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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第2回)

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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第2回)
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5-03 水上砦(2)

 シルヴィア・セレーネ・マキャヴェリ(しるう゛ぃあせれーね・まきゃう゛ぇり)ルクレツィア・テレサ・マキャヴェリ(るくれつぃあてれさ・まきゃう゛ぇり)姉妹が戻ってきた。姉妹は、南部諸国に行き数週におよぶ任務を終え、戻ってきたのだ。ローザマリアは、戦いの始め頃にサイモン・アームストロングがシェルダメルダとのやり取りにおいてその存在性を浮かばせた、南に生息する獰猛な水棲動物や、水辺の魔に目を付けた。その後、サイモンは民兵を募りに各地を回ることになったわけだが、ローザマリアは南への任務を姉妹に言い渡したのだった。姉妹は、幾らか使えそうな生き物を従え、帰還した。
 これを利用し、水中戦に特化したゲリラ部隊を編成することを実現させたい。
「総合指揮官はローザマリア殿。貴女の指示に従う所存であります」
 アルチュールら黒豹小隊の戦力も再出撃する。
 姉妹は先行し、東河の水中を進行。ゲリラ部隊もそれに続く。尚、水上砦の水面下では、ナマズ兵との死闘を予想していたが、この方面のナマズ兵団はブトレバとの一戦で全滅。主力は、東の谷の船着点の激戦で死滅しており、とすでに駆逐されていた。
「トロルか。いた……」
 その厄介さは実際に遭遇した黒豹小隊の副官ジャンヌに伝え聞いていたが、姉妹はこのトロルを排除するための作戦を決行する。
 姉妹たちが水中を進む一方、グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)は、魔法の箒で砦に降り立った。彼女はその後……
「おお。パラミム様? こんな夜更けにいかがなされましたか」
 兵が尋ねる。暗がりの中にぼんやりと立っているのは、確かにこの砦に派遣された魔法使いのパラミム……
「新任なので、迷ってたのだ」
「はあ? 食糧庫ですか……こんな夜中に」……恐ろしい。夜な夜な、パラミム殿は食糧庫を漁って夜食を貪り食うているのだ。でも、そんなこと誰にも言えないし……兵は、すでにその身を蝕む妄執(スキル使用(グロリアーナ))にやられていた。
 そして……爆音。
「パラミム殿が、パラミム殿が、ご乱心に! だ、誰か」
 食糧庫から火が出ている。
「どうした?」兵らが駆けつける。
「パラミム殿が、食糧庫に火を付けなすった」「ちゃんと見たのだ!」
 パラミムが来た。「むう……! 火事か。わしに任せよ。な、何をする?!」
 兵はパラミムを捕らえにかかった。グロリアーナは影からその様子をにやりと見届ける。
 時同じくして、水際では、爆発音を合図にシルヴィア、ルクレツィアが何事かと辺りを見回すトロルに襲いかかった。水棲動物らが、トロルを水中へ引きずり込む。溺れるトロルに、一斉に噛み付き、その肉を引きちぎる。
 半数のトロルは水底に沈んだ。
 凄まじい勢いでトロルの鉄球がルクレツィアに迫る。何とか交わし、シルヴィアが彼女を抱え、水に飛び込んだ。ルクレツィアの放った火術は工事区画一帯にを燃え移り始めた。
 黒豹小隊の砲撃も始まっている。