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リアクション
一方、演壇前では司令部要員の募集が行われていた。
名乗りを上げたのは、戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)、そのパートナーで守護天使のリース・バーロット(りーす・ばーろっと)、ミヒャエル・ゲルデラー博士(みひゃえる・げるでらー)、そのパートナーで吸血鬼のアマーリエ・ホーエンハイム(あまーりえ・ほーえんはいむ)、英霊のロドリーゴ・ボルジア(ろどりーご・ぼるじあ)、アクィラ・グラッツィアーニ(あくぃら・ぐらっつぃあーに)とそのパートナーのシャンバラ人、クリスティーナ・カンパニーレ(くりすてぃーな・かんぱにーれ)、アリスのアカリ・ゴッテスキュステ(あかり・ごってすきゅすて)、獲狩 狐月(えがり・こげつ)そのパートナーの機晶姫、機晶剣 九印(きしょうけん・くいん)だった。
「さて、まず最高司令官を決めないとね。誰もいないみたいだったら私……」
「我にまかせてもらいましょうか」
そう自信を持って言いきったのはシャンバラの生徒、戦部 小次郎だった。
「我が家は代々軍人の家系。戦に敗れたときの覚悟はできている」
そしてリースを呼び寄せ、
「リースは副官としてオペレーターをやってもらいます。いいね?」
「はいっ」
いつものおっとり口調は飛んでいき、敬礼と共に答えた。
「それならば私は作戦参謀兼政治将校でいかがかな?」
ゲルデラー博士がスッと話題に入り込む。
「具体的に何をする仕事なんですか? 要らない仕事なら東部戦線で穴掘ってくださいね。ただでさえ人手が足りないんだから」
茜は興味なさそうに答えた。
「ふふふ、茜と言ったな、君は何が戦争を支配するか知っているか?」
「力が強くて頭のいいほうでしょ?」
「ちが――――――――――――――――うっ!!」
野武が叫んだときと同じくらいみんながびっくりした。
「戦争を支配するのは情報だ。情報、広報、宣伝、そしてデマゴギーとプロパガンダ! これだけが良家のお坊ちゃんを鍛錬された戦士に作り替えることができる! 弱虫小僧をマシンガンの嵐の中を銃剣突撃する英雄に変貌させえるのだ!」
「……おまえ、実は危険思想でしょ?」
軽く戦部が引いていた。
「私のパートナー、アマーリエとロドリーゴは前線で督戦にあたってもらう事とし、私はここから全館に向けて大演説を行おうと思う。それでだ、最終的には迫り来る敵軍に対し、サークルの前方に一般参加者を十重二十重に整列させてだな」
「却下です」
戦部が切り捨てる。
そして戦部と茜はぶつぶつささやき会ってから、
「よろしく頼みます」
と、敬礼した。
「あと、館内を警戒してくれる人が欲しいな」
と、戦部が言う。
「それはマジケット準備会の管轄じゃない?」
「いや、工作員が武装していた場合、準備会じゃ対処できないでしょう?」
「でしたら、私たちがやります」
手を挙げたのは赤羽 美央(あかばね・みお)とそのパートナージョセフ・テイラー(じょせふ・ていらー)だった。
「んじゃ、俺もやってもいいぜ」
続いて手を挙げたのは鬼崎 洋兵(きざき・ようへい)とそのパートナーユーディット・ベルヴィル(ゆーでぃっと・べるう゛ぃる)だった。
「じゃあ、その4名で巡回警備と言うことで、いいですか?」
「あ、はいっ」
未央は洋兵のほうをちらりとうかがう。なんだかいかにも胡散臭い戦争屋って感じだ。
「ん? 俺の顔になんかついてんのか?」
「え? いえなにも……」
「なにもついてないってことはないだろう。喧嘩うってんのかぁ?」
洋兵は意地悪そうににやりと笑う。
「ちゃんと目と鼻がくっついてるだろ? ぬはは! 冗談だよおじょーちゃん。まあよろしくなってことよ。なあ?」
「は、はあ」
未央はこりゃいじめられそうだなと思った。こういう人は苦手。
「次は情報網の整備ね。誰かやってくれる人〜」
「俺がやるよ」
アクィラが手を挙げる。
「俺は伝令兵をやるよ。クリスティーナには放送室に、アカリは東館方面。俺は念のために西館まわりを走ってみる。携帯電話を使うつもりだ」
「ありがとう。無線有線の放送設備は全部ここの7階に集めてあるけど、万が一ここが破壊されたとき、機動力のある情報集積所があるのは心強いよね。あ、でも、イベントはじまると携帯繋がりにくくなるから、準備会の無線使って」
「それと、パートナーより君が司令部にいてくれると助かる」
戦部がそう付け加えた。
「その方がいいならそうするけどな」
アキュラは何か不満そうに言葉を濁した。すると狐月が手を挙げ、
「私は警備室をお借りしようと思いますが、可能ですか?」
「うん。たぶん」
「万が一7階が落とされた場合、そこからスピーカーで発信すれば、アクィラと私とで情報収集と伝達ができます」
「スゴいな。ミニ司令部作れるねじゃないか」
戦部が感心する。
「万が一という意味では野戦病院も必要ですよ」
そう言ったのは本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)。イルミンスールの医師の卵だ。
「やってもらえますか?」
「もちろんです。連れのクレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)と、どこかに仮設病院を作るつもりですが。だれか、全軍でヒーリング能力のある方がいればお手伝いください!」
本郷は最後の部分を全員に聞こえるように叫んだ。
そんななか、
「自分たちは勝手にやらせてもらいますよ」
