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リアクション
「ふははははっっ! 皆の者、街を焼き払え! 褒美は思いのままだ!」
あろうことか、大勢の魔王軍を引き連れて突如姿を現したのは、魔王軍六大軍団将のコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)です。
これまで度々彼と戦ってきた帝国軍の宰相がこの街に帰ってきているとの情報です。ゴリゴリの力押しにも耐えられる屈強な部下モンスターたちも引き連れています。ここで勝っておけば今後の戦いも楽になるでしょうし、将軍としての地位もますます安泰です。
「勇者たちも見つけ次第連れて来い。この俺が直接対決で葬り去ってくれるわ!」
鼻息荒いコアの元に、伝令のラブ・リトル(らぶ・りとる)が一人の男を引き連れてやってきます。
宿屋の主人だったルークです。
実は彼は、この世界を破壊し真なる恐怖に陥れようとしている冥竜王ヴァルザーの配下だったのです。
ほかの魔王たちに協力する義理はありませんが、恩は売っておいて損はありません。その考えで、彼がコアたちをこっそりと招き入れたのです。
「ふふ……」
「後で魔王様にご報告しておく。今は下がっていろ。うろうろしていると怪我するぞ」
「では後程……」
ルークがいなくなるのを見計らって、ラブが伝えてきます。
「いよいよ勇者様たちがお出ましよ。なんか、色々あって疲れているみたいだけど」
「ようし。どれ、手始めに仕掛けてみるか。……出でよ、ドラゴンライダー!」
「ガアアアアアッッ!」
咆哮を上げながら登場したのは、龍心機 ドラゴランダー(りゅうじんき・どらごらんだー)です。
魔鋼龍ドラゴランダーで魔装奇兵団最大のサイズを持ったゴーレムです。魔王軍第六軍の中でも頼りになるモンスターの一匹で、炎を吐き散らしながら暴れまわってくれます。
逃げ惑う街の人たちを蹴散らし、建物をなぎ倒し、大金持ちの住む屋敷へ飛んでいきます。
「ゲハハハハッッ! 愚かなる人間どもよ、泣け叫べ、そして死ね! 我が主、魔王様こそが真なる平等たる世界を作られる唯一無二の存在なのだ!」
将軍コアの笑い声が響きます。
「……勇者たちよ。こっちだ」
屋敷にやってきていた勇者たちを、廉が案内します。
なんだか勇者たち一行、疲れ果てボロボロになっている気がしますが、構ってはいられません。突然横合いから登場した敵などに秘宝を台無しにされるわけにはいかないのです。
「……」
炎が燃え移り破壊されそうになる屋敷の中で、廉たちは秘宝の眠る部屋の扉を開けます。
「……皆様ようこそ。お待ちしておりました」
出迎えてくれたのは、執事のロード・アステミック(ろーど・あすてみっく)です。
その傍らには、真白に輝く秘宝が……。
「……」
「誰、来たネ。ゆっくり、居てネ」
部屋の中には雪だるまがいて、こちらに話しかけてきます。秘宝として降臨した雪だるまのヴィルヘルム・エイジェルステット(う゛ぃるへるむ・えいじぇるすてっと)です。
「お茶、いるか? 飲む飲む」
「……」
こいつをどうしろと?
「この秘宝は強力な退魔の効力も備えている。許可するから使ってよし」
屋敷の主の幸祐は微笑みながら言います。
「全く、魔王軍も面白い演出をしてくれる。徹底的に滅殺してやろう。俺はこれで失礼する。後は、そちらの好きにするがいい」
「……では、遠慮なく」
勇者たちは雪だるま型の秘宝の封印を解き放ちます。
オオオオオオッッ!
空気を震わせる唸りとともに、魔力が一気に解放され、勇者たちを包みます。これまでにない力がみなぎってきました。
「行きましょう、戦いに!」
勇者たちは、魔王軍に戦いを挑みます。
「グハハハッッ! 待っていたぞ勇者どもよ。この俺が相手だ!」
将軍コアは、全力で襲いかかってきます。
「我が名は魔鋼将軍ハーティオン! この魔王様から賜った【アンガードバンカー】でチリも残さず砕いてくれよう! 絶望の中で死ねい、人間よ! ……って、グハァ!」
ズバシャアアッッ!
あれだけ見栄を張っておいて、コアは一撃でやられてしまいます。
「ふん、口だけ番長が!」
敵の将軍をあっさり蹴散らすセフィ。言うだけのことはあるようです。
続いて、魔鋼龍ドラゴランダーも。
「グオオオッッ! ……ギャーッス!」
「お疲れさん。帰ってクソして寝てろ!」
盗賊ボス、オルフィナもその戦闘力を見せ付けます。
「……え〜っと」
魔王軍の名誉のために言っておきますが、将軍たちが弱かったわけではありません。
数々の苦難と冒険の末、そして秘宝の力で勇者たちはとても強力になっていたのです。うん、きっと……。
荒々しく現れた魔王軍でしたが、将軍とドラゴンライダーがやられると、蜘蛛の子を散らすように逃げ始めます。
それを討伐する幸祐と勇者たち。
……。
一夜明け、街も平穏を取り戻します。
紆余曲折ありましたが協力し合うことを誓った彼らは、さまざまな思いが交錯する中握手を交わします。
瑠夏とヒルデガルドは、騒ぎの中物別れになったようです。彼は、無事にどこかへ帰れたのでしょうか?
こうして、第二の秘宝も手に入れた勇者たち。
彼らの冒険はまだ続きます。
いったん休憩しましょうか……。