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第1回魔法勝負大会

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第1回魔法勝負大会

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「第十六試合、エイム・ブラッドベリー(えいむ・ぶらっどべりー)選手対、レイナ・ミルトリア(れいな・みるとりあ)選手です」
「おっ、レイナも出てくるのか。とりあえず頑張れよー」
 見知った姿を見つけて、椎堂紗月が声援を送る。
「魔石の準備よし……魔法陣も準備できてますし……術式固定もすでに完了済み……後は発動詠唱だけです。さて、始めましょうか」(V)
 自分の周囲に魔石を浮かせて魔法陣を敷きながら、レイナ・ミルトリアが言った。彼女の理論では、この魔石がブースターとなって魔力の消費を抑えるはずなのだが、魔法陣の生成と魔石の状態維持に魔力を使ってしまっているので、最終的にはプラスマイナスゼロだということにはまだ考えはいたっていないらしい。
「力の円環、豊穣の環よ、我が意と共に廻り回りて、仇なすものを振り払いし魔道の槍の操者となれ! 秘術エレメント・サーキュラー!」
 呪文と共に、青い石から矢のように青白い冷気が迸った。
「正面からですわ!」
 エイム・ブラッドベリーの方は、攻撃方向を口走りながら火球を放った。その背後で、冷気の塊がバリアにあたって氷を飛び散らせる。
「あ、危ないですの」
 驚いたように後ろを振り返りながら、エイム・ブラッドベリーが叫んだ。彼女の放った火球は、レイナ・ミルトリアの正面のバリアであっけなく弾かれてしまっている。
「聖霊さん……少々お力を……」
 魔力を補給したレイナ・ミルトリアが、再び攻撃を放つ。
「力の円環、豊穣の環よ、我が意と共に廻り回りて、仇なすものを振り払いし魔道の槍の操者となれ! 秘術エレメント・サーキュラー!」
 レイナ・ミルトリアの周囲にある黄色い魔石から、今度は雷光が矢のように放たれた。
「今度は下からですわ」
 凄く分かりやすい攻撃で、エイム・ブラッドベリーが火術で応戦する。
 エイム・ブラッドベリーの左側で雷光が弾けるのと同時に、下から突きあげるようにあたった火球がレイナ・ミルトリアの魔法陣を崩して消し去った。
「サービスシーンは他の方にお願いします……」
 落ちかけたレイナ・ミルトリアが、武舞台の横に待機させておいた光る箒をつかんで身を支えた。そのままクルリと身を翻してまたがろうとする。
 その箒の先を、マジックスライムの偽足がクルンとつかんだ。
「えっ?」
 そのまま、箒ごとレイナ・ミルトリアがスライムの中へと引きずり込まれる。
「はうっ。少し、休みます……」(V)
 あっけなくレイナ・ミルトリアがすっぽんぽんにされてしまった。
「はははは、久々に私の出番です、そおれえ」
 クロセル・ラインツァートが、すかさず毛布を投げ入れる。
「勝者、エイム・ブラッドベリー選手!」
 
    ★    ★    ★
 
「第十七試合、秋月 葵(あきづき・あおい)選手対、鬼崎 朔(きざき・さく)選手です」
「いくよ! マカロンちゃん」
「ちー」
 マカロンに軽くキスをすると、秋月葵が元気に走りだした。
「変身!」
 元気いっぱいのかけ声と共に、一歩ごとに着ている服が光となって消えていく。光輝くレオタード姿になると、秋月葵が大きくジャンプした。下でスライムが蠢く空中で、伸身の後転をする。周囲を光精が飛び交い、集まってくる輝きの中、胸と腰の所で光が弾けた。白とブルーのミニスカートと、マイクロベストが秋月葵の素肌をつつむ。流れるように左右に広がった髪を、青いリボンがしゅるんと結んでいった。
 ストンと、秋月葵が華麗に武舞台の上に着地した。
「颯爽登場! 愛と正義の突撃魔法少女リリカルあおい☆」
 タンと武舞台を靴で打ち鳴らして、秋月葵がポーズと共に名乗りをあげた。
「おっ、今度は朔か、せわしないな、とにかく頑張れー」
「うん、頑張る!」
 椎堂紗月に声援を送られて、鬼崎朔がニッコリと答えた。
 武舞台に立つ鬼崎朔の周囲では、何かが飛び回っているようだった。棒状の物だが、あまりに早いのではっきりとした姿がよく分からない。多分、スカイフィッシュだろう。
「我、復讐の女神と契約を交わすものなり。侮蔑と嘲笑と嘆きを耐え忍び、今こそ我にその力を……寄こせ! アンドラス!」
 ギャザリングヘクスの秘薬を飲み干した鬼崎朔が、禁じられた言葉を口にした。これで準備は万端である。
「我が名において命ずる! 怨敵を燃やし打ち砕け! 邪なる氷の炎柱! アイスファイア!」
 鬼崎朔の凍てつく炎の呪文で、秋月葵の右側に忽然と現れた燃えさかる氷柱が、まるで破城槌のようにドンとぶちあたる。だが、バリアに阻まれ、ギリシャ建築のようなレリーフの施されていた氷柱が粉々に砕けて炎と共に周囲に飛び散った。
「いくよー。リリカルまじかる♪ シャイニング・フラッシュ!」
 マジカルステッキをクルリと手の中で一回転させると、秋月葵が鬼崎朔にむけた。どこからともなく、頭上から降り注ぐ光が鬼崎朔を守るバリアの姿を照らしだした。
「眩しいじゃないか」
 ちょっと怒ったように、鬼崎朔が自分の周囲に闇術で暗闇を発生させた。それを、スカイフィッシュたちがかき回して周囲へと広げる。
「凍てつく大地、漆黒の闇、汝の行きつく所は其の地獄なり。我が慈悲なる冷気にだかれて永久の眠りにつくがいい。凍えて眠れ! ニヴルヘイム!」
 自身にまとわりつかせた闇を突き抜けて、鬼崎朔の氷術が迸った。大きくうねった冷気が、秋月葵の背後から襲いかかり弾け飛んだ。
 秋月葵がマジカルステッキを突き出す。まっすぐにのびたビームが、鬼崎朔の前面で弾け、澱んでいた闇を打ち払った。
「これならどうだ。舞え! 月光蝶!! 復讐の刃と共に!」(V)
 鬼崎朔が、腕をぐいと突き出して掌を広げた。銀月色の羽根を広げた蝶の姿をした光が生まれ、ふわふわと秋月葵の方へ飛んでいく。
「リリカルまじかる♪ シャイニング・フラッシュ!」
 秋月葵が、ぐいんと時計回りにビームを曲げて、鬼崎朔の左側に命中させるもバリアに弾かれる。
 一方、正面から舞い飛んだ月光蝶が秋月葵に命中して光となって弾け飛んだ。まぶしさにのけぞった秋月葵が武舞台から転落する。
「てへ、負けちゃった。でも、裸になってもすぐに変身すれば……はう」
 服が脱げても素早く変身することでで事なきを得ようとした秋月葵であったが、もちろんそんな暇などなく、あっと言う間に気を失ってスライムに弄ばれていった。
「勝者、鬼崎朔選手!」