そう言ってきたのは顔に入れ墨をした少女、鬼崎 朔(きざき・さく)だった。彼女は3人のパートナー、剣の花嫁ブラッドクロス・カリン(ぶらっどくろす・かりん)、機晶姫スカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす),英霊尼崎 里也(あまがさき・りや)。彼女たちでひとつの戦闘チームができあがる。
「守るのは苦手です。やるなら総大将の首を背後から一気にやりたい」
「その案、私も乗るぞ」
教導団龍雷連隊に所属する松平 岩造(まつだいら・がんぞう)とそのパートナーの剣の花嫁フェイト・シュタール(ふぇいと・しゅたーる)も賛同する。
「あの書記長のババアだけはを絶対に始末しないとな」
「では、みなさんは空京ベイニューヨークホテルで、こちらの命令を待ってください。勝手に動かれても無駄死にです」
総司令、戦部が凛として命じる。
「放送をいつでも傍受できるように無線機を持って行ってください。おねがいしますね」
狐月がにっこりと微笑んで受信機を渡す。
「承知しました。助かります。ただ、本部壊滅と判断したときには、こちらも……」
一瞬重苦しい雰囲気がただよう。
「愚かものっ。私が指揮して負けた戦がひとつたりとてあるかっ」
ゲルデラー博士が叫ぶ。
「あえて言おうっ!」
「指揮した作戦も一度もないんだろ?」
アクィラが茶々を入れる。
司令部に笑いがこぼれる。
「すみません、自分としたことが。士気を落としてしまった……」
朔がすまなそうにうつむく。
「気にするな。みんな不安なんだ。みんなね」
松平が朔につぶやく。
「私たちも後方から襲撃にまわりますぅ〜」
教導団軍服をチャイナドレス風に仕立てたかわいらしい女性が発言した。皇甫 伽羅(こうほ・きゃら)と、そのパートナー、ゆる族のうんちょう タン(うんちょう・たん)に英霊の皇甫 嵩(こうほ・すう)だった。
「じっ、自分たちも皇甫 嵩殿の隊と連携して行動したいでアリマスッ!」
ちゃきっと敬礼する土御門 雲雀(つちみかど・ひばり)。従えているパートナーは守護天使のエルザルド・マーマン(えるざるど・まーまん)だ。
「皇甫君が後方を突くなら俺と雲雀は側面にまわるよ。もちろん深追いはしない」
輝くほど美形な守護天使はそう言葉を続けた。
「いずれにしても、全員の連携が取れていなければ意味がないですからね。我が作戦にはしたがっていただく! いいですね?」
と、戦部総司令が言うと、『遊撃隊』は、
「それじゃあ、私らもやぐら橋の連中の手伝いにでも行こうか」
と、松平が言うと、何か白けたようにぞろぞろと去ってしまった。
「……。」
ため息をつく戦部。
「よいのですよ総司令。兵に嫌われるのも仕事です。何故なら将は兵を殺すのが任務ですからな。敵味方なく。違いますかな?」
ゲルデラー博士が戦部の肩をとんと叩いた。
「兵士じゃない場合は勝手にやってもいいんですね?」
メガネをかけた少年がノートパソコン片手に隅のほうからこちらを伺う。彼はアンダーグラウンドのネット界隈では名を知らぬものはいない天才ハッカー、湯上 凶司(ゆがみ・きょうじ)。傍らに長身のヴァルキリーセラフ・ネフィリム(せらふ・ねふぃりむ)を連れている。
「兵でないものは戦力ではない! 戦力ではないものには興味はない!」
めずらしくゲルデラー博士が興奮する。
「あ、そうですか」
かたかたかたかたかたかたかたかた……
少年はキーボードを叩く。
「じゃ、バカな大人同士で殴り合えばいいですよ。僕には僕のやり方がある」
「貴様は何をしに来たのかっ!? ハツネのスパイかっ?」
「博士、落ち着いてくださいっ」
戦部が割って入る。
「ハツネだって? あのババアは大嫌いだ。健全? 安全? 規制? 育成? 笑っちゃうよね? あんなヤツ、従える価値も無い生き物さ。だから……ヒヒ……メチャメチャにしてあげるんだ。ぜーんぶね」
「ぼうや、それくらいにしておきましょう」
「だれがぼうやだっ!?」
凶司が振り向くとそこにはシャンバラ教導団の女騎士クロス・クロノス(くろす・くろのす)がいた。
その横にはイルミンスール魔法学校のウィザードエリオット・グライアス(えりおっと・ぐらいあす)、そのパートナーの剣の花嫁クローディア・アンダーソン(くろーでぃあ・あんだーそん)だ。
「私たちもちょっとした策があって、今からイルミンスール魔法学校へ行ってみようと思うんです」
と、エリオットは言った。
「そういうことで、この子もあわせて別働班ということにしませんか? 総司令」
クロスのお願い目線が効いたのか、戦部は許可をだした。そして、
「そこの……なんというかピエロ殿。あなたも別働班に?」
戦部が問いかけたのはナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)。道化師の衣装に身を包み顔を派手にペイントした正体不明の不気味な人物だ。
「ナガンのことかい? ナガンは……そうだなぁ。そうだぁ。その別動班ってヤツでいいぜぇ?」
「具体的に何か策でも?」
「ねぇよばぁか。とりあえず戦っ争ぅなんだからぁよぅ、敵ぃみつけてぇぶっ殺せばぁいいんじゃねぇ?」
「……」
「ひひひひ。まぁナガンにまかせとけって」
そういってナガンは会議室を出て行った。
「さて、だいたいこれで配置も終わりましたね」
と、戦部。
「私は演説用の草稿をまとめないといけませんな」
と、ゲルデラー博士。
「そんなの明日にして帰ろうぜ」
とアクィラ。
だが、そんな会議の一部始終は、ハツネが放ったスパイたちによって徹底的に観察されていたのだった……。
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