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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第2回)

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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第2回)
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7-02 昴コウジを討て〜偽装作戦/昴。永遠に〜

「はぁ、はぁ。ものども、ちゃんとついて来てるッス?」
「ひゃ、ひゃっはぁ」「なんとか」「かんとかッス(サレンの口癖がうつった)」
 サレンは、教導団の罠や後方からの襲撃に、100程の不良を脱落させながらも、外交使節の滞在するらしい付近にまで、駒を進めた。
 不良どもは、疲労しながらも不良っぷりを発揮し、地元住民に対し恐喝と食糧の現地調達を行った(但し暴力は厳禁)。
「昴コウジはどこや。おしえろやゴルァ」「腹減ったんじゃ飯作れやゴルァ」
 近辺の町村には、パラ実に抵抗を試みるようなものはなかった。
 それどころか、住民らはパラ実に対し最初から妙にへりくだった態度であった。
「酒と食糧はやるから、狼藉はよしてくれ……」
「おっおお。酒もくれんの? サレン隊長〜〜こいつら酒もくれるってゆってるッス!」
「エッ。ほんとッス? や、やあこれは」
 村の代表は、村人らに酒樽をどんどんと運ばせてきた。
「村長。ご苦労ッス。私たちは、悪の手先・昴コウジを討伐にやって来たッスよ」
「す、昴コウジ……?」
「住民さんたちに暴力は振るわないッス。ところで、昴コウジを知らないッス?」
「さ、さあぁ……聞いたこともないな、そんな名は。
 もっと、その……青 野武(せい・やぶ)とか皇甫伽羅(こうほ・きゃら)とか、同じ教導団ならそういう輩の方が、大きな悪として名が通っておろうはずぞ。ごほごほ」
「いや、昴コウジをなんとしても討ち取るのが、私たちの役目ッス。
 村長。是非とも、協力お願いしたいッス!」
「あ、ああ。げほんげふん」
 村長の髭が外れかけた。
「さあ。ではものども。今夜はここで、存分に酒を喰らって休むッス!」
「ヒャッハー!」
 ……
 パラ実が酔いつぶれると夜、その村のどこからともなく、教導団の兵がわいて出てパラ実を取り囲み一網打尽にかかった。
 村長も出てきて、髭をぺりっと破くと……昴 コウジ(すばる・こうじ)が現れた。村人の衣装をばっと脱ぎ去り、軍服に早がわりする。
「かかれぃ! ふふ、ふ。
 一匹も逃すな」
 ライラプス・オライオン(らいらぷす・おらいおん)は必死で逃げようとするパラ実の退路を遮断にかかる。
「しかしこの兵たち、心なしか主に似ているような……」
「さあ、突撃であります」「戦の華であります」「フンガーであります」
 うるさーい。(棒読み)
「はっ」
 そのとき昴は悪寒がした。
「く、よくも罠に嵌めてくれたッスね。宿敵・昴コウジ。
 このサレン・シルフィーユ(されん・しるふぃーゆ)が討ち取るッス。地獄へ道連れにしてやるッス……えぇい、正義の鉄槌、食らうがいいッス!」
「アアっ。きゃーん」
 ひゅーーーん。(星)
「……主が討たれたか。しかし、兵は動揺しとらん。
 このまま一気に殲滅せーい!」
 ノリさんこと平 教経(たいらの・のりつね)が士気を上げる。彼の隣には……「殿下、いや、王子。今こそ」
「うん……!」
 王子が、指揮を執る。南部の兵が動く。
「立派や。しっかり、護衛仕るで!」
 死に物狂いで襲い来る血みどろのパラ実、流れ鉄球などから、王子をしっかりと守るノリさん。王子も憤然と戦った。
 戦局全体としては、酒に酔わされ奇襲を受けたパラ実がここでは圧倒的に敗北することとなった。教導団側は、指揮官の昴コウジが敵将サレンに討ち取られた。
「ライラ殿? そっちは」
「皆、捕らえました」
 捕縛した不良どもを、冷たく見つめるライラプス。
 命乞いは……いやしくも賊ならば、そんな言葉は聞きなれているかもしれませんね。と。
「えっ」「それじゃあ」「ひゃっはーいやだ死にたくねぇ」
 きゃー。いやー。騒ぎ立てる不良ども。
「或いは、この方の慈悲があるかもしれませんが」
 ライラプス、同じく捕虜を睨みつけるノリさんの後ろから、王子が来る。
「……う、うん。
 パラ実は……逃がす」
「エッ。逃がす……んかい。そ、そりゃ」
 抱き合い喜ぶ不良、村を出ると「覚えとれよ、ひゃっはー!! あとでぶっ殺す!」
 パラ実勢は、サレンに率いられ引き揚げていった。
「寛大なご慈悲やで」
 わー。村人たちも王子を称えた。
「あの……」
「ん? 誰や。南部の諸侯か?」
「い、いえ、その……蒼空学園の影野 陽太(かげの・ようた)です」
「蒼学? なんでや。パラ実に囚われとったんか?」
「え、ええ。そのようなもので……一緒に、戦います。戦いに、来たんです! 第四師団に義勇兵として、自分の意志で……!」
「そうか。心強いな」

 さて昴コウジは、南部の入口にある村ひとつごと借り受け協力を要請したというわけであった。村まるごと罠とする。見事な策であった。
「主……」「ああ。主……」
 遠い星空から、昴コウジが優しく皆に微笑みかけている。
「ライラさん。ノリさん。昴コウジはお星になったの?」
「ええ。そうです」
「そうなの……」
「殿下。しかしよおやったで! 立派でしたぞ。
 けどな、戦いはまだこれからや。
 殿下、いや王子。今、オークスバレーには、さっきのような不良連中……パラ実が占拠しており、我々ノイエ・シュテルンの香取翔子が、それを撃破せんと、奮闘しとる」
「かとり、さん……」
「ええ、このまま勢いに乗じ、オークスバレーに進軍しパラ実を殲滅しましょう」ライラプスが言う。
 オークスバレーを取り戻せば、断たれていた補給線は回復。士気も上がり、黒羊軍との決着も……。「南部が平定されれば、それをあなたがおさめることになるのです」
 ノリさんも王子をそっと見やる。……平らかになった南部の都で、静かに暮らせるようにしたるさかい!
「うん……行こう。オークスバレーへ」