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学園祭に火をつけろ!

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学園祭に火をつけろ!
学園祭に火をつけろ! 学園祭に火をつけろ!

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     ◆

 その頃お隣、メイド喫茶『ベルジュース☆パラダイス』は、漸くピークが過ぎ去り一段落、といったところだったりする。
こちらは基本的に、人員が為にてんてこ舞いだった。食事、と言うよりは飲み物、ちょっとした軽食にメイドがメインの為、スカイホリディのカレーに押されていた訳であるが、何分客に大して従業員が取られている為、差し引いても忙しさは変わらない。
「疲れたですー…………」
 プレシアは大きく息を吐きながら、休憩がてらに紅茶を飲んでいる。
「でもまだ終わりまでは時間ありますから、此処からが正念場ですよ」
 随分と空いた店内を見渡しながら、友見は食器の水気をタオルで拭き取って所定の位置へと戻していた。
「それに、ラナロック先輩が手伝いに来てくれたし、なんとかなるよね!」
 プレシア同様休憩している結が、ニコニコしながら二人に言った。
「そうだ、ところで結さん。健闘さんと直樹さんは大丈夫ですか?」
 友見が心配そうに結に訊ねると、プレシアも気になっていたのかその言葉に乗じる。
「そうでしたね! お二人もずっと働き通しですし……」
「勇刃さんは今、ご飯買いに行ったみたい。お兄ちゃんはお隣かな? ウォウルさんに挨拶しに行くって言ってた」
「流石にお二人共スタミナありますねぇ……あんなに忙しかったのに」
「うんうん。それに友見ちゃんも、ね。まだ働いてるし」
 関心する結とプレシアは、友見を真剣な眼差しで見ている。と――
「あ、あのぅ……………」
 三人のもとに届く声。
「わぁ………………」
「あら、お似合いですよ」
「予備に一着持ってきていて正解でしたぁ」
 簡易更衣室から現れたのは、メイド服を着たラナロック。と、今の今まで接客をしていたカルミが不敵な笑みを浮かべながらカメラを構える。
「ふっふっふっ、チャンスなのです、激写なのですよぉ」
 まるでカメラ小僧の様に様々なアングルでラナロック、プレシア、友見、そして結を撮り始めるカルミ。当然四人は首を傾げた。
「何をしてるんです? カルミさん」
「よくぞ聞いてくれました。カルミ考えたのでぃす! 皆さんのメイド姿のブロマイドを売りまくって更に売上をアップ! 更にそれが宣伝となってうっはうはのもっふもふなのでぃす!」
「まぁ、素敵!」
 カルミの悪巧みに、両手を叩いて喜ぶプレシア。が、暫く後になって、そのブロマイドの被写体の中に自分が入っていることに気がついた。慌てて彼女は打った手を胸の前でクロスさせ、反対の意思を表示する。
「って、駄目ですよ! そんな恥ずかしいこと………」
「そんなもの、慣れてしまえばへのカッパ! ですよ」
「そう言う問題じゃあ………」
 友見はどうやら真剣に受け止めていないのか、苦笑のままに食器を片付けている。
「やはり……その、写真はあまりよろしくない気が………しますわ」
 ラナロックはおろおろしながら呟く。
「私は嫌だよ! それは駄目! さぁカルミちゃん。そのカメラをこっちに渡しなさい」
「結までそんな事言うですかぁ……だって、うっはうはのもっふもふですよっ!?」
「学園祭なんだから純利益とか求めてないのぉ! 駄目ったら駄目だよ!」
「しょんなぁ…………」
「カルミちゃん。諦めて結さんにカメラ、渡した方が良いと思いますよ」
 全員で反対し、何とかカルミの陰謀(?)を阻止することに成功した四人は、安堵のため息を漏らした。と、そのタイミングで扉の開く音が聞こえ、数人の話し声がした。慌てて表に出ていく友見と、出ようか迷うラナロック。が、手伝いにきたんだから、と自分に言い聞かせ、一歩前へと足を進める。
「お帰りなさいませ」
 爽やかな笑顔で対応する友見が席を進め、入店した客が席につく。
「何になさいますか?」
「ご主人様、ちょっと良いですかね。ぐっしっし」
 注文を受けようとしていたカルミが、先程の悪い笑みを浮かべて友見の前に割って入った。
「実は此処に、秘蔵メイドブロマイドがあるんですがねぇ」
「おぉ………これ、売ってるのかい?」
 写真をちらつかせるカルミと、しっかりと食いついている客。それを見て、友見がため息をついた。
「ご主人様はどの子がお気に入りです?」
「そ、そうだなぁ……僕はこの子が――」
「ねぇ、カルミちゃん?」
「…………………………………………」
 カルミの背後に忍び寄る、怒りにうち震える声。
「ゆ、結………さん?」
「丁寧に言っても、駄目ー」
「ぎにゃー、耳! 耳引っ張らないでぇ!」
「ちょっとこっち来てねー」
 結に耳を引っ張られながら、店の奥へと消えていくカルミ。そしてその姿を呆然と見ている客。という妙な構図が完成していたりする。
「ご、ご主人様? ご注文を――」
 気を取り直して、と友見が再度注文を尋ねる。
「あの写真は売って――」
「売ってません」
「…………あのしゃ――」
「売ってません」
 全くと言って良いほどに声色が変わらず、表情も変えないままに友見は断言する。どうやら客もそれには観念したらしく、大人しく注文をするだけだった。