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【十二の星の華】黒の月姫(第1回/全3回)

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【十二の星の華】黒の月姫(第1回/全3回)

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 そんなある日。テロ行為について、重大な発言をする生徒がいた。斎藤 邦彦(さいとう・くにひこ)その人である。
「大体の犯人の目処はついた」
「なんだって?」
「そいつは誰なんだ」
 生徒達は邦彦の発言に驚きの声を上げる。
「いや、犯人は私がある程度の目星をつけているが、確証はまだない。確証を得るために調査中だ。ただ、とにかく、テロリストに関して心当たりはある」
「教えろよ」
「まだ、確証は取れていない。そのため、嘘の情報を迂闊に流すわけにはいかないからな。もう少し待って欲しい」
 急く生徒達を邦彦は制した。
 しかし、実際には邦彦はテロリストの情報に関して、確証あるものは手にいれていなかった。これは一種の「罠」なのだ。
 邦彦はパートナーのネル・マイヤーズ(ねる・まいやーず)と歩きながら、小声でつぶやく。
「テロリストの正体だが、鏖殺寺院が妥当な線だろう…しかし、これまでの活動を見る限り、奴らは犯行声明や素顔をさらして堂々とアピールするはず。少なくとも鏖殺寺院とは違い、今度のテロリストは顔を隠す理由を持っている」
「ええ」
 ネルも同意する。
「顔を隠すのは基本的に正体を隠す為だ、表の顔があり普段一般人と接触しているとみていい。事前情報と合わせて考えると<平日は一般人として行動しており、正体がばれると不味い事情を持つ剣の使い手>と考えられる。時期と特徴から藤野赫夜が怪しい…決めつけるのはまずいが」
「確かにそうね、逆に条件を満たしすぎている気がするわ」
「さっき流した情報で、テロリストが私を無視できず施設破壊よりも優先して襲撃するはず…どう思う? ネル?」
「…そうね。…リスクが高いから個人的には止めて欲しいんだけど、…言っても聞かないでしょうね。ねえ、邦彦?」
 邦彦はバツが悪そうに頭を掻く。
「仕方ない、ワタシは影ながらあなたを守ればいいのね」
「助かる、ネル」

ミルザム・ツァンダはいるか?」
 トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)が、突然校長室に乗り込んできた。
「トライブ、ここは生徒がずかずか入りこめるところではないわよ」
 御神楽 環菜(みかぐら・かんな)がトライブを制しようとするのを、ミルザムがいったんなだめる。
「私に何か用かしら?」
「あんたの護衛をさせて貰う」
「…なんですって?」
 環菜はトライブの発言に驚く。
「おれは、本当はミルザム、あんたのことは認めていない。なにより生徒や一般市民を危険に晒して、女王候補は安全な所で高みの見物かい? 生徒たちの間にもあんたに対する反発心はあるんだぜ?」
「そう」
 ミルザムは臆することなく、トライブに対峙する。
「よく分かったわ、トライブ。でも、あなたのことだから、私を警護しつつ、囮として使うつもりではなくて?」
「…良く、おわかりで」
 トライブは自分の意図をミルザムに見抜かれ、一瞬、苦笑する。
「トライブ。私を囮にしようとしていることは、そんなに気にはしていないわ。なんでもありの女王候補の戦い。ただ、それより、一般生徒は巻き込みたくないの。今回は遠慮してくださるかしら」
「…判ったよ」
 環菜が仲介に入ることもなく、トライブは校長室を出て行った。
(身体を張れる覚悟がねぇんじゃ、俺はあんたを女王だとは認められねぇよ)
 そうはいいながらも、ミルザムの近辺の護衛に、密かにトライブは当たるつもりだった。


「ありがとう、今度また頼むよ」
 赫夜に稽古をつけてもらった、高村 朗(たかむら・あきら)は汗を拭いながら、にっこりと赫夜にほほえみかける。
「こちらこそ。朗殿は太刀筋が素直だな。それに豪快だ…私がケガをしないよう、気を遣ってくれた」
「…わかっちゃいましたか。そうだ、物騒だから送っていくよ。妹の真珠ちゃんと俺のパートナーも待っているし」
「そうだな、そうしようか」

 放課後の教室では、朗のパートナーのルーナ・ウォレス(るーな・うぉれす)と真珠が、手芸をしていた。二人とも、それほど積極的に人と交流するタイプではないので、それほど言葉も多くない。二人とも、どうしたものか、何を話せばいいのか、戸惑いながら、ちくちくと縫い物をしている。
「ここはどうしたら、いいのかしら」
 ルーナの質問に
「あ、そこはステッチを入れる感じで、ええ、そんな感じで」
 そこに朗と赫夜が入ってくる。
「二人ともお待たせ!」
 朗のほがらかなムードが、一気に明るさをもたらす。
「真珠ちゃん、パートナーのルーナがお世話になったね、お、これ、なに?」
「ルーナさんが、朗さんにストラップのマスコットを作りたいとのことでしたので」
「あ、真珠さん、いっちゃだめ!」
「へえ〜完成が楽しみだな!」
 朗の言葉に続いて、赫夜が帰り支度を始める。
「おなかがすいたな、何か食べて帰ろうか。…朗殿、良い店はあるかな?」
「ファーストフードとか、ファミレスがいいかな?」
「できれば、トンコツらーめんが食べたいのだが」
「意外とがっつり行くほうなんだ」
 朗は赫夜の言葉にびっくりする。
「姉様は替え玉もしちゃうんです…」
 真珠の言葉に、朗とルーナは笑みをこぼした。
「そういえば、週末、パジャマパーティがあったな」
「ええ」
「パジャマパーティ?」
「ああ、朗殿は参加できないが、女子だけのパジャマパーティがあるらしい。ルーナさんも都合があえば、来られたらどうだ」
「ええ、考えておきます」