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太古の昔に埋没した魔列車…環菜&アゾート 2

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太古の昔に埋没した魔列車…環菜&アゾート 2
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第12章 Christmas Eve After1

 塗装した魔列車のお披露目や、駅舎の売店の建築の完成祝いを兼ね、環菜の提案で24日と25日のクリスマスに、パーティーを行う。
「やっとお弁当とカップケーキが届きましたね。急がないと皆さんがきてしまいます!」
 大急ぎでSR弁当と、セットで購入してもらうと目論むカップケーキを、ベアトリーチェが改札の傍にある店舗に並べる。
「後はよろしく頼みますね」
「かしこまりました」
 ラズィーヤが臨時で雇った従業員が、ぺこりとベアトリーチェに頭を下げる。
「早くケーキの用意をしなくては…っ」
 出発前に完成させようとベアトリーチェが魔列車に駆け込む。
「シオンくん…いったい何を買出しにいったんでしょう?」
 サボっているのにも飽きたらしく、自分の商品提案だけ済ますと、シオンは途中で出かけてしまった。
「ツカサ、お待たせ!」
「―…あの、それはいったいなんですか?それと…その費用はまさかっ!?」
「ワタシのお金はワタシのお金。ツカサのお金はワタシのお金よ?」
「違いますっ、私のものですよ、シオンくん!!あぁ、お財布がー…」
 すっかり中身がすっからかんになってしまい、返済にあてるはずのお金が消え去り、借金地獄から抜け出せる気がしない。
「…作った……」
 アイリスが袋の中に手を入れ、そっと3着のミニスカサンタの衣装を取り出す。
「ツカサ……、着て…」
「…ぁ、結局ミニスカ…ですか」
 珍しく女装せずに済むと思いきや、やぱりこういうオチなのかと、がっくりと肩を落とした。
 当然、彼に拒否権はなく着ることになってしまい、トトホと涙する。
「…これ、…おとうさんの……」
「ありがとうな、アイ」
「フィリップくん、ずるいですよ!!」
 男性用サンタ衣装を目にした司が抗議の声を上げる。
「俺よりもレベル20のほうが似合うって」
「もう、それを言わないでくださいよー…」
「列車の中で着替えるわよ。ツカサ、ボケッとしてないで早くっ。個室の中でいさぎよく、パパッと着替えるのよ」
 まもなく少女の姿になるツカサの腕をシオンが掴み、魔列車の中へ引きずり込む。
「ひ、人攫いですの!?」
 恐ろしげな光景を目撃してしまったユーリカが叫ぶ。
「よく見てください…、あれは司さんとシオンさんじゃないですか」
 同じ学校の生徒を人攫いと間違えるなんて…と、近遠が呆れ顔をする。
「でも、明らかに嫌がっているみたいでしたわ」
「パートナーがパートナーを連れ去って、どうするというのです…?はぁ…事件なんて起こりませんよ」
「助けなくっていいんですの?」
「触らぬ神に祟りなし……対岸の火事…、というよい言葉があります」
「(近遠ちゃん酷いですわっ)」
 当たり前のように見捨てるセリフに、ブラック近遠の姿を見てしまう。
「私はイブのパーティーを楽しみたいんです…。ツカサさんはいつもの姿に戻るだけですし…、何の問題もありません」
「せっかくのイブなのだから楽しまなくてはな」
「お弁当も買いましたし、列車の中へ入りましょう!」
 アルティアは寒そうに息で手を温め、早く温まろうと急かす。
 車内に入ると暖房の温かさに包まれ、ふかふかの椅子に腰掛ける。
「飛行機のファーストクラスみたいな椅子ですね。これなら長時間乗っても窮屈間もありませんね!」
「椅子同士の感覚も広いな」
「この椅子……、回転式みたいですよ」
「近遠ちゃん、椅子をそっちに向けますわね」
 ユーリカは椅子をくるりと回転させ、彼女の方へ向けて4人席にする。
 座り心地のよさにウトウトしかける。
 ―…が、すぐにその平穏は砕かれてしまう。
「蒼、バタバタ走っちゃいけないよ」
「はぁ〜い」
「元気のよい弟さんですわね…」
「すみません、起こしちゃいましたか?」
「眠りかけていただけですのよ」
 せっかくのパーティーなのだから、目くじらをたてるのもよくないと思い、にこっと笑顔を向けた。
「一番前に座るぅうう!!えぃっ」
 ボスンッと椅子に飛び乗り、蒼が大きな音を立てる。
「お願いだから大人しくしてよ、蒼」
「はぁーい」
 早く始まらないかなー?とキラキラを目を輝かせ、モニターを見上げる。
 撮りためたシーンを、シャンバラ電機のノートパソコンで編集した刀真は、運転車両のエリアにある機械に、外付けハードディスクをセットする。
 蒼が設置したモニターに流そうと、準備をする。
「まだ何人かくるでしょうから、もう少し待ちますか…」
 列車内にいるのが自分と月夜含め、まだ4組しかいない状態だ。
 試運転の段階だし、出発はいつでも出来るから、しばらく待っている。



「これが列車なの?キレイ…」
 歌菜は食堂車のシャンデリアを見上げ、思わずため息をつく。
 銀を基調に金細工をあしらった照明があるなんて、貴族専用の電車のようだ。
 他の明かりといえば、エーブルやキッチンにあるランプの明かりのみ。
 落ち着いたオシャレな空間を気に入った様子で、辺りを眺める。
「ごめんなさい。まだケーキが出来ていないんです」
「えっ?いえ、私たちは列車の中がどんな感じかな…って見てただけです」
 ベアトリーチェの声に驚きつつも、歌菜はかぶりを振って料理をもらいにきたのではいと言う。
「その…お料理って、個室に運んでもらえたりします?」
「本日は料理人が不在なんです。環菜さんからパーティー用のお料理が届く予定ですから、後で私がお運びしましょうか?」
「はい!…あの、一番奥の部屋って、空いてますか?」
「そういう要望は誰からも聞いていないので、大丈夫だと思いますよ?」
「よかった…ありがとうございます♪羽純くん、空いてるって!」
「じゃあ行ってみるか」
「どんな部屋なのかな…楽しみね」
 もう1両の食堂車に移ったとたん、歌菜が恋人の傍にピッタリと寄り添う。
「ここが魔列車の1番イイ部屋なのね?」
 スイートルームに入り、展望鏡から外の様子を眺める。
「この窓から冬景色を見ながら、ゆっくり旅をするのか…」
 まだ出発する気配はなく、ソファーに座って待つ。