百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

【獣人の村】【空京万博】ドラゴンレース

リアクション公開中!

【獣人の村】【空京万博】ドラゴンレース
【獣人の村】【空京万博】ドラゴンレース 【獣人の村】【空京万博】ドラゴンレース

リアクション

 
 
 
 ■ コース紹介 ■ 波羅蜜多大農場 〜 【イルミンスール武術獣人村共同道場】
 
 
 
 上空より
 
 
 
「はい、続いて紹介していくわよ。レース2つ目の角を曲がると、『波羅蜜多大農場』があるわ。うどんの無料配布やリサイタルが行われているそうよ。次の『よくしゅ百穴』は上からだと少し分かりにくいかしら。大小様々な洞穴でコウモリやコケ類の繁殖が行われているわ。その向こうは『キポリの森』。樹木や岩など自然のままにおいてあるもので、彫刻が作られているの。大きなものはここでしか見られないけれど、獣人のお年寄りが作った小さなものがお土産として売られているわ」
 大農場やキポリの森周辺には、そこで働く人たちの家が建っているのも見える。

「『バトルビースト』はイコンと戦える獣を鍛える場所。『ガレージ・アガルタ』は陸運向けの多目的施設で、今日はトラック航空ショウが開催されてるそうよ。その次に見えてきたのが『荷馬車運輸組合』。荷車を馬に牽かせての運輸だけど、そのための馬の飼育や荷車の製造等も行われているわ。それから『牙の広場』。ここは多目的野外ホールで野球等のスポーツや武術大会、コンサートも開けるようになっている場所よ

「『村営製材所』はその名の通り、森で伐採した木材を加工する施設。今日のこのレースの為に、建物の補強や道路に柵を設置してくれたのはこの施設よ」【イルミンスール武術獣人村共同道場】は武術、体術、魔法等の訓練や勉強を目的とした道場よ。共同道場になっているから、様々な流派の武術を習うことが出来るの」
 
 
 
 波羅蜜多大農場
 
 
 
「取材ですとな? 獣人うどんな知名度アップにつながるとなれば、受けぬ道理はありませぬな」
 アイン・ペンブローク(あいん・ぺんぶろーく)はしたりと取材に来たアレクスに頷くと、大農場を全身で指し示した。
「ここはわしが作った、自称小麦粉と普通の小麦の二毛作の農場でしてな、村の食料の安定確保のために作ったでありますぞ。今は、小麦粉や自称小麦粉を使った獣人の村名物を考えておりましてな。それで試作したのがこの『獣人うどん』なのですぞ。村の住人の主食にして良し、ドラゴンにも食べさせてみるのも良いかもしれませんな」
「ドラゴンがうどんをすするのにゃう?」
「案外好んで食べるかも知れませんぞ。レースの参加者や見学者にもうどんを是非試食してもらいたいですな。ピットインしてうどんを食べれば体力回復。優勝間違いなしですぞ」
 小麦粉はそのままでも販売できるが、加工してうどんにすれば加工賃以上に価格をあげられる。やがてはこの獣人うどんを食べたいが為に、この村を訪れる人が現れ、一大グルメスポットに! とアインの夢は広がる。
「でもお高いんにゃう?」
「いえいえ、今日のところはお代はいただきません。これで獣人うどんの知名度が上がれば、観光客も増えてウハウハですからな、ぐふふふふ」
「本音がだだもれにゃう〜。でもうどんは一度食べてみると良いと思うのにゃう。以上、波羅蜜多大農場からお伝えしましたにゃう」
 
 
 そう、波羅蜜多大農場での取材を締めくくり、次の施設を目指していたアレクスは、人だかりに気づいて立ち止まった。
「ここには何があるにゃう?」
 ひょいと覗いたその中心にいたのは、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)だった。
 今日はたまたま、万博未来パビリオンのコンパニオンが休みだからと2人でドラゴンレース見物に繰り出して来たのだけれど、レース開始を待つ間、村の施設を見て回ったりぶらぶら歩いているうちに、気づけばこんな羽目に陥っていた。
 どうやら、メタリックブルーのトライアングルビキニに上着を羽織っただけのセレンフィリティと、ホルターネックタイプのメタリックレオタードに黒い外衣を羽織ったセレアナの姿は、観光客の目にレースクイーンか何かのように映ったらしい。
 これではおちおち、うどんも味わっていられないと大農場を出てきたのだけれど、カメラのシャッター音もフラッシュの光も増すばかり。
「あたしたち、ただの見物人なんだけど……?」
 見物されてる? とセレンフィリティが言えば、移動してもついてくる視線に閉口しながらセレアナも軽く肩をすくめた。
「困ったわね。いちいちレースクイーンじゃないと説明して回るのも面倒だし、きりがなさそうだわ」
「まあ、この恰好を見たら間違われてもしょうがないわね」
 セレンフィリティは自分たちの恰好を見て、無理もないと苦笑した。
「これでは落ち着いて施設も見て回れないわ。仕方がないわね……」
 こっそりと逃げだそう、と囁くセレアナの腕をセレンフィリティは逆に取ると、ぐっと肩を寄せた。
「えっ……?」
 セレアナが状況がつかめていないうちに、セレンフィリティはどんどんポーズを取ってゆく。抱き合ったり、肩に手をかけたり。そのたび、カメラのシャッター音が重なる。
「セレン……」
「いいからセレアナも笑って、笑って。はい、ポーズ」
 セレンフィリティが悪のりするのはいつものこと。そしてそれにセレアナが捕まってしまうのもまた、いつものこと。
「ホントにもう……」
 そう言いながらもセレアナはポーズを取った。なんだかんだ言いつつも、セレンフィリティに付き合ってしまう自分がいて、それを決して悪からず思う自分がいる、ということさえまた、いつものこと、なのだ。
「結局、パビリオンではコンパニオンとして写真を撮られ、休みの日も写真を撮られるのね」
「今日はコンパニオン衣装じゃなくて私服だけどね。レースが始まるまで、レースクイーンするのも面白くていいんじゃない?」
 レースが始まれば、カメラはそちらに向くだろうからと言った後、セレンフィリティは思いついたようにセレアナに提案する。
「どのドラゴンが優勝するか、賭けない? 勝った方が今日の晩ご飯をおごるの」
「いいけど、私は負ける気はないわよ」
「だったら賭け成立ね。そうね……誰にしようかしら……」
 尚もポーズを取り続けながら、セレンフィリティはレース出場者を思い浮かべては、誰に賭けようかと考えを巡らせるのだった。
 
 
 
 よくしゅ百穴
 
 
 
 取材に訪れたアレクスを迎えたのは、空京万博のマスコットたいむちゃんだった。
「ここは『よくしゅ百穴』ネ。コウモリやコケ等の繁殖牧場兼農場というか、保存事業をしてるのヨ」
「たいむちゃんって、こんなに大きかったにゃう?」
 確か小柄で軽そうな見た目だったはず、とアレクスは首を傾げたが、たいむちゃんの着ぐるみをかぶったキャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)はなおも言い張る。
「ミーはたいむちゃんに間違いないネ。今日は万博関連イベントということで、特別にいつもより大きめになっているだけネ」
「そうなのかにゃう〜?」
「そういうものなのヨ」
 これ以上つつかれてはまずいと、たいむちゃんバージョンのキャンディスはそそくさと施設の説明に入った。
「ここは本来は翼手目の多く棲む洞穴、『翼手目穴』と呼ばれていたのネ。ケド、資料が焦げて『目』が『百』に読めてしまったために、誤って台帳登録されてしまったのが、今の名前なのネー。当初、219個と言われていた洞穴だケド、再調査したらなんと666個も見つかったのネ。そこにコウモリとかコケとかヒルとか、たくさんいるのヨー」
「怖いところなのかにゃう?」
「暗いけど怖くはないネ。ヒカリゴケなんてとってもキレイヨー。『よくしゅヒル』の展示即売もしてるから、買っていってかわいがってあげてネー。餌はカンタン。腕にちょっとつけるダケヨ。なんならやってみると楽しいヨ」
「にゃうううー……」
「あれ、まだ説明は途中なのネー」
 キャンディスはとてとてと、アレクスを追いかけて走っていった。
 
 
 
 ガレージ:アガルタ
 
 
 
「キラキラしたトラックが止まってるのにゃう」
「そうよ。ここは冒険野郎御用達の施設だもの」
 伏見 明子(ふしみ・めいこ)はそう言うと、ガレージ:アガルタの施設をざっと紹介してゆく。
「こちら側にあるのが車両のメンテナンス・改造の為の工房よ。向こうにある建物は、利用者の情報交換の場となる集会所。荒野向けの改造から護衛の募集、最近の街のトレンドまで、ここ寄っていけば大体準備は揃うのがウリなのよ」
 獣人の村があるのはツァンダの東。
 ここから陸路で空京やヒラニプラ、大荒野に向かう陸運向けの多目的施設がガレージ:アガルタだ。
「今日は折角のお祭りだし、一丁私たちも盛り上げて行くわ。ということで、これ」
 明子が示したのは、『誰が仏斗羽素を一番上手く使えるのか 〜トラック航空ショウ〜』と書かれた看板だった。
「トラックで空飛ぼうって連中を集めて、航空ショウを開催するわ。迫力溢れるショウをどうぞお楽しみに。もちろんうちからも出場するわよ」
「へいへい、ガレージ:アガルタ建設者代表伏見明子さん一家からは、レヴィ・アガリアレプトが出場しますよ、っと」
 デコトラを前にレヴィ・アガリアレプト(れう゛ぃ・あがりあれぷと)がにやりと笑う。
「このためにデコトラを用意するとかホント好きだねえ、ウチのマスターも」
「お祭りだから、賑やかなのがいいのよ。この村の運転手も何人か参加してくれるから、是非……」
 言いかけた明子は途中で、あ、と声を挙げた。
「でも一部ドラゴンコースと被ってるところがあるので、レース参加者は注意してね。お互い腕の見せ所ってことでひとつ!」
 猛スピードで飛ぶドラゴンと接触したら、大事故になりかねない。
「どっちも気を付けるのにゃーう!」
 アレクスは注意を喚起するように、大きく尻尾を振った。