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リアクション
「ティセラさん!? って、そんなわけないですよねぇ」
ロザリンドはティセラを見て、一瞬身構えたが他人の空似だと自分の中で納得してしまったようだ。
ティセラもそれには突っ込まない。
「むむ!? あなたもホイップさんと同じくらい胸が大きいですね……やっぱりこの温泉に何か秘密が!?」
「それはないと思いますわ」
ティセラは答える。
「残念です……」
がくりと肩を落とした。
ロザリンドは温泉に浸かりながら、自分の腕を気にしている。
傷がうっすらと残っていて、消えてくれるか心配しているのだ。
「そうそう、あなたに似た人でティセラさんって人がいるんですけど、その人に一刀で斬り倒されてしまいました」
「……」
ティセラは黙って聞いている。
「何で他の人を傷つけることをするんでしょうか……強い国があれば皆を護る事ができるというのは分かりますが。そのために皆の中から一部を切り捨てるのは悲しい事だと思います。自分を犠牲にしてまでとは言えませんが、できれば困っている皆の手助けをするとか……それでしたら私も喜んでお手伝いをするのですが……むぅ……あ、のんびり入っているのに変な事言ってすみません」
「構いませんわ」
ティセラとロザリンドは暫く談笑していたようだ。
「来てみて良かったわ! とっても会いたかったの!」
ロザリンドと分かれたティセラの胸に飛び込んできたのはリュシエンヌだ。
むちむちした旧スクール水着には胸のところに『りゅしえんぬ』とプリントされている。
「あら、嬉しいですわ」
ティセラはその抱擁を受け入れる。
大きな胸に自分の顔をうずめてからリュシエンヌはキラキラと輝く笑顔をティセラに向けた。
「どうしてこんなところに居るの?」
「傷を癒しに来たのですわ」
ティセラの言葉にリュシエンヌは体を離し、ティセラのタオルに隠れていない肢体をまじまじと確認する。
その体には確かに、切り傷やら軽い火傷やらが見られる。
「綺麗な体に傷が残ったら大変!」
「ここの温泉に浸かっていれば早く、痕も残らず治りますわ」
「そっか……あのね! 今度会った時もルーシーと仲良くしてほしいの」
「勿論ですわ。わたくしに味方してくだされば、ですが」
えへへ、とリュシエンヌは笑うとそのまま温泉を後にした。
(ティセラを追跡してみれば……こんなところがあったんだな)
迅は男性用着替えテントで腰にタオルを付けて出てきたが、女体が沢山……それも水着やタオルで巻いてあるだけで、鼻血を出さないよう直視しないようにしている。
少し遠くにティセラの姿を確認すると、側へと寄って行った。
迅が近づくと、ティセラは綾香達と温泉ティータイム中のところだった。
「ダージリンファーストフラッシュを淹れたのでどうぞですぅ」
アポクリファは冷たいグラスをティセラ、綾香、エトの順番に渡した。
更に、持参していたチーズケーキも手渡す。
チーズケーキは片手で食べられるように長方形にカットされ、アルミホイルが巻かれている。
「俺にもおでんを振る舞わせてくれっ!」
「なに!? 敵!?」
いきなり背後から現れた迅にエトが反応したが、手に持ったおでんを見て、警戒を解いた。
「あっ……」
しかし、思わず飛び出したは良いが、迅はタオルを巻いてるだけの女性4人の体を見てしまい、鼻血が垂れてしまった。
見兼ねたアポクリファがティッシュを差し出した。
「すまない……あ、おでん食べてくれ!」
鼻血が入らずに済んだおでんの鍋(どうやって持ってきていたのかは謎だが)と、割り箸を渡した。
紅茶とケーキとおでんとちょっと異様な組み合わせだが、食べながら会話が進んだ。
「ティセラは十二星華になる前は、どうだったのだ?」
綾香はおでんのこんにゃくが口の中からなくなってから質問をした。
「十二星華は生まれたときから十二星華ですわ」
ティセラもチーズケーキが完全に口の中からなくなってから答えた。
「……正直、お前のやり方で国が作れる……いや、纏められるとは思えんが。まぁ、女王になろうというなら相応の覚悟があるのだろうし、私がとやかく言う事でもないだろうが、な。……お前は、もっと他人の共感を得るような行動を起こすべきだろうよ。武力、策謀……それも良いだろうがな。ん、まぁ……あれこれ言ったが、私はお前の配下でも協力者でもないしな。聞き入れるかは好きにすると良いさ」
「貴重な意見ですわ」
そうティセラは返す。
「俺は……洗脳とかしたり虐殺したりすんのはどうかと思うが……アンタはこの国を強固な国、つまり『人々を護れる国』にしたいって事だよな? 好きだぜ、そういうのさ」
迅はもう鼻血がおさまったのか、ティッシュをはずしていた。
「ありがとうございます」
ティセラがお礼を言い、その後皆でおでんをつつき、紅茶とチーズケーキに下鼓を打っていた。
おでんと紅茶とチーズケーキが終わったところで、今度は明子とノウマンの手の上に乗った真由歌が現れた。
「何でティセラがここに居るのよ……って、こんなところまで来て神経とがらせてたんじゃ本末転倒よね、やめやめ」
明子はそう言うと、ティセラの横に座った。
「そうそう、こんなに桜が綺麗に咲いているのに疲れることしてたんじゃ馬鹿みたいだよ。君達も一献どう?」
真由歌が手に持っていた朱塗りの器に瓶から透明の液体を注いで差し出した。
中には透明の液体と桜の花びらが一枚浮かんでいる。
「わたくしは遠慮させて頂きますわ」
「まだ未成年だからね、やめておくよ」
2人に断られると真由歌は1人、それを飲み干した。
その後、ノウマンから降り、温泉へと浸かる。
ノウマンへは待機と、騒ぎを起こす人間、真由歌を危険にさらす人間を排除するように命令して、近くで体育座りをさせている。
3メートルもあるので、いくら座っていても、桜と同じくらいの高さがある。
「……ところで貴女。台風の件はあらかじめ知ってたの?」
明子は気になっていたことをティセラに直接聞いた。
「いいえ、知りませんでしたわ」
ティセラの答えを聞いて、明子は更に言葉を続ける。
「どうせやるならもうちょい人に優しく動いてもいいと思うわ。アンタの目的が軍事国家の建国なら、国民を守るのも義務の範疇だと思うけど、違う?」
「わたくしに従う国民であれば命を賭して守りますわ。ただ……アムリアナ女王を慕う者は、わたくしは国民とは見なしておりませんの」
ティセラは強い憎悪を瞳に宿らせた。
「それじゃあ、王に必要なものって何?」
今度は真由歌が口を開いた。
「国を守れる強さですわ」
「その国に必要なものは?」
「何者にも侵されることのない強さですわね」
次々出てくる質問に、嫌な顔1つせず答えていく。
「友人については……どう思う?」
「愛おしい、大切な存在……といったところでしょうか」
「自らに付き従う者をどう思う?」
「大切な仲間だと思っていますわ」
ふ〜ん、と真由歌は今まで聞いた質問を頭の中で整理してから、もう一度ティセラへと集中する。
「最後に……国の指針を決めるのに王になる必要は無いんじゃないかい? 十二星華である事を利用すれば権力を握る方法はいくらでもあるように思うよ?」
ティセラは一呼吸置いてから、口を開いた。
「シャンバラ王国の考え方ではございませんわね。シャンバラ王国では女王になることに意味があるのです」
聞いていた明子がふぅ、と息を吐く。
「少々無粋だったかな。まぁ許してよ、性分なんだ」
「別にかまいませんわ」
「返答次第では剣を捧げても良いと思ったんだよ」
「では、その結果は?」
「うん、保留で」
真由歌の答えを聞き、ティセラはいつでもお待ちしていますわ、と答えた。
(なんだか疲れを取るために来たのに……この質問は疲れるわ)
明子はそんな事を思い、ティセラ達から離れた場所へと移動したのだった。
「闇に紛れて忍び足……のぞき部にゃん丸参上!」
と、小声で言いながらにゃん丸は茂みの中からパラダイスがあると信じて湯気の中を覗いた。
「あれ? ホイップちゃんの髪の毛の色は緑だったような……?」
疑問を解消する為にもう少し近づく。
湯気の中で背中が見えた。
その背中には白いタオルが見える。
「タオルを巻いたまま温泉に浸かってちゃ駄目だろう!」
思わず大きな声をだしてしまった。
気が付いたときにはもう遅し、にゃん丸はのぞきの現行犯として近くを巡回していたカルキノスと淵にとっ捕まった。
「……いや〜、パラミタ一お綺麗なティセラ様がいらっしゃってたので本能には勝てませんでした〜」
とか調子の良い事を言って、その場を去ろうとしたがダメだった。
「芸をやらせていただきます! のぞき部にゃん丸! 光条ち――」
最後までやらせてもらえず、カルキノスと淵にキラリと輝くお星様にされてしまったのでした。
こうして、一同温泉を堪能し、用意されていた旅館の浴衣に着替え、中へと入って行ったのだった。
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