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すいーと☆ぱっしょん

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すいーと☆ぱっしょん

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 6―すいーと☆ぱっしょん

 ベアトリーチェから事情を聞いていた美羽は、暫くうろついてキャンディ化している人々を探した。そして始めに見つけたのが、ジガンたちである。
「エメト!まだジガンを食べようと――」
「ますたーっ!早クたべテあげるカらね!」
 美羽は暫くその光景を唖然としながら見つめているが、恐る恐るノウェルへと声をかけた。
「あ、あのぅ…」
「はい?」
「…!(顔が怖い!)こ、これ…その。キャンディになった人に飲ませると直るんで…」
「あぁ、ありがとう、お嬢さん(ニコ)」
「!?そ、それでは、ししし失礼します!」
「何ともシャイなお嬢さんな事だ。ってこら、エメト!舐めるんじゃない!」
 ノウェルは小分けにしてもらったエリクシル・ソーマをポケットにしまうと、近くにあったポールにエメトを縛り付けた。
「うわぁァ!のぅえるガえめととイじめるヨォォッォ」
「いじめてなどいないでしょう!そこでしばらくじっとしていなさい」
 更にエメトが泣き叫ぶが、ノウェルはエメトを残し、ジガンの元へと向かった。
「さ、ジガン。これで元に戻れるそうですよ」
 言いながらノウェルがジガンの口へとエリクシル・ソーマを流し込むと、見る見る内にジガンが元に戻って行く。
「ん…んぉ?なんだ?元戻ったのか。っておい、エメトはどこだ?」
 随分と不機嫌そうなジガンが、ノウェルに尋ねる。彼女は特に何と言う様子もなく、少し離れた場所でがんじがらめになってるエメトを指差した。
「おいてめぇ!エメトぉ!何してくれんだよ、このやろう!っと」
 言いながら、エメトの方へ向かおうとしていたジガンの足が止まる。
 それを不思議そうに見ていたノウェルの方を向いたジガンが、ぽつりと呟いた。
「サンキューな、ノウェル」
「な、ああ」
 少し肩透かしをされた様な、どこかぼんやりした様な、そんな気持ちを味わったノウェル。そしてその横では――
「くぅおらぁ!エメトぉ!」
「あはははハははぁぁぁぁァ」
「お仕置きだ!」
 ジガンによる、エメトへのお仕置き『お知りぺんぺん百回叩き』の無慈悲な音と、その都度エメトが発する奇怪な奇声が響き渡っている。


 美羽から小分けにされたエリクシル・ソーマを受け取ったエクスが向かっているのは、セイニィの部屋である。そこでは由唯と雲母による、七日の『夢のぼん・きゅっ・ぼん計画』が着々と進められていた。
「どうだ、この造形美は!」
「お前、センス悪いよ」
「なんだと!?由唯にはわかんないのかよ、この美しさが!」
「知るか」
「すまんが――…」
「うん?」
 何だか不思議なやりとりをしているところで、エクスが二人の会話に割って入った。当然、真剣な話の最中だけあって、若干二人とも不機嫌だったのは言うまでもない。
「なんだ、エクスちゃんじゃん」
「でも、なんだって此処に?」
「そのままと言う訳にもいかんだろ。わらわが届けに来たのは、彼の戦いで勝ち取ったこのエリクシル・ソーマじゃ。此処に置いていくぞ」
 とだけ言って、エクスはその場を去って行った。
「もうそろそろいいんじゃないのかな」
「ま、まぁ待てよ。まだ他にも凝れるところが…」
「私の何処を、他に凝れるんです?」
 突然、雲母の頭上から聞きなれた声が聞こえた。どうやら彼が話している間に、由唯がエリクシル・ソーマを飲ませて元に戻していたらしい。
「い、いや…その」
「ふん。まぁでも、この位で充分ですよ、ありがとうございます」
 礼だけ述べて、七日はその場をあとにした。
「そんなに俺、下手だったかな」
「んー、ああは言っても結構嬉しそうだったし、結果成功なんじゃない。兎に角、お疲れ」
「お、おう」
 二人はそこで、自分たちのいる場所を理解した。
「そうだ、片付けしないと!セイニィが帰ってくる前に綺麗にしないと…」
「セイちゃん、煩そうだもんなぁ」
 後日、二人曰く撤収作業の方が大変だった、とか。


 エクス同様、エリクシル・ソーマを渡された睡蓮がやって来たのは、大助たちのトコロだった。これこそまさに偶然に近い形であったがしかし、大慌てしている二人を見つけ、そちらを見ればキャンディ化している人影を発見した睡蓮は、急いでそちらに向かった。
「大丈夫ですか?これで一応元に戻ることが出来るはずなんですけど…」
 睡蓮が渡した小分けされたエリクシル・ソーマを見て、思わずグリムゲーテが言った。
「あら綺麗。これは私が飲めばいいのね?」
「いや、違いますよ。そこでキャンディになってる人に飲ませてあげればいいんです」
 睡蓮の突っ込みに対し、今度はルシオンが声を発した。
「違うっス!まだ大さんにお迎えが来るのは早すぎなんスってばぁ!うわぁん」
 エリクシル・ソーマを持っている睡蓮の袖をぶんぶん振り回しながら、泣き喚いて暴れだす。
「やめなさいよルシオン、この人が持ってる綺麗な飲み物は私が飲むのよ」
「うわぁーん!」
 二人の状態を見て、これ以上此処にいるのは危険だと判断した睡蓮は、慌てて大助の口にエリクシル・ソーマを流し込んだ。
 徐々に元へと戻って行く大助を目の当たりにし、暴れていた二人がようやくまじまじとその様子を見つめる。暫くすると大助は完全に飴から人間へと戻った。が、溜息をつく。
「どうも、お騒がせしました。この二人も、大分あなたを困らせちゃったみたいで…」
「大丈夫です…うん、ちょっとビックリしちゃっただけだから」
 睡蓮はそう言うと、三人のいる場所から去って行った。
「そういえば、あの子誰?」
「さぁ?知らないっスねぇ」
 不思議そうな顔をしながらも、睡蓮の後姿を見送る三人。この後は無事、帰って大助がしっかりと食事を作ったそうな。