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【空京万博】海の家ライフ

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第三章:渚にまつわるエトセトラ
 セルシウス海水浴場で働くアルバイトは海の家の店員だけではない。
 海辺では、ゴミを拾ったりしていた掃除屋と呼ばれる者達がいた。

 海の家から少し離れた場所にいた、ビキニの水着を着たルーシェリア・クレセント(るーしぇりあ・くれせんと)もその一人である。
 一見するとただの海水浴客にも見える彼女は、つい先刻まで漂流ゴミはもちろん、嫌がる人をしつこくナンパし続けるような迷惑な人の掃除も欠かさず行っていた。
 浜辺に落ちたゴミはうっかりすると足を傷つけてしまう凶器であるし、恐らく夜中に騒いだ名残りであろう花火や空き缶といったものも、折角の海の風情を奪ってしまう迷惑なものである。
 先刻までは、それの除去がルーシェリアの仕事であった。先刻までは……である。
「はーい。お客様ー? お下がり下さいー。危ないですよぉ?」
 のんびりとした口調とは裏腹に、金のポニーテールが忙しなく上下左右に揺れる。
 手に持った深緑の槍が風や波を切り裂いて振りかざされる。
 手応えはあった……が。
「蛸とか烏賊ならば足の数は数えられますがぁ……一体何本あるんですかぁ? クラゲさん? あ、そもそも足じゃないのかぁ」
 半透明な触手がルーシェリア目掛けて襲いかかる。
 その先端には、獲物を麻痺させる毒があることは、彼女が脇に抱えた幼い少女を見ればわかる。命に関わるものではないが、それでも一刻も早く病院に連れて行ってあげたいと、ルーシェリアは海よりも冷えた頭で考える。
 そう、ルーシェリアは、海に突如現れた巨大クラゲに刺された少女を助けるため海に飛び込み、果敢にこれに挑んでいる真っ最中であった。
「ひゃ!?」
 別の細長い触手がルーシェリアの足に絡みつき、少女を抱えた彼女を軽々と持ち上げる。
 ゼラチン質のヌルリとした感触がルーシェリアの全身を駆け巡る。
「(せめてぇ、この子だけでも……)」
 相手は海洋生物。海に引きずり込まれれば、恐らく勝ち目はない。
「ルーシェリアさん!! こっちよ!!」
 ルーシェリアの瞳が駆けつけた同じ掃除屋の千種みすみ(ちだね・みすみ)を捉える。
「みすみさんー、お願いしますぅーー!!」
 少女をみすみに向かって投げるルーシェリア。
 落ちてくる少女を受け止めようとしたみすみだが、落下の速度も相まってか、みすみ一人で受けきれるものではない。
―――ドンッ!!
「みすみ、あたしより目立とうなんて半世紀早いのよッ!!」
「エリヌースさん!?」
 みすみの代わりに少女を受け止めたのは、エリヌース・ティーシポネー(えりぬーす・てぃーしぽねー)……の守護者たる救世主の種もみ戦隊タネモミジャーの面々であった。
「ありがとう……エリヌース……」
「ふふーん! 感謝なんかよしてよね! あんたがいないとゴミ拾い勝負出来ないじゃん!!」
「じゃなくて、タネモミジャーさん達」
「おいッ!!!!」
 エリヌースがみすみに突っ込みを入れている間に、イロハ・トリフォリウム(いろは・とりふぉりうむ)が暗黒の弓で放ったサイドワインダーが左右から、ルーシェリアの足を捕まえていた巨大クラゲの触手を断ち切る。
「あなた達、私から離れないで下さいね」
 弓を射た色はがみすみとエリヌースに微笑む。
 クラゲの触手を飛び跳ねて浜辺に戻ったルーシェリアが三人に例を言う。
「すいませんー、一人じゃ無理そうですぅ」
「あたしが来たからにはもう安全よ! ルーシェリア!!」
 エリヌースがルーシェリアに声をかけた後、みすみに振り向く。
「さぁ、みすみ!! 敵に不足はないわね!! 第二ラウンドの勝負始めるわよ!!」
「第二ぃーラウンドぉー?」
 ルーシェリアが小首を傾げる。
「そうよ! あたしとみすみは第一ラウンドでゴミ拾い勝負をしていたの! ま、当然あたしの溢れる指導力ですぐさま片付いたんだけど」
 みすみはルーシェリアにゴミ拾い勝負の事を話し始める。