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学園祭に火をつけろ!

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学園祭に火をつけろ!
学園祭に火をつけろ! 学園祭に火をつけろ!

リアクション

     ◆

 エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)はパートナーたち、クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)エオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)を連れて体育館付近をさ迷っていた。
全員手には大荷物持っていて、如何にもこれから何かを始めます。と、言った体である。
「ねぇ…いい加減重いんだけどさ、下ろしていいかな、これ」
 クマラが不服そうにぼやく。両手一杯に持たれた荷物は、既に彼の視界を遮る程度のそれだった。
「下ろしても良いですけど、一度下ろしたらまた持つのが嫌になると思いますよ」
 痛い程に彼の言葉を理解しているのか、エオリアが苦笑を浮かべながらに答えた。エオリアはエオリアで、クマラ程ではないが一杯の荷物を持っている。「よいしょ」などと掛け声をかけながら持っている荷物を持ち直す辺り、彼もいい加減この荷物の多さに多少なりうんざりしているのだろう。
「全く、貴方たちは何故そんなに文句を言うんです。みっともない」
 メシエがややオーバーにリアクションを取りながら、クマラ、エオリアの姿を見て嘆いた。が――
「メシエさん。僕が言うのもなんなんですが……」
「荷物は持ってないじゃん! 偉そうなこと言うなよ!」
 エオリアの言葉に被せるようにしてクマラが頬を膨らましながら声を荒げる。二人の言う通り、メシエは手ぶら。全く荷物を持っていない。
「貴方たち下層階級の民とは違うのですよ? 何故このメシエがそんな事をしなければならないんです? 此処に来ている段階で、感謝こそすれ、荷物を持て、とは。やれやれ」
「やれやれ、なのは君だぜ。メシエ」
 今の今まで押し黙ったままのエースがそこで初めて口を開く。
「確かに店番は良いとは言ったが、少しは手伝ってくれても良いだろ。それにしても――」
 エースは平淡な表情を浮かべたまま、メシエたちから目を離すと、目前に聳える体育館を見上げた。
「クラウンの言っていた教室ってのは何処にあんだろうな。体育館周辺の施設、在学中でも分からない者が殆どだってのに」
「近くにあるのは保健室に体育館の管理室。運動部の部室に………」
 目に見える施設を順々に見ながら、エオリアは独り言の如く呟く。
「えっと、『特別講義室』………あれ、この学校、こんな教室あったんですか?」
「ひっそりし過ぎててわからない…」
「私も知りませんでしたよ。エース、貴方はどうです?」
「無論、知らないぞ」
 自分たちにあてがわれた部屋がわからず、思わぬ足止めを食っている四人に、そこで声が掛かる。
「御苦労様です。先輩方」
「その声は――クラウン、に何故ランドロックさんがっ!?」
 彼らの前に現れた、ラナロックを背負ったウォウルを見るや、エースが声をあげた。
「お久しぶりです。クラウン君」
「ほう、あれがウォウル・クラウンですか」
「ねえ……荷物重いぃー」
「いやぁ、ちょっと苦手なものと当たって気絶してしまいましてね。それより、先輩方は此処で何を?」
「何を、じゃないだろ。君から手渡された教室へのメモがあまりに分かりづらくて困ってるところだよ」
 若干苛立ちの色を見せながら、エースが答える。
「見辛いメモ……。あぁ、それ、ラナロックが書いたんだと思いますよ。この女性(ひと)、壊滅的に絵心がないのでねぇ」
「……これ、ランドロックさんが書いたんですか」
 エースの持つ、まるで子供の落書きの様なメモ書きを見て、エオリアが苦笑した。
「特別講義室を取ってはありますが、少々無理を言ってこの辺り全てをお店に出来ますよ」
「何、それは本当なのか!?」
「えぇ。オープンカフェをご希望との事でしたからね、場所は重要ですよ。そこの方、名を何と?」
 ウォウルはクマラに向かって声を掛ける。
「え? オレ?」
 やや不機嫌そうなのは、立ち話をしていて荷物係なかなか下ろせないから、だろう。クマラの言葉に笑顔で頷いたウォウルに対し、やはり不機嫌そうに返事を返した。
「クマラ、だよ」
「クマラ君。ですね、それではその荷物、半分持ちましょう」
「ホントにっ!?」
 クマラは急に声のトーンを上げたが、その言葉に返事はない。返事の代わりに彼の視界が開け、目の前にウォウルが現れる。
「あれ、でも兄ちゃん……女の子おんぶしてるけど……」
「大した事はないですよ。疲れたでしょう。でもその疲れはまだ早いですよ。これからお店で沢山疲れるんですから」
 ニコニコしながら彼はクマラの持っていた荷物を持ち、今度はエオリア、エースの前にやって来る。
「先輩方も、お持ちしますよ」
「し、しかし。君はランドロックさんを」
「そうですよ。それにそんなに持ったら重たいですし」
「大丈夫ですよ」
 半ば引ったくるようにそれらを受け取ったウォウルは、呆然とその様子を見る四人を置いて歩き出した。
「皆さん、此方ですよ」
「いや、あの荷物にランドロックさん背負って平然としてんの、おかしくないか?」
「ですね………」
「あの兄ちゃんは好い人な!」
 エース、エオリア、クマラもウォウルについて足を進めた。
「ほう、地球人にしては――面白い男ですね」
 メシエはぽつり、と含みのある独り言を呟き、三人の後を追って特別講義室へと足を向けるのだ。