リアクション
第14章
流れて行く
騎凛 セイカ(きりん・せいか)と
朝霧 垂(あさぎり・しづり)は、流れの元へと、遡って歩いていた。それは、歩くというより、泳ぐ感覚に近かったかも知れない。
だけど、水の中というのでもなかった。遡っていくことは、容易ではなかったけど……不思議と心は、つらさがだんだんとれていくような気がした。
さっきからずっと、いちばん始めの部屋の天井に見えたような、蒼の奔流が辺りには見えるだけだった。(それがときどき赤と緑になったりした。)
「私……」
「セイカ。どうしたんだ?」
「いえ。最初はピンクのパジャマを着てたのに、裸になっちゃいました」
「……。俺は、メイド服を着ている。ここは、セイカの無意識の中なんだ。セイカはそれでいいんじゃないのか?
俺は、セイカが裸でも……」垂はちょっと、だけ頬を紅くし目をそらす。「別にかまわないぜ。……」
辿り着いたのは、前にも何処かで見たことのある、祭壇だった。
前は、煙が立ち込めていた筈だけど、今は何もないただの綺麗な石の祭壇で、でも姿形は同じで、あのときの祭壇だと思えた。
蒼い奔流はここでとぐろを巻き、その中心部に祭壇がぽつんと浮かんでいる。
「ここが?」
「終着点のようですね」
「源、か。……これは一体何だ?」
垂は、祭壇のいちばん下に腰かけて、怪獣のぬいぐるみの
ライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)をぽんと隣に置いた。
セイカは、祭壇の上を眺めている。
そこには、頭のもげた巨大な神像があった。
「ふぅ。……着いてみれば、何だか。さっきまでの旅もなかなか心地良いもんだったな」
「ええ。垂と来れてよかったですよ?」
「さて。……」
*
怪獣のぬいぐるみが喋り出す。
「騎凛先生。気分を害しちゃうとは思うけど……こういう状況だから知っておきたいんだ。多分、垂も知りたいはず……なんでアンテロウム副官と契約することになったの?」
「ライゼ!」
止める垂を制して、怪獣は続ける。
「ううん、言わせて垂。
副官は黒羊卿のシンボルだったって言うし、そんな人物がパートナー契約を結ぶには、絶対に何か意味があったと思うんだ……契約を持ち出したのは誰なのか? 騎凛先生? アンテロウム副官? それとも当時の教導団のお偉いさん?」
「私にも……」セイカは、少し苦しそうな表情をした。「……わからないんです……」
贄(ニエ)……贄(ニエ)……
という声が、何処からともなく響いてきた。
セイカは、震えている。
「ああ、そうだ。これは、カナリーさんの夢でもあった筈?」
カナリー・スポルコフ(かなりー・すぽるこふ)は、プロローグで何処かへ流れて行ってしまった。
……ハァァァ! ……ハァァァ! ……デアリマスゾ! ……マリーデアリマスゾ! ……
「ああ、……っ。ノ、ノイズが……。
あらゆるものは、あらゆるものは流れ去っていってしまう……」
「おい、セイカ……!」
*
夢の境界線……
騎凛セイカを救うのは誰だ。
「笑えよ」
久多 隆光(くた・たかみつ)。
「俺も、鍵は、
黒羊 アンテロウム(くろひつじの・あんてろうむ)が握ってると思うんだよな。だって、やはりセイカのパートナーだったんだ……。
色々と事件に巻き込まれつつある俺だけど、最終的には、セイカが救えればいい。俺の背中に旗が見える……? 何て書いてある。゛死゛だと……まぁ、気にしないさ」
久多の足もとに、何かごろごろと転がってきた。
「な、何だ。嫌な感じだな」
……生首だ。
「……。俺の首? まさかな。
……黒い羊の首、か。……どっから」
誰か、来る。
「そ、それ! 返して。私のっ。……はぁ、はぁ」
朝野 未沙(あさの・みさ)だ?
「何でだ? 朝野は、ハルモニアに。俺は、ハルモニアを出て、黒羊郷に向かった筈だよな。ここは、何処だ?」
周囲に見えるのは、蒼い奔流ばかりだった。
「……」
「あそこに、祭壇が見えるでしょ」
「?? 俺には、見えないが」
「あれは、未羅ちゃんが記録した映像に映ってた、黒羊の御神体のある祭壇だよ。
なんか、引っかかるんだよな〜。
あの御神体、まさか、メカ?!」
わくわくした感じで語る朝野未沙。らしい発想である。
「メカ……そんな馬鹿な」
「いや、メカでしょ、絶対。そこで」
朝野は、久多の手から、黒羊の頭を奪い取る。
「あたしが作ってるのがこれ……」
「作ってる?」
メカ・アンテロウム(めか・あんてろうむ)。
「…………」
「最終的にこれを、セイカ先生と契約させるの」
メカアンテローム・・・メカアンテローm・・・ガー ガガ ピーppp....
「ちょっ……それは、何かまずくないか」
「何故?」
「……」
*
蒼や、赤や緑に移り変わる奔流を、パソコン画面の中に見て、キーボードを操作している
カナリー・スポルコフ(かなりー・すぽるこふ)。
「よーしパパ、騎凛ちゃんをポートスキャンしてセキュリティホールをみつけちゃうぞー☆」
(続。)
ご参加頂いた皆様、お待たせ致しました。
【十二の星の華】「ヒラニプラ南部戦記」第1回のリアクション、如何でしたでしょうか。
今回、若干の模様替えを致しました。本当は構成や章立てを大幅に変えてみようと思ったのですが、主にレイアウト的なとこに留めました。
内容・構成・レイアウト共々について、また、皆様のご意見・ご感想をお聞かせ下さい。
今回は、シナリオガイドにも出ていた三軍に攻められるところとなった三日月湖本営〜北の戦線を、゛兵は詭道なり゛前・中・後編として各部に挟むという構成をしてみました。このタイトル゛兵は詭道なり゛は岩城で敵を食い止めた龍雷連隊・黒豹小隊の方々のGA名から使わせて頂きました。ここでの戦いの全体を象徴するタイトルでもあったかと思います。
この第1回で、南部戦記における最も北の方面の戦地であったハルモニア(第4章)での戦いが、ほぼ決着の着いた形となりました。この地における戦いは、実際には前シリーズ「黒羊郷探訪」に始まった長い戦いでした。
おめでとうございます! ヴァレナセレダ(ハルモニアを含む地域一帯)における黒羊軍は片付いたことになります。(ハルモニア城の奪回シーンについては実はリアクションで描かれていないので、敵の総指揮官チェルバラを追撃し討ち果たしたのかは、次回で描かれる可能性はあります。)もちろん、まだ敵・黒羊郷本拠地は健在です。ヒントも出されていますし、次回ガイドも、参考にしてください。
第4章は第一部のトリであり前半の山場であると共に、次の第二部テーマ「戦」につながるようにもなっています。
以下……各章書き終えてのざっとした流れを書いています(書いていないところもあります、個人個人の思いを秘めて動いている章は次回以降に、広がりを見せてくるところかと思います。個別に送りべきヒントについては、今回は何人かの人にはコメント送っています)。
第二部構成の通り、今回は戦闘の割合がかなりを占めました。
東の谷(第6章)は敵の配置等もかなり難しい戦場になっていると思います。次回、一時ここを離れていたジャレイラ・シェルタンがここへ戻ってきます。ジャレイラは、マ・メール・ロアの決戦に行く前に、もちろんこの地での決着を着けていかねばならなかったわけですが……? それは、グランドシナリオ(十二星華SP)の裏、本シナリオの残りで、語られていくことになるでしょう。ジャレイラ・シェルタンの人物像についても、PCとの関わりで徐々に明らかになってきているようですね(第5章)。
水軍は前回の緒戦に続いて、リアクションの通り士気が大変上がっていると感じられました。アクションを読んで、判定、構成としていく流れで、策略やアクションの上手さだけではないと思うのですが、そういった士気の高さのようなものがわき上がってくるというのは、大変不思議なことに思います。これは個人個人ももちろんなのですが、各部隊そのときそのときで士気や調子に違いがある(いい悪いという意味においてでなく)というのは本当に興味深いことに思いますね。これからも、各部隊が変化しつつ浮き沈みありつつ、続いて欲しいなと思います。
オークスバレー(第10章)は前回、非常に面白い状況になったわけですが、今回、相手の手を読みつつ、戦の駆け引きが始まっているという感じで、第二部「戦」の最後にもってきました。
東の谷、オークスバレー、王子(第9章)は、PC同士の戦術や策のやり取りがあるところが、難しくも面白く、ときに緊張感もあり、なところかと思います(判定もそうです。ただ、リアクション上、どうしても敵側の方の行動の方が難易度が高くなっていますことはご了承下さい)。PC対立はもちろん憎み合いじゃなく逆に馴れ合いでもなく、敬意をもって敵として戦うべきものかと思います。判定もかなり難しくなっているところですので、(ここに限らずですが)策略や意図をマスターが取り違えている為に失敗している等と思われる部分は、掲示板等で意図を説明して下さっても構いません。次回以降の参考に致します。
それから随所随所で段々夢が浸食してきていることになるのですが……そこは(マスターにとっても?)お楽しみ(?)にしたいと思います。
第三部については最も語りたいようでいちばん難しいかも知れません。ここは色んな角度で夢と現実がテーマになっている……でしょうか。
色々、ドラマも進行していますね。
最後に(構成では最初の章です)、女王器についてなのですが、最も女王器に近かった薔薇の学舎の黒崎天音さんが、もちろん今回のアクション判定も含め結果、見事入手されるに至りました。おめでとうございました。
その後の経緯については、第1章での黒崎さんの言葉に示唆があり、最終的にはすでに発表されたグランドシナリオ(十二星華SP)のガイドにて記された通りです。
少々調整が合わずに予定通りいけなかった部分につきましては申し訳御座いません。
女王器を巡る夢のシーンにご参加下さった方々、ありがとうございました。相当難しいところではあったと思いますが、やはりそれぞれに独自性の高いアクションをお送り頂けたので、あの夢のシーンが描写しきれたと思います(1‐02。前回のラスト・今回ガイドからの続きのシーンになります)。しかしその後(第13章)も引き続き難しい状況になっているっぽいのですが、リアクションの流れ上のことですので、次回以降、立ち直り(復帰し)ます、筈。
戦闘は、前回もそう書いたのですが、判定のための基準や戦略性をより緻密にしたいと思うのですが、いつも課題・反省点になってしまいます……。
引き続き、個人的な部分をどんどん掘り下げ・突き進むも、至極マイペースでやるのもありです。
ただ南部戦記(シナリオ)が何処へ向かっているのか、あるいはどこへ向かわせるべきなのかは、意識して頂ければと思います。参加者全員で導けるように……
では、皆様の送って下さったアクションに敬意を込め、次回もよろしければお願い致します。
称号お付けしている方もいますので、ご確認ください。今回も、基本的に、情報はリアクションや次回シナリオガイドから読み取って下さい。
招待枠については、各地域が非常に細分化されてきたため、大変送り方が難しい状況となっておりますので、どうかご了承下さい。とくに今回は、細分化された幾つかの先での次回への引きができたため、重要なポジションにあるのだけど一旦お休みの形で招待枠をお送りしない方もあります。と、いうことを予め言っておきます。第2回は、それでいきましょう。……大変、難しいところです。前回もそうだったのですが、ここが空くと……という状況は絶対に出てきてしまうのです。私の現在のシナリオの性質上どうしてもそうなのでしょうか。物語は続いていきますし、こうしてシナリオが続いていく中で、各キャラクターのこれまでの活躍や設定は確実に保存し継続していきますので、気負わずに長い目で見ていきましょう。(それから、これもここで軽く述べますが、今までに登場された方で、キャラの方向性や設定を変えたり・戻したりしたい方は、アクション欄の端でもいいので、記して下さい。とくにたまにキャラがギャグになったり崩壊?しかけたりする場合も私のリアクションではどうしても出てきてしまうのですが、それはあくまでそのときの流れですので(各キャラへの敬意は持って接しているつもりです)、この点もご理解下さい。)
コメント・称号・招待は大概いつも、リアクション執筆直後の状態でやっていることになるので……誤字脱字口調等含め、ミスかと思われる箇所が御座いましたら、ご一報下さい。
では、第2回でまたお会いしましょう。新しい方のご参戦もお待ち致しております。(今唯)
*「今唯ケンタロウBLOG*Out Of Scrap Basket」次回公開予定のお知らせや、ここで書けなかったシナリオエピソード等にも触れたいと思います(今回は書ければ……)。