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続々・悪意の仮面

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続々・悪意の仮面
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第三幕 仮面のアイドル〜前編〜


 「……?何かしら?」

時を同じくして、場所は百合園女学院の中。
レイカ・スオウ(れいか・すおう)は、かすかに街で炸裂音を聞いた気がして遠くを眺めた。

インスミールの生徒の彼女が何故百合園にいるかと言う疑問は、すぐ近くを見ればすぐわかる。
彼女のいる校舎の広いテラスでは846プロのイベントが行われ、丁度終わったところであった。

最も、イベント自体は七瀬 歩(ななせ・あゆむ)のいる白百合会が仮面奪回の為に用意したもので
仮面奪回に協力してくれる者を手引きする為のカモフラージュだったのだが
こうやって純粋に催し目当てでやってくる他校の生徒も、大勢校舎に存在する事になる。

……とはいえ、彼女事体が全く平穏な一般人、というわけでもなく
出演している多くの友人を応援しにイベントに来たわけで、楽屋代わりの教室に向かう最中だったのだ。

それに今回のステージで何人かの知っているメンバーの姿を見かけなかったのも気になり
挨拶がてら聞こうと思っていた。

その途中でこの微かな騒音である。
目的としては全く関係ない街からのなのに、何故か胸騒ぎが消えないまま立ち止まっていると
テラスの片隅に同じ様に街を不安げに眺めている二人分の人影が目に入った。

 「あら?あの人……もしかして」

レイカの呟きが聞こえたのか、それとも他人の視線に敏感なのか、二人が慌てて校舎の中に消える。
思わずレイカも後を追った。
……何故ならその姿が決して彼女の知らない人物ではなかったからだ。

 「待って!待ってください!……衿栖ちゃん!?」

呼びかけた彼女の声に、人影の一人茅野瀬 衿栖(ちのせ・えりす)が立ち止まり振り返った。
追いついたレイカが再び語りかけた。

 「やっぱり、【ツンデレーション】の衿栖ちゃんですよね?
  先程のイベントで見かけなかった貴女がなぜ会場の近くに?それもわざわざ身を隠すみたいに……」
 「……パートナーと、友人を探しているんです」

レイカの問いに、苦しそうに衿栖が答える。
その様子に問いを続けるべきか迷っていると、傍らにいたもう一人の影の主茅野瀬 朱里(ちのせ・あかり)が前に立った。

 「そのお話の続き、朱里がしてもいいかな?」



……朱里が語った話によると、経緯はこうである。

数日前、ヴァイシャリーの某所で846プロのイベントが終わった後
衿栖は相方の若松 未散(わかまつ・みちる)がいなくなっている事に気がついた。
はじめはちょっと出かけた程度に思っていたのだが、連絡も取れない事に気がついた。
急いで会場内を探していると、未散のマネージャーのハル・オールストローム(はる・おーるすとろーむ)だけでなく
先輩の神崎 輝(かんざき・ひかる)や他の仲間も見つからない。

見つからない仲間はあと4人……。

神崎 瑠奈(かんざき・るな)一瀬 瑞樹(いちのせ・みずき)シエル・セアーズ(しえる・せあーず)そして装飾用魔鎧 セリカ(そうしょくようまがい・せりか)

846プロとしてはアイドルの失踪は一大事なのだが、事を公にするわけにもいかず。
今日のイベントも事情は伏せたまま決行するに至った、と言う事らしい。
 
 「……それでいつもより出演者が少なかったわけですね」

朱里の説明に納得したレイカのを見て、衿栖が再び口を開く。

 「ステージにあがらないのは、アイドルとしていけない事はわかってます。
  でも私はパートナー無しでステージに立つ事なんてできない!未散さんがいるから私がいるんです」

話ながら目に涙を溜める衿栖を慰めながら、朱里が話を続ける。

 「だから朱里達は仲間を探す事にしたんだ。一緒に探してくれている846プロの子もいる。
  でもどう探したらいいのかわからなくて、また戻ってくる事を願って今日のステージを見張っていたんだよ」
 「……事情はわかりました。良かったら……私も協力させてください」

思いもよらぬレイカの言葉に衿栖と朱里が驚く。
そんな二人の、先ほど見かけた時の沈痛な姿を思い出し、レイカは提案を続けた。

 「大切な人達なんですよね?それなら一刻も早く見つける為に人手は必要でしょう?
  それに、ちょっと気になる事があるんです……学園を見ていて何か感じませんか?」
 「……………あ!!」

レイカの問いかけに衿栖達は構内を見回す。
制服姿の中に見える様々な個性ある出で立ちを見ながら、ずっと見逃してた事実に気がついた。

 「……気がつきましたか。仮面をつけた人が多い事に」

何故か今回、学園の指定でイベントも含め仮面姿を校内で推奨されている。
噂では今行われている校長自らのイベントすら、校長自らで仮面姿を推奨しているらしい。

学園全体で考えると大きな枠で見逃しそうになるが
そもそも仮面と言えば、誰もがある程度知っている出来事があったはずだ。

 「まさか、悪意の仮面が!?」

衿栖の言葉にレイカが頷く。

 「余りにも騒がれていないので、考えから外していましたけど、
  校長自らが仮面の影響を受けていれば、新しい仮面の出現による可能性も考えられます。
  恐らく見つからない人達もアレの影響を受けて……」

3人の思考が、先程の街の方角で聞こえた騒音に辿り着く。
その思考を証明するかのタイミングで、行方不明だった人物の一人から連絡が入った。

 『衿栖くんですか!?ハル・オールストロームでございす!今すぐ来て下さい!未散くんが!』

レイカ・衿栖・朱里の3人が顔を見合わせ、街方向へ走りだす!

途中かすめるように、ウロウロと歩いているドラゴニュートの女性の脇を通り過ぎたが気になんかしてられない。
レイカ達の姿が見えなくなった後、何事かと彼女…ノウェム・グラント(のうぇむ・ぐらんと)が一人呟いた。

 「随分ここも騒々しいみたいですね……まさか、早速あの人の仕業じゃないでしょうね!?
  このままではいけない!一刻も早く探さないと……ところでここはど何処でしょう?」