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リアクション
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実況は少し休んで、客席の方へと目を向けてみよう。
湖ではまだまだ戦いが続いており、観客席からは熱い声援が送られている。
「フレー! フレー! ルイさーん!」
少し前のルイ達の戦いに声援を送っているのはアレックス・キャッツアイ(あれっくす・きゃっつあい)だ。
メガホンを持ち気合い十分だ。
「敬一さんも負けるなっス!」
どうやら、東西関係なく、気になった選手の応援をしているようだ。
「フレー……っとと……あれ? 目が回るっス……」
この暑い中、声の限り叫んでいた為、熱中症になってしまったらしい。
「大丈夫か?」
濡らしたタオルをアレックスの頭に乗せてやり、声を掛けたのは橘 恭司(たちばな・きょうじ)だった。
「すまないっス……」
「気にするな。こんなに暑いんだ、そういう事もあるさ」
アレックスはタオルを広げて、頭と顔を覆う。
「すまない、スポーツドリンクを1本」
丁度、側に来た売り子空京稲荷 狐樹廊(くうきょういなり・こじゅろう)に言うと、すぐに手渡してくれた。
「飲むと良い」
「あ……いくらっスか?」
アレックスの言葉に恭司は気にするなと、アレックスの頭に手を置いて、ペットボトルを無理矢理手渡した。
「あの方に任せておけば大丈夫そうですね」
アレックスと恭司の側を離れた狐樹廊はアレックスを見て、そう呟いた。
アレックスとは同じパートナーの元にいるので、知らないわけがないのだ。
狐樹廊は声を出さなかったし、アレックスは目もタオルで覆っていた為、気が付かなかった。
しばらく、辺りを見回すと、ある一点で狐樹廊の視線が止まった。
集中して応援している人とは明らかに違う動き。
応援している人の後ろに立つとキョロキョロと辺りをチェックしている。
狐樹廊はペットボトルのふたを開け、手に持ち、そっと背後に回ると、怪しい動きをしていた男の頭にぶっかけた。
「つめてーな! 何すんだ!!」
「申し訳ございません、揺れんばかりの歓声に足がもつれてしまいました」
男は狐樹廊を鋭い目つきで睨んだ後、客席とは違う方向へと歩いて行った。
行き先を確認した後、狐樹廊は携帯を取り出し、電話で男の行き先を告げたのだった。
丁度、反対側の観客席ではシルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)が飲み物を手にうろうろと歩いていた。
「ん〜……平和ねぇ」
そう言った矢先、シルフィスティの動きが止まった。
女性が応援するでもなく、競技を見るでもなく、歩きまわっているのだ。
シルフィスティはその女性に近づき、かなり近くで睨みつけた。
「な、何よっ!」
「えっと、知り合いかな〜と思ったんですけどよく見たら違いました。ごめんなさいっ」
「そ、そう……気をつけなさいよね。勘違いだなんて良い迷惑だわ!」
「ごめんなさい」
女性はシルフィスティにそれだけ言うと、歩きだした。
それでもシルフィスティはじっと見つめる。
その視線を感じてか、女性はしばらく後ろにいるシルフィスティの方を気にしていた。
女性が視界から消えると、シルフィスティは後を付け、簡易トイレに入っていったのを確認した。
シルフィスティは携帯を取り出すと電話でその様子を伝えたのだった。
狐樹廊から知らされた男の居場所へと着いたのはニセカンナに扮したリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)だった。
雛壇になっている観客席の下は空洞になっていて、その下で何かごそごそとやっている。
「はい、そこまで」
声を掛けられた男は体をビクッとふるわせた。
「な、なんのことだ?」
明らかに動揺しているのが見える。
「今ならあまり傷め付けずに済ませてあげるけど……自分から出頭する? それとも……もう2度と出来ないように傷め付けられたい?」
リカインは口も目も笑っている。
「くっ……」
男は恐怖を感じたのか、背中を向け走り出した。
「そんなに傷め付けられたかったのね」
リカインは腕をつかむと、後ろに捻りあげた。
「いってーなっ! 何しやがる! 俺が一体、何したって言うんだよ!」
「これは何かしら?」
リカインが男のズボンのポケットに手を突っ込むと、中から取り出したのは幾つもの財布だった。
明らかにスリだ。
「それは俺のじゃねー! 勝手にポケットの中に入ったんだろ!? 俺がやったっていう証拠がどこにあるんだよ!? ああーん? 暴力で訴えるぞ、このクソアマ!」
リカインはこの言葉を聞き、笑顔で捻りあげている手の力を強めた。
そのまま、腕から嫌な音がするまで力を入れ続けたのだった。
男が悶え、苦しみ、動けなくなると、近くの警備員に引き渡した。
「あとは、あっちね」
リカインは、そう言うと、シルフィスティから連絡をもらった方へと向かっていったのだった。
3人は、競技が終わるまで、スリや置き引き犯を捕まえるだけになった。
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