまた、ツァンダの神様の、いや悪魔の悪戯だろうか?

 彼女は一度だけ振り返ると氷の微笑を浮かべながら言ったのだ。
「英雄の味を知りたくば英雄になりなさい。臆病な者ほどその道を知っているのよ……」
 そして、彼女はその場を去っていく。
「どういう意味ですか!!!?」
 陽太は意味を尋ねようとした。しかし、彼女はもう返事をしない――恐らく、この先は何も教えてくれないし、この事は誰も信じてくれないだろう。


 なぜなら、その答えを知る方法は一つしかないのだから…… ―完―


担当マスターより

▼担当マスター

サナンダ アナンダ

▼マスターコメント

 どーも、サナンダ アナンダです。
 シナリオへのご参加ありがとうございました。
 一年に一度の夏祭りシナリオと言う事で、キャラ入り混じりなシナリオにしたつもりです。
 (時間がかかりすぎて申し訳ありません)
 夏はもう終わりましたが皆様が幸せでありますように……出血大サービス……
 それでは、また別のお話しでお会いしましょう。