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至高のカキ氷が食べたい!

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至高のカキ氷が食べたい!
至高のカキ氷が食べたい! 至高のカキ氷が食べたい! 至高のカキ氷が食べたい!

リアクション

「じゃあ、次は俺から話そうかな?」
 澄んだ声とは裏腹に男の話し方をする紅護理依(こうご・りい)
「ふむ、どんな話を聞かせてくれるのかな?」
「いや、俺は元々ここの世界の人じゃないんだけどね」
 そう理依は前置きをした。
「この世界の人ではない、とな」
 氷精はどういうことだろうかと言った様子で聞き返した。
「うん、なんていうのかな……ここと似た別の世界があって俺はそこに住んでたんだ」
「似た世界、か。また面妖なこともあるものだな」
 氷精が感心したように呟く。
「俺のいた世界は、パラミタ自体がまず存在しないのが一番大きな違いかなぁ。それに魔法も無ければ魔物もいないし、獣人みたいな色んな種族もいない」
「つまり、人間と動物と、植物。大別してそれくらいしか存在しないと」
 理依の言葉の意味を汲み取った氷精は眉根を寄せどういう世界なのだろうかと想像力を働かせだした。
「そうだね。それに機械類はあるけれど、イコンみたいに大きなものは存在しなかったよ」
 その理依の口調に、氷精だけではなく一緒に来ている人もへぇと関心の声を漏らしている。
「でも、日本やアメリカみたいな国は俺のいた世界にも全く同じ国があるんだよ。こっちに来てから世界地図とか見てみたけれど全く同じでびっくりしたねぇ」
 自分で言いながらも、理依はうんうんと頷いている。
「だから俺はパラレルワールドか何かと思ってるんだ。平行世界っていうのかな。そういう設定の話ってよくあるじゃん? ひとつはそれがあった世界で、もうひとつはそれがなかった世界」
「ふむ、そういうことも起こりうるのか」
「俺にもよくわからない! なんせ、こっちに来てからまだ日が浅いしね!」
 腕を組みつつ理依はきっぱりと断言した。
 それに話を聞いてる他の人もガクッと力が抜ける。効果音にガクッと大文字で入っていてもおかしくないだろう。
「二つ聞きたい」
 氷精は気を取り直して尋ねる。
「俺が答えられる範囲ならいいよ」
「大丈夫だ。一つはどうやってこっちの世界に来たのか。もう一つはこの世界に来て不安だったりしないのか?」
「はは、そんなの俺が知りたいよ! 気づいたらすでにこの世界にいたし。ホント、ゲームしてたら、いきなり画面がピカーって光って気づいたらこの世界にいたんだよ」
 おかしいだろ? と理依は逆に氷精に問い返していた。
「ゲーム……娯楽遊戯だろうか?」
 氷精はどうやら最近一般的に言われるようなゲームを知らないようだった。
「うーん、なんて説明すればいいかなぁ……」
 理依が悩んでいると、後ろから助け舟が出される。
「こういうのよ」
 神矢美悠(かみや・みゆう)が若干ぼやけてはいるが、ゲーム機の映像をソートグラフィーを用い携帯電話の上に映し出した。
「そうそう、それ! やっぱりこっちの世界にもあるんだー」
 映像を指差しながら理依は嬉しそうにそう言った。
「ほう……」
 まじまじと映し出される映像を氷精は見る。
「ありがと! えっと……」
 喜びながら理依が美悠を見る。
「神矢美悠よ。今日は画像があれば、氷精も理解しやすいし、君たちも説明しやすいだろうと思ってついてきたの」
「ツァンダ市内に協力者いることをいわないとダメだぜ」
 美悠のパートナーである、ケーニッヒ・ファウスト(けーにっひ・ふぁうすと)がそう補足した。
「えっとそれをテレビに繋いで、キャラクターを動かすんだけどって……詳しく説明しても動いてるの見せないとだめだよなぁ……」
 腕を組み目を閉じ、どう説明しようかと理依は悩む。
「じゃあ、ちょっと待って」
 美悠はそう言って携帯を操作してアプリを立ち上げた。
「はい。携帯にプリインストールされてるゲームだけど説明するのには使えるでしょ?」
 にこりと、理依に美悠は携帯を差し出した。
「おお、ありがとう!」
 そして、理依は氷精の隣に行くと、携帯の画面を二人で見た。
「これのもっと大きい感じなんだけど、こういうことして遊んでたら、気づいたらこっちにきたって感じかなー」
 曖昧な言い方だが、理依自身が理解が追いついていないため仕方ないことだろう。
「不可思議なことも起こりうるものだな」
 氷精は隣立つ理依を見た。
 今氷精が見ている理依るはここに来ている大半の人間と同じように見えている。
「ホントだよー……おまけにさ、元の世界じゃ俺って男なんだけど、こっちにきたら女の子の体になってるし……生活もほんっとに大変でさー!」
 理依は大げさに言ってみせる。
「元は男とな……」
 驚いたように氷精がぺたぺたと理依の顔を触る。
「む、信じてないかな? いや無理ないかも知れないけど」
「まあ、ほかがどうあれ、そういった事象があり得ると言うことはよくわかったよ」
 氷精は理依の頬を、頭を、肩から腕へと手を滑らせ、理依の手を握る。そして、理依の瞳を見つめ微笑んだ。
「大変だろうが君は今ここにいる、それだけでいいんじゃないかね?」
「そうだね。確かにそう思うよ。こっちにきて、ちょっとは得したなぁって思ったことも……」
 ザッと一斉に皆が一歩引き下がるような靴音が響いた。
 うわーとかいう声も聞こえた気がする。
「ちょ! 引くなよ! 距離とらないでよ! 俺が痛い子見たいじゃん! 傷つくだろ! やめろよそういうの!」
 顔を真っ赤にして、腕を振りながら全力で否定する理依だった。