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ダイエットも命懸け!?

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ダイエットも命懸け!?

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第五章

「自分から巣に飛び込んで行くとは……勇敢な方たちです」
 浅葱 翡翠(あさぎ・ひすい)は、巣の中で戦っている九郎と燕、翔子を見た。上空からはにゃん丸がリリィに操られ突撃し(相変わらず当たっていないが邪魔にはなっているらしい)、蟻地獄に噛み付いていた幸兔は巣から脱出し、アサルトカービンを手にしたまま蟻地獄を睨んでいる。
 龍壱と雪が攻撃して避けてを繰り返し、ウェイルがリーズを蟻地獄からかばう。ウィングが斬りかかり邪魔をして、さらに陣が火術を放ち蟻地獄の隙を大きくしたところにリーズが斬りかかる。朱華とウィスが見事な連携で周りをかばい、また互いに補い合う。
 誰も彼もが見事な動きで、またそのためかこちら側に被害はほとんどない。
 さて、こうなると逆に手が出しにくいのだが、そうも言っていられない。
 そういえば、先ほど翔子が撃った弾が蟻地獄にダメージを与えていた。口の中ならさすがに外よりは効くか。下手なところを狙うよりもそちらを狙った方がよさそうだ。
「(狙ってみましょうか)」
 銃を構え、狙い撃つ。が、弾は殻に阻まれる。ダメージはないらしく、蟻地獄は変わらず攻撃を続けていた。
「……なかなか当たりませんね」
「相手も動いていますしねぇ。それからこちらは前線の方に当てないように気をつけないといけませんし、なかなか難しいものだと思いますよ?」
 翡翠の呟きに答えたのは葉月 可憐(はづき・かれん)だ。
「距離もありますし、ここは相手に当てることに重点を置くより前線の方の援護に回ったほうがよさそうです」
「そうですね。可憐さんはここから撃つんですか?」
「はいっ♪ アリス!」
 元気よく返事をして、可憐はパートナーのアリス・テスタイン(ありす・てすたいん)を呼んだ。振り返ったアリスから光条兵器であるガトリングガンを取り出すと、
「一発ずつの威力は他の方の武器よりも劣るかもですが、連射速度なら誰にも負けませんっ♪」
 にっこり笑って構えた。
「あのね、可憐。命綱をつけてほしいなぁ、って思うの。落ちたら危ないから」
「うん、わかった。だからアリスもつけてね命綱」
「え、私は大丈夫だよ? 武器軽いから」
「だめ、心配だから。はい、翡翠様もどうぞ。落ちてしまったら危ないですから」 
「いりません」
「どうしてですか?」
「足を引っ張りたくも引っ張られたくもないので」
「私は問題ありませんから♪」
「可憐に問題がないなら、私が異論を唱える必要はないですねぇ」
「…………はぁ、わかりました」
 三人がお互いに命綱を結びあって、何かあったときは助け合えるようにしてから改めて武器を構える。味方には当てないよう、敵に当てるよう。
「こういうとき、敵が大きいとまだ狙いやすいですよね♪」
「あの。撃つと言うなら、目や口、関節を狙って撃てば少しはダメージが通るかもしれません。無暗に弾を消費するよりはそのほうが効率がいい」
「そうですね♪ 助言ありがとうございます、翡翠様♪」
「早く倒して帰りたいだけです」
「帰ったらお茶しましょう! マリエルさんとも話してたんですよ、これが終わったら秋の味覚堪能しましょうって!」
「私は甘いものが苦手なので遠慮しておきます」
「コーヒーはお好きですか?」
「は? 好きですけど」
「じゃあ私、コーヒー淹れますから。コーヒー」
「……そこまで言うなら、仕方ないですね」
「可憐、私も飲みたいですっ♪ 淹れてくれますか?」
「もちろん♪ 紅茶?」
「はいっ」
 そんな三人のやり取りを見て、永夷 零(ながい・ぜろ)はクックッと笑った。
「あいつら和むなー、なんか」
「和んでないで、やることを話して協力を仰ぎに行きますですよ」
 ルナ・テュリン(るな・てゅりん)の言葉に頷き、三人の元へ向かう。
「そこのお三方。協力してほしいんだが、いいか?」
「何です?」
 零の言葉に翡翠が反応した。零は親指をクイッとルナに向け、指し示してから言葉を続けた。
「ルナが蟻地獄の懐に飛び込む。俺はルナが戦いやすいように蟻地獄を狙う。お互いの行動を殺さないように行動したい」
「わかりました」
 頷いて、翡翠と可憐は狙撃の体勢に移行した。零も近場に陣取って集中する。
 特殊な弾丸を詰めて、蟻地獄を狙い撃つ。威力の高いものを使うから、無理に関節や目を狙わなくてもなんとかなるはずで、優先するは当てること。
 撃つ。空薬莢が落ちる。また撃つ。
 蟻地獄の悲鳴が上がる。前線で戦っているメンバーの攻撃が撃った場所に命中する。また悲鳴が上がる。
 零は一瞬だけルナを見た。ルナはすでに飛行体勢に移行しており、間もなく浮かび上がった。カルスノウトを携えて向かっていく。
 暴れようとする蟻地獄を、可憐の攻撃で邪魔をする。翡翠が狙いを定めて撃ち、再び蟻地獄の悲鳴が上がった。
「とどめを刺して楽にしてあげますです」
 ルナがそう言って、音速を超える一撃を繰り出した。ひときわ大きな叫び。断末魔の悲鳴。
 蟻地獄の身体が傾ぐ。踏ん張れずに倒れる。舞い上がる砂塵。
 蟻地獄が起き上がることはなかった